侵食は、外的営力が地面が削り取ることで新しい地形を作り出す作用です。
内的営力によって隆起した地面を削り取る作用である侵食は、人間が目で見える様々な地形を形作っています。
このページでは、外的営力の代表例である侵食について解説します。
侵食

侵食とは、外的営力(雨水や川、氷河などが流れること等)により地球表面の岩石や土壌を削り取る作用のことです。
「浸食」という字をあてることもありますが、侵食の原因は水だけとは限らないので「侵食」を使う方が適切です。

標高がより低い場所に水や氷河が流れることで侵食がおきるため、ある程度高い場所でないと侵食が発生しません(水が流れない)。
これ以上標高が低いと水や氷河が流れることができずに侵食がおきない標高のことを侵食基準面といいます。
水の流れによる侵食では多くの場合、侵食基準面は海面です。
水が海まで流れると、それよりも下の地面は海の底に沈んでいるため、川や氷河による侵食は起きません。
しかし、内陸の場合には侵食基準面が湖の湖面のこともあります。
侵食の分類
侵食は外的営力(地面を削る作用)の種類によって分類できます。
たとえば、河川による浸食を河食(かしょく)、海水による浸食を海食(かいしょく)といいます。
河食、海食などは、何が土壌を侵食するかによって、〇食という名前がつけられています。
一般的に侵食は水が流れることによっておきますが、植生が少ない乾燥地形では風の力で地表の砂が運ばれて侵食がおきることがあります(風食)。
ここでは、侵食の分類として、河食、海食、氷食、溶食、風食を紹介します。
河食

河川による侵食を河食(かしょく)と呼びます。
一見、平坦に見える場所であっても雨水は少しでも低い場所を目指して筋状に流れていき、同時に少しずつ地面の土を削っていきます。
筋状に流れる水はやがて合流して一本の川筋になり、水が集まることで地面を削る力も強くなっていきます。
河川の上流の山間部で見られるような急斜面では、川が流れ速度が速いため侵食の力が強く、特に川底を削る作用(下方侵食)が強く働くことでV字谷のような急峻な峡谷が見られます。
また、川の流れは川底だけではなく川の両岸を削る作用(側方侵食)もあり、川の両側も削って川沿いの低地を作り出すこともあります。
川の下流部では傾斜もゆるやかになり上流で削った土砂が堆積する作用が強くなるため、下流部では侵食よりも堆積が顕著に見られます。
海食

波など海水の動きによる侵食を海食(かいしょく)と呼びます。
海岸では月の引力や強風などの影響で波が動き、海岸に打ちつけて沿岸を侵食します。
陸地側が傾斜地である場合、侵食が進むと地層が露出した海食崖(かいしょくがい)とよばれる海に面した崖の地形ができあがります。
氷食

氷河による侵食を氷食(ひょうしょく)と呼びます。
氷河が地表を移動する際に地表の岩石を削り取ることで、地面をこすり取ったような跡が残ります。
氷食はかつて氷河が存在した場所で見られます。
かつて大陸氷河が存在したヨーロッパ北部や山岳氷河が存在した日高山脈(北海道)や日本アルプス(飛騨山脈、木曽山脈、赤石山脈)などで見られます。
溶食

溶食(ようしょく)とは、雨水と土壌が化学反応をおこして土壌が水に溶けて流出する現象です。
川による侵食(河食)では土壌の土を物理的に押し流してしまうのに対し、溶食では化学反応により土壌が水に溶けた(=化学的風化)後に、水に溶けた成分が物理的に流れ出てしまう(侵食)という違いがあります。
溶食は主に水に溶けやすい石灰岩質の土壌で見られ、カルスト地形と呼ばれる独特な地形を作り出す営力(地形を作り出す力)になります。
風食

風により土壌が侵食されることを風食(ふうしょく)と呼びます。
風による侵食では、風で表面の細かい砂が飛ばされる場合と、飛ばされてきた砂が地表の岩石をこすって表面を削り取る場合があります。
森林や草原のように土壌表面が植物に覆われて保護されている場所では風食を受けずらく、逆に乾燥帯のように地面が直接露出している場所では風食を受けやすいです。
侵食輪廻
侵食によって地面が削られ、地形が変化していく過程を侵食輪廻(地形輪廻)といいます。
侵食輪廻は1899年にアメリカのデービス(William Morris Davis, 1850-1934)によって提唱された概念です。
侵食輪廻では、侵食を受ける前の原地形が少しずつ侵食されて一部にV字谷を形成し(幼年期地形)、時間の経過とともに原地形が失われて谷の方が多くなり、ホルン(ホーン、尖峰)が見られる急峻な山脈になります(壮年期地形)。
さらに侵食が進むと山も削られてなだらかになり、侵食から取り残された残丘(モナドノック)が点在する平坦でゆるやかな地形(準平原)になります(老年期地形)。
準平原が広がる老年期地形は侵食輪廻の最終段階です。
準平原が内的営力により隆起すると隆起準平原とよばれる台地になります。
隆起準平原は侵食基準面より高いので、次の侵食における原地形となります。
侵食輪廻については、次のページで解説しています。
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参考侵食輪廻(幼年期地形・壮年期地形・老年期地形)
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参考文献
侵食とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、岩石学辞典 2025/6/19閲覧
鈴木隆介「しんしょく 侵食」地形の辞典 日本地形学連合編 朝倉書店(2017)
リル(地学)とは コトバンク 世界大百科事典内のリル(地学) 2021/1/11閲覧
Dead Sea, Wikipedia 2025/6/19閲覧
侵食(シンショク)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2025/6/21閲覧
海食(カイショク)とは? コトバンク 百科事典マイペディア、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2025/6/21閲覧
北海道:北海道:七ツ沼カール群(幌尻岳,戸蔦別岳) 地質情報ポータルサイト 2025/6/22閲覧
幌尻岳(ポロシリダケ)とは? コトバンク 改訂新版 世界大百科事典、百科事典マイペディア 2025/6/22閲覧
漆原和子「ようしょく 溶食」地形の辞典 日本地形学連合編 朝倉書店(2017)