我々が普段暮らしているのは地球の表面であり、地球内部の大部分は見たこともなく関わりもありません。
しかし、地球の内部構造は地表で大地形をつくる動きを理解するために重要であり、プレートテクトニクスを理解する前提となる知識です。
このページでは、地球を縦方向に見たときの地球の内部構造とその構成要素(地殻、マントル、リソスフェア、アセノスフェアなど)について見ていきます。
目次
地球の内部構造
上図は地球の内部構造を示した模式図です。
地球内部の構造を鉛直(縦)方向に分類すると、地表から地球中心に向かって、地殻(ちかく)、マントル、核(外核+内核)の順に並んでいます。
これらは岩石の化学的な組成(含まれる元素の種類)を元にした分類であり、各層(地殻、マントル、核)ごとに含まれる岩石の種類が変わります。
一方、リソスフェアやアセノスフェアのように岩石の流動性(液体や固体など)といった物理的な性質を元にした分類も存在します。
岩石の化学組成に基づく分類と物理的な流動性に基づく分類の境界は必ずしも一致しません。
たとえば、リソスフェアは地殻全てとマントルの最上部だけを含む分類ですが、これは地殻とマントル最上部が硬い岩盤(プレート)になっているためです。
一方、その下のアセノスフェア(マントルの一部)では化学組成こそマントル最上部と同じですが、リソスフェアよりも流動性が高い層になっており、リソスフェアとは異なる名前がつけられています。
以下では、岩石の化学組成に基づく分類と物理的な流動性に基づく分類について順に見ていきます。
岩石の化学組成に基づく分類
地球表面から地球の中心に向かって地殻、マントル、核(外核+内核)の順に並んでいます。
この項目では、地球内部の縦方向の構造(鉛直構造)について、岩石の化学的な組成(含まれる元素の種類)に基づく分類を見ていきます。
地殻
地殻(ちかく)は、地球内部を縦方向に見た際に最も外側の層です。
地球の半径が約6,000kmであるのに対し、地殻はわずか5-50km程度の非常に薄い層です。
地殻の厚さや岩石の種類は海洋と大陸で異なります。
海洋(正確には海洋プレート)上では、玄武岩などからなる厚さ5-10km程度の薄い層になります。
一方、大陸(正確には大陸プレート)上では、海洋プレートの玄武岩質の層の上に花崗岩(かこうがん)からなる厚い層が乗っかり、全体では厚さ30-50km程度になります。
大陸地殻の花崗岩質の地殻は低密度で軽いという特徴があります。
大陸プレートは海洋プレートより軽いため、狭まる境界で海洋プレートと大陸プレートが衝突した際には高密度で重い海洋プレート側が沈み込みます(沈み込み帯)。
マントル
マントルは地球内部を縦方向に見た際に、地殻と核(外核)の間にある層です。
地殻が花崗岩や玄武岩質の岩石からなるのに対し、マントルはかんらん岩(橄欖岩)質の岩石からなります。
地殻とマントルの境界は深さ5-50kmであり、外核との境界は深さ2,900kmになります。
マントルは均質な1つの層ではありません。
最上部(深さ60-100kmまで)は地殻と同様に硬い岩盤(リソスフェア)であるのに対し、その下の深さ200-250kmまでは固体ながらも流動性のある層(アセノスフェア)となり、さらに下は再び硬い岩盤のような層(メソスフェア)となっています。
参考
地震波の観測から見つかったマントル
地球内部の状態を直接調べることは現在でも困難であり、人類はまだマントルの岩石を直接調べることはできていません。
しかし、地震波の進み方を調べることで、地球内部の状態を調べることができます。
マントルの存在は、地殻とは地震波の進み方が異なることから発見されました。
地殻を進んでいた地震波がマントルとの境界に達すると、地震波が屈折して速度も急激に変化します。
そのため、地殻とは異なる層が存在すると考えられ、マントルとよばれるようになりました。
現在では、このような変化は地殻とマントルの化学組成の違いによる密度差が原因であることがわかっています。
同様に、マントルの下にある外核や内核も地震波の進み方が異なることから発見されました。
核
核は地球内部を鉛直(縦)方向に見た際に、最も内側(マントルの内側)にある層です。
深さ2,900kmより内側に位置し、4,000℃以上の非常に高温になっています。
マントルまでは岩石が主成分ですが、核は鉄やニッケルなどの金属が主成分です。
核は直接掘削して調べるのが困難であるためよくわかっていないことが多く、地震波が地中を伝わる速度を数理モデルで解析して核の内部構造の研究が行われています。
核は外側の外核と内側の内核に分けられます。
外核は深さ2,900-5,100km、内核は深さ5,100-6,400km (地球の中心まで) に位置します。
外核は液体の金属であるのに対し、内核は固体の金属によって構成されています。
物理的な流動性に基づく分類
ここからは、岩石の組成(元素の種類)を無視した物理的な性質の違いに基づく分類(リソスフェア、アセノスフェアなど)についてまとめます。
特にマントルは均質な1つの層ではなく、硬い岩盤の層(リソスフェア)や流動性の高い層(アセノスフェア)があります。
流動性が高いアセノスフェアが対流によって動くことで、その上に乗っかっている硬い岩盤(プレート)のリソスフェアが移動し、地上では大陸が移動しているように見えます。
このため、物理的な流動性に基づく分類は、プレートテクトニクスを理解する上で重要な概念です。
リソスフェア(岩石圏)
リソスフェア(岩石圏)は、地球の鉛直(縦)方向で見た際に、最も外側に位置する硬い岩盤で構成された層です。
リソス(lithos)は古代ギリシャ語で「岩」、sphereは「球体」を意味します。
リソスフェアは地殻とマントルの最上部(リソスフェア・マントル)に対応しており、地表から深さ60-100kmに相当します。
地殻とマントル最上部は化学組成(物質の種類)は異なりますが、硬い岩盤になっている点は共通しています。
リソスフェアの下には流動性が高い層(アセノスフェア)があり、その上に乗っかっているリソスフェア(地殻+マントル最上部)は、海に浮かべた板材のように動きます。
このため、リソスフェアはプレートともよばれます。
プレート(リソスフェア)は地球全体では十数枚に分かれており、互いにぶつかり合ったり遠ざかるなど様々な動きをしています。
複数のプレートの境界ではプレート同士の押し合いなどで大山脈などの新しい地形が作られます。
アセノスフェア(岩流圏)
アセノスフェア(岩流圏)は、地球の鉛直(縦)方向で見た際に、リソスフェアの内側に位置する高温で流動性が高い層です。
アセノス(Asthenos)は古代ギリシャ語で「弱い」「強度のない」を意味します。
アセノスフェアはマントルの一部であり、深さ100~数百km付近に相当します。
流動性が高いアセノスフェアではマグマが対流しているため、アセノスフェアが移動することで上に乗っかっているリソスフェアを動かす原動力となっています。
内核と外核
内核と外核も物理的な性質に基づく分類です。
核自体は金属を主成分とする層であり、その上の岩石を主体とするマントルとは化学組成が異なる層です。
しかし、核の中では同じような化学組成でも液体の外核と固体の内核に分かれています。
外核は深さ2,900-5,100km、内核は深さ5,100-6,400km (地球の中心まで) に位置します。
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参考文献
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NO6.地球内部のダイナミクス 地震調査研究推進本部 2024/9/27閲覧
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リソスフェア(りそすふぇあ)とは? コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、日本大百科全書(ニッポニカ) 2024/9/27閲覧
リソスフェア 地震調査研究推進本部 2024/9/27閲覧
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アセノスフェア(あせのすふぇあ)とは? コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、日本大百科全書(ニッポニカ) 2024/9/27閲覧
アセノスフェア 地震調査研究推進本部 2024/9/27閲覧
Asthenosphere, Wikipedia 2024/9/27閲覧