複雑な要因がからみあって生じる気候について理解するためには、気候をいくつかの要素や要因に分解して考える必要があります。
ここでは、気候を決める要因である気候要素と気候因子について解説します。
気候要素を組み合わせて表現する方法である雨温図とハイサーグラフについてもまとめます。
目次
気候
それぞれの土地で長い年月にわたって現れる天気の総合的な状態のことを気候といいます。
気候は様々な気象現象の積み重ねから成り立ちます。
気候が長い期間の状態であるのに対し、気象は厳密にいえば大気のある瞬間の状態をいいいます。
気候要素
気候は天気の総合的な状態なので、一つの値で示すような方法はありません。
ある地点の気候を知るには、気候を構成する要素に分けて数量的に調べ、これらを組み合わせて気候を表します。
このような気候を構成する要素を気候要素といいます。
気候の特性をつかむのに最も重要な気候要素として、気温、降水量、風があります。
気候要素には他に気圧、湿度、日照時間、日射量などがあります。
気候要素の一つだけをとってもさまざまな表現方法があります。
たとえば、気温を表現する方法として日較差(にちこうさ、一日の最高気温と最低気温の差)や年較差(ねんこうさ、一年の最高気温と最低気温の差)、積算温度などがあります。
積算温度とは、ある期間の一日の平均気温が一定温度を超えた分だけを取り出して合計したものです。
農作物の栽培限界の目安や桜の開花予想に使われています。
気候要素の可視化
気候要素を可視化する方法には、1つの気候要素を可視化する方法と複数の気候要素を組み合わせて可視化したものがあります。
単一の気候要素の可視化
単一の気候要素を可視化する方法として等温線図と等降水量線図があります。
等温線図
地図上で気温が等しい地点を結んだ線を等温線といい、等温線を描いた地図を等温線図といいます。
等温線図は、各地の気温の特色をみるのに適しています。
たとえば、水は空気よりも比熱(物質を1℃上げるのに必要なエネルギー)が大きいため、沿岸部は夏と冬の温度変化(年較差)が小さく、大陸の内陸部は年較差が大きくなります。
このため、夏は沿岸部よりも大陸内陸部の方が暑くなり、冬は沿岸部よりも大陸内陸部の方が寒くなります。
等温線図をつかって等温線の分布を見ることで、各地の気温の違いを把握することができます。
等降水量線図
地図上で降水量が等しい点を結んだ線を等降水量線といい、等降水量線を描いた地図を等降水量線図といいます。
等降水量図は、各地の降水量の特色を見るのに適しています。
たとえば、次の画像はインドの年降水量1,000mの等降水量線図です。
この等降水量線はインドにおける稲作地域と畑作(小麦)地域の境界線になっています。
複数の気候要素の可視化
気候を示すためには単一の気候要素だけではなく、複数の気候要素を合わせてみる必要があります。
複数の気候要素をわかりやすく可視化したグラフとして、雨温図やハイサーグラフがあります。
雨温図
ある地点の月別の気温と降水量を表示したグラフを雨温図といいます。
上図は東京の雨温図です。
雨温図では、横軸に月(1月から12月)をとり、縦軸に気温(上図の左側の軸)と降水量(同右側の軸)をとります。
月別平均降水量を棒グラフ(上図青色)、月別気温を折れ線グラフやバーグラフ(上図赤色)で表し、それらを重ねて表示します。
月別気温に関しては、平均気温を折れ線グラフで表示する場合や、上図(赤色部分)のよう日最低気温の平均と日最高気温の平均を組み合わせてバーで表示する場合があります。
ハイサーグラフ
1月から12月までの各月の平均気温と平均降水量をプロットして線で結んだグラフをハイサーグラフといいます。
ハイサーグラフは横軸に平均降水量、縦軸に平均気温をとり、各月のプロットを順に結んだ散布図です。
ハイサーグラフは気温や降水量の季節変動をみるために使います。
気候因子
気温や降水量のような気候要素を決める因子のことを気候因子といいます。
気候因子は、緯度や標高(海抜高度)、海からの距離(隔海度)、海流や地形の影響、大気の循環などがあります。
これらの気候因子は、ある地域の気温や降水量のような気候要素の原因となります。
緯度
赤道に近いほど太陽光を正面からうけるため、太陽光のエネルギーをより多くうけます。
そのため、一般に赤道に近い低緯度地域ほど気温が高く、北極や南極に近い高緯度地域ほど気温が低くなります。
高緯度地域ほど気温の年較差が大きくなり、低緯度地域では小さくなります。
標高(海抜高度)
標高(海抜高度)が高いほど気温は低くなります。
高度が高くなるにつれて気温が低下する割合を気温逓減率(きおんていげんりつ、気温減率)といいます。
地球上では標高が100 m上がると、気温はおよそ0.6℃低下します。
たとえば、標高1,000 mの地点は、標高0 mの海岸に比べて6℃程度気温が低くなります。
そのため、標高が高い地域は気温が低い高山気候になります。
隔海度
海からどれくらい離れているかを隔海度(かくかいど)といいます。
水は空気よりも比熱(物質の温度を1℃変化させるのに必要なエネルギー)が大きいため、大陸よりも海洋の方が温度変化が小さくなります。
加えて、海の水蒸気の雲をつくるため、雨が多くなります。
沿岸の気候は、海洋の影響を強くうけるため、海から近い(=隔海度の小さい)地域は、雨が多く気温の日較差や年較差が小さい海洋性気候を示します。
一方、大陸内部など海から遠い(=隔海度が大きい)地域は、雨が少なく乾燥して気温差が大きい大陸性気候を示します。
海流
沿岸の地域では海流の影響をうけます。
海流には、その地域よりも南から流れてくるため温かい水を運んでくる暖流と、北から流れてくるため冷たい水を運んでくる寒流があります。
沿岸は海の影響を大きくうけるため、暖流が流れる地域は気温が高くなり、寒流が流れる地域は気温が低くなります。
また、気温が高いほど空気中の飽和水蒸気量(空気が水を含むことができる最大量)が大きくなるため、気温が高いほど湿潤な気候になります。
たとえば、西ヨーロッパは暖流である北大西洋海流が流れるため、高緯度地域にも関わらず温暖湿潤な西岸海洋性気候(Cfb)です。
一方、寒流が流れる地域は、冷たい海水が地表を冷やして下降気流を発生させ、冷涼で乾燥した気候になります。
南半球の大陸西岸では海流の影響で西岸砂漠が広がります。
西岸砂漠の例として、ペルー海流の影響をうけたアタカマ砂漠(チリ)やベンゲラ海流によるナミブ砂漠(ナミビア)があります。
地形
海からの湿度が高い空気が山地に流れると、雲が山にぶつかって山地の風上側で雨が降ります(地形性降雨)。
このため、山地の風上側では雨が多い気候になります。
一方、山地を越えた風は乾燥しているため山地の風下側は雨が少ない気候になります。
偏西風のように年間通して同じ方向に風が吹く地域では、風上側と風下側の地域が年中固定されます。
たとえば、アンデス山脈の風上側にあるチリ南部が多雨であるのに対し、風下側に当たるアルゼンチン南部のパタゴニアは雨陰砂漠(あまかげさばく)が広がります。
大気の循環
大気の循環は風をつくりだす気候因子です。
大気の循環の影響で一定方向に吹く卓越風がつくられます。
卓越風の例として、偏西風や貿易風があります。
参考文献
気候とは コトバンク 百科事典マイペディアの解説、日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/1/22閲覧
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クライモグラフとは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説、
雨温図とは コトバンク 百科事典マイペディアの解説 2021/1/22閲覧、百科事典マイペディアの解説、世界大百科事典 第2版の解説、日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/1/22閲覧
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