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コーヒーの栽培(コーヒーノキ・コーヒーベルト)

コーヒーは現在では世界中で飲まれている飲料です。
コーヒーの原料となるコーヒーノキ嗜好作物として熱帯プランテーションで栽培され、世界中に輸出されています。
このページでは、コーヒーとコーヒーノキの栽培・利用についてまとめます。

コーヒーとコーヒーノキ

赤い果実を実らせたコーヒーノキ(台湾中部・草坪頭玉山觀光茶園)。コーヒーノキは熱帯で栽培される嗜好作物の一種であり、種子から取れるコーヒー豆を原料としてコーヒーが生産される。出典:Wikimedia Commons, ©Ping an Chang, CC BY-SA 4.0, 2023/5/24閲覧

コーヒーは、コーヒーノキという樹木の種子から取れるコーヒー豆を原料として作られる飲み物です。
コーヒーの名前の由来は、コーヒーノキのうちアラビカ種の原産地であるエチオピア南西部のカッファ地方(Keffa Zone)です。

現在は世界中に広がっているコーヒーを飲む習慣は、酒やと比べて比較的新しいものです。
15世紀に中東のイスラム世界で普及し、16-17世紀にかけてヨーロッパ全土に普及しました。

コーヒーノキはアフリカからアジアの熱帯地域に自生する樹木です。
野生では成長すると10m程度になりますが、栽培する際には枝を刈って3m程度の高さに抑えます。
コーヒーノキは寒さに弱く、栽培は北緯25度~南緯25度の熱帯地域コーヒーベルト)が中心です。
ヨーロッパで大きな需要があるにも関わらず気候的に栽培できないため、熱帯では輸出用にプランテーションによる大規模栽培が行われています。
このため、コーヒーは国際的に広く取引される商品作物の1つです。

参考

コーヒーは単価が高い嗜好品であるため、各地でブランドが存在します。
品種名には、地名や国名、山の名前、輸出の際に船を出す積出港などにちなむものがあります。

コーヒーのブランド名を由来別に分類
地名や国名:コロンビア(南米)、コナ(米国ハワイ島・コナ)、ジャワ(インドネシア中南部)
山の名前:キリマンジャロ(タンザニア)、ブルーマウンテン(ジャマイカ)、エメラルドマウンテン(コロンビア)
積出港:モカ(イエメン・エチオピア、モカはイエメン南西部の港湾都市)、サントス(ブラジル、サントスはブラジル南東部サンパウロ州の港湾都市)

このようなブランドの品質を維持するために、ブランド名を名乗るには制限があります。
たとえば、ジャマイカのブルーマウンテン山脈の標高800-1,200mの地域で栽培されたコーヒーのみを「ブルーマウンテン」とよびます。
同地域で栽培されるものと同じ品種は他地域でも栽培されますが、ブルーマウンテンを名乗ることはできません。

世界のコーヒー生産国と代表的なコーヒーの名称。主なコーヒー生産国をオレンジ色(濃い国ほど生産量が多い)で示し、代表的なコーヒーの名称を「名称(生産国名)」で付記した。括弧書きのない銘柄は生産国名と同じ名称で呼ばれている。主産地は南北の回帰線(23°26')の間に位置し、帯状に並ぶことからコーヒーベルトとよばれる。出典の一部を修正して作成。出典:Wikimedia Commons, ©Ping an Chang, CC BY-SA 3.0, 2023/5/24閲覧

コーヒーの栽培と利用

傾斜地に広がるコーヒーのプランテーション(コロンビア中西部・トリマ県カサビアンカ)。水はけのよい傾斜地に間隔を開けてコーヒーノキが並ぶ。出典:Wikimedia Commons, ©Hhaarold402, CC BY-SA 4.0, 2023/5/24閲覧

ここからは、コーヒーノキの栽培とコーヒーの製造についてまとめます。
コーヒーノキの栽培条件やプランテーションでの栽培、収穫からコーヒー豆の加工までについて順番にふれていきます。

コーヒーノキの栽培条件

コーヒーノキは年平均気温20℃程度で昼夜の気温差(日較差)が大きい場所が適しています。
降水量は1,800-2,500mm程度が適しており、生長期に雨季で降水が多く、収穫期に乾季で乾燥している必要があります。
樹木作物であるため水はけのよい土壌を好み、栄養分が豊富な肥沃な土壌が適しています。

以上のような栽培条件のため、熱帯の中でも明瞭な雨季と乾季があるサバナ気候(Aw)の高原地帯に産地が広がっています。
ブラジル高原南東部はこのような条件が当てはまり、土壌も肥沃で水はけのよいテラローシャとよばれる玄武岩質の森林土壌なのでコーヒーの栽培に非常に適しています。

コーヒーノキのプランテーション

コーヒーを栽培するプランテーション(ブラジル南東部・ミナスジェライス州)。コーヒー豆を採取できるコーヒーノキは寒さに弱く、熱帯のプランテーションで大規模に栽培される。出典:Wikimedia Commons, ©Knase, CC BY-SA 3.0, 2022/11/6閲覧

16世紀以降にヨーロッパでコーヒーが普及しましたが、寒冷なヨーロッパではコーヒーノキを栽培することはできません。
そこで、熱帯の栽培適地にプランテーションを作り、輸出用に大規模栽培が行われました。
特にブラジル高原のテラローシャとよばれる玄武岩質の森林土壌がコーヒーの栽培に最適であり、赤道からやや離れたブラジル南東部(サバナ気候(Aw))で盛んに栽培されています。

収穫~コーヒー豆の加工

果実を実らせたコーヒーノキ(ブラジル南東部・ミナスジェライス州)。出典:Wikimedia Commons, ©Fernando Rebelo, CC BY-SA 3.0, 2023/5/24閲覧

コーヒーノキから収穫した果実からコーヒーを作り出すまでの工程は生産地と消費地に分かれて行われます。

まず、コーヒーノキから収穫した果実を乾燥させ、脱穀して種子を取り出します(精製)。
この工程は単純作業なので生産地で行われます。

乾燥して保存性を高めた生豆の状態で輸出され、消費地に運ばれます。
消費地に運ばれた生豆は、加熱乾燥させる焙煎(ばいせん)を行ってコーヒーの味や香りを引き出します。
焙煎されたコーヒーは粉砕して粉状にしてから水や熱湯を加えてコーヒーの成分を抽出して飲用します。

コーヒーは単価が高い嗜好品なので、精製や焙煎、抽出の方法にも様々な工夫がなされ、個人の好みに応えるために様々な商品があります。

焙煎したコーヒー豆。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2023/5/24閲覧

カップに入れられたコーヒーと敷きつめられたコーヒー豆。コーヒーはコーヒー豆を焙煎・粉砕・抽出して作られる飲料である。出典:Wikimedia Commons, CC0, 2023/5/24閲覧

コーヒーの文化

カフェ・サンマルコ(Caffè San Marco)の店内(イタリア北東部・トリエステ)。ヨーロッパではコーヒーハウス(カフェ)は歴史的に社交の場として機能した。このカフェも知識人や作家に愛用されていた歴史をもつ。出典:Wikimedia Commons, ©Alexandros Delithanassis, CC BY-SA 4.0, 2023/6/10閲覧

中東のイスラム世界で広まっていたコーヒーは、16世紀以降ヨーロッパでも普及しました。
イギリスではコーヒーハウスとよばれる喫茶店が流行し、人々の社交の場となりました。
コーヒーハウスでは、コーヒーだけではなくチョコレート紅茶たばこなどの嗜好品を楽しみながら、新聞を読んだり客同士で政治談義や世間話をしました。
このような政治談義や世間話は近代社会における「世論」を形成する場となり、民主主義政治の基盤として機能しました。

現在ではコーヒーハウス(カフェ)で政治談義を行う習慣は無くなりましたが、今でもコーヒー片手に談笑したり、ビジネスの商談の場として利用されています。

生産量と輸出入量

コーヒーベルト(黄)とコーヒーの生産量上位20カ国(2011年、緑)。コーヒーの生産国は北緯25度~南緯25度の熱帯地域に集中する。生産地が帯状に分布するためコーヒーベルトとよばれる。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2023/5/24閲覧

コーヒー豆の生産量(2017年)。出典:データブックオブ・ザ・ワールド2020年版 p62 二宮書店

コーヒー豆の貿易(2016年)。出典:データブックオブ・ザ・ワールド2020年版 p62 二宮書店

コーヒーは嗜好品として世界中で飲まれているのに対し、生産国は熱帯のコーヒーベルトに限られます。
そのため、栽培適地ではプランテーションによる大規模栽培が行われ、生産量の75%以上が輸出に回されます。

生産量一位のブラジルのブラジル高原南東部は気候(サバナ気候(Aw))・土壌(テラローシャ)ともに栽培に非常に適しており、生産量が非常に大きいです。
その他の産地は、ベトナムやインドネシアなどの東南アジア、コロンビアやホンジュラスのような中南米の熱帯の国々が並びます。

一方、輸入国は米国やドイツ、イタリア、日本のような温帯に位置する先進国が中心です。

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参考文献

コーヒー ウィキペディア 2023/5/24閲覧
コーヒーノキ ウィキペディア 2023/5/24閲覧
coffee (n.) エティモンライン - 英語語源辞典 2023/5/24閲覧
Coffea, Wikipedia 2023/5/24閲覧
世界のコーヒー豆の特徴 株式会社 澤井珈琲 2024/3/10閲覧
ブルーマウンテン ウィキペディア 2023/5/24閲覧
コーヒーの木を知っていますか? コーヒーの生育条件 味の素AGF株式会社 2023/5/24閲覧
コーヒー豆の栽培条件がそろった地域「コーヒーベルト」とは? 一般社団法人BULAVITY 2023/5/24閲覧
Terra Roxa, Wikipedia 2023/5/24閲覧
コーヒー豆の加工方式 コバルト – 神戸三宮の自家焙煎コーヒー豆屋 2023/5/24閲覧
コーヒーの歴史 ウィキペディア 2023/6/10閲覧
コーヒー・ハウス ウィキペディア 2023/6/10閲覧
English coffeehouses in the 17th and 18th centuries, Wikipedia 2023/6/10閲覧
Caffè San Marco, Wikipedia in italiano 2023/6/10閲覧

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