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主食として利用されるイモ類(キャッサバ・ヤムイモ・タロイモ)

イモ類は炭水化物を多く含むためアフリカやアジアなどで主食として利用されています。

このページでは、主食として利用されているイモ類であるキャッサバ、タロイモ、ヤムイモについて順に解説します。
イモ類全体やその他のイモについては以下のリンク先をご覧ください。
イモ類ジャガイモ・キャッサバ/タロイモ/ヤムイモ】

キャッサバ

切断したキャッサバの塊根(可食部)の断面。塊根の白い部分にデンプンが多く含まれている。キャッサバは中南米原産の作物で、アジアやアフリカの熱帯地域で主食用として栽培されている。出典:Wikimedia Commons, ©Amada44, CC BY 3.0, 2023/3/26閲覧

キャッサバ中南米原産の作物です。
中南米では1万年以上前から栽培されていました。

キャッサバ(Cassava)は英語をカタカナ表記したものであり、フランス語ではマニオク(manioc)とよばれます。

やせた土地でも栽培できて乾燥に強く、他のイモ類と比べて狭い畑でも収穫量が多いという特徴があります。
そのため、16世紀にポルトガル人によってアフリカに伝えられた後は熱帯を中心に広く栽培されるようになりました。
イモ類の中ではジャガイモに次いで多く栽培されています。
ブラジルやナイジェリア、コンゴ民主共和国、タイ、インドネシアなどで生産量が多く、現在でも熱帯地域ではに次ぐ主食として食べられています。

キャッサバの可食部はデンプンが集まり根が肥大化した部位(塊根)です。
キャッサバは毒(シアン化合物)があるため食用には毒抜きが必要です。
毒抜き後はすぐに加工しないと腐ってしまうため、扱いに手間がかかるという欠点もあります。

毒抜き後はパン状に成形して食べらたり(アフリカのフフ)、乾燥させて粉状にして食品加工用や家畜飼料用としても使われます。
キャッサバを乾燥して粉状にしたものをタピオカといい、もちもちとした食感を作り出すため増粘剤としても使われます。

タピオカを球状に加工したタピオカパール。タピオカは毒抜きしたキャッサバの塊根を乾燥させて取り出したデンプンである。タピオカ自体は白色であるが、カラメルで着色させて黒色にしている。出典:Wikimedia Commons, ©Lars Plougmann from United States, CC BY-SA 2.0, 2023/3/26閲覧

タロイモ

タロイモの一種であるサトイモの塊茎(可食部)。サトイモは茎の地下部分が肥大化した部分(塊茎)を食用とする。出典:Wikimedia Commons, ©Wibowo Djatmiko ( Wie146 ), CC BY-SA 3.0, 2023/3/26閲覧

タロイモはサトイモ科のうち根を食べるために栽培されている植物の総称です。
日本で食べられている里芋もタロイモの一種です。

原産地はインド~マレー半島~中国のあたりと考えられています。
現在では、アフリカのギニア湾沿岸(ナイジェリア、カメルーン、ガーナなど)を中心に東アジアやオセアニアなどで栽培されています。
タロイモを主食としていた地域の多くは現在ではを主食としています。
しかし、アフリカ(ギニア湾沿岸やマダガスカル)やオセアニアの島々では現在でも主食として食べられています。

主食として食べられているアフリカではキャッサバやヤムイモ同様に粉状にしたものをパン状に成形し、茹でたり焼いたりして食べられています(フフ)。

タロイモの調理風景(カメルーン)。タロイモを砕いてペースト状にし、成形してパン状のフフを作ろうとしている。出典:Wikimedia Commons, ©Kondah, CC BY-SA 4.0, 2023/3/26閲覧

 

ヤムイモ

ロンドン南部に位置するブリクストンの市場に並ぶヤムイモ(英国イングランド)。ブリクストンにはアフリカ系住民が多く住んでいる。出典:Wikimedia Commons, ©C Ford March 04, CC BY-SA 3.0, 2023/3/26閲覧

ヤムイモ(ヤム)とは、ヤマノイモ科ヤマノイモ属のうち根が食用とされる植物の総称です。
日本で食べられている長芋やヤマノイモ(山芋、自然薯(じねんじょ))もヤムイモの一種です。

ヤムイモは温帯から熱帯の地域に生育し、アジア、アフリカ、アメリカ大陸でそれぞれ作物として栽培されるようになりました。
栽培種としてはアジアの熱帯地域原産のダイジョ(大薯)や中国原産のナガイモ(長芋)がよく知られています。
現在でもアフリカのギニア湾沿岸を中心に熱帯地域で栽培され、中でもナイジェリアの生産量が世界全体の半分以上を占めています(2020年は67%)。

日本では根菜扱いで副菜として食べられますが、主食としても利用される地域もあります。
アフリカではキャッサバ同様に粉をパン状に成形してフフを作り、茹でたり焼いたりして食べられています。

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参考成帯土壌(ラトソル・黒色土・褐色森林土・ポドゾル・ツンドラ土)

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参考文献

『タロイモは語る』 東京農業大学「食と農」の博物館 2023/3/26閲覧
主食 ウィキペディア 2023/3/20閲覧
地理用語研究会編「地理用語集第2版A・B共用」山川出版社(2019)
キャッサバ ウィキペディア 2023/3/26閲覧
Cassava, Wikipedia 2023/3/26閲覧
キャッサバ(きゃっさば)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2023/3/26閲覧
球根 ウィキペディア 2023/3/26閲覧
タロイモ ウィキペディア 2023/3/26閲覧
Taro, Wikipedia 2023/3/26閲覧
Fufu, Wikipedia 2023/3/26閲覧
ヤム ウィキペディア 2023/3/26閲覧
Yam (vegetable), Wikipedia 2023/3/26閲覧
ヤムイモ(やむいも)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2023/3/26閲覧
Brixton, Wikipedia 2024/2/14閲覧

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