地理情報 系統地理

測量のしくみ(三角測量・三角点・水準点)

測量とは、2点間の位置関係を決めることです。
地図上の建物や海岸線などの位置関係を正確に決めるために測量は必須であり、地図は測量の結果を描いているものです。
このページでは、はじめに基本的な測量方法である三角測量について紹介し、三角点や水準点といった基準点、天体観測による測量について解説します。

測量のしくみ

米国海洋大気庁(NOAA)による水準測量(高さ測量)の様子(米国北東部・マサチューセッツ州南部・Quick's Holeの海岸線)。潮流計の撤去に伴う測量を行っている。既に位置がわかっている地点(基準点、写真手前左側)に測量機器を設定し、高さを測りたい地点(写真奥左側)に目盛りのついたものさしを垂直に立てる。手前側の機器と水平な位置にある目盛りの値を読むことで、目盛りを置いている場所の高さを算出する。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/4/21閲覧

測量とは、地球上の2点間の位置関係を機器を用いて測定し、相対的な位置関係を決めることです。
地図を作成するためには、地図に記載する様々な対象物(建物や道路、海岸線など)の形や大きさ、位置関係(距離、方角、高さ等)などを正確に把握する必要があります。
そこで、距離や角度情報を組み合わせてニ点間の位置関係を決める測量が行われてきました。
既に位置がわかっている場所を基準点として測量を繰り返すことで互いの位置関係がわかる範囲が広がります。
このように多くの地点の測量を繰り返して得られた位置情報を元に地図を作成します。

三角測量

三角測量による山の高さの測定。山の高さhは直接測定することはできない。そのため、山から離れた平地の2点間の距離lを測定し、それぞれの地点と山の頂上を結んだ線の角度α, βを測定する。三角形の幾何学的な制約から、三角関数の1つである正接関数(tan)の関係を利用して高さhを数学的に算出できる。出典:Wikimedia Commons, ©Vectorised by User:Sushant savla from the work by User:Régis Lachaume, 2005, CC BY-SA 4.0, 2024/4/21閲覧

最も基本的な測量方法の1つに三角測量があります。
三角測量とは、三角形の一辺の長さと二つの角の角度を測定し、三角形の数学的な定理から直接測定していない辺の長さを求める測量方法です。

上の図では、山の高さを三角測量により算出しています。
山の高さ(上図の線分 h)は直接測定することができません。
そこで、はじめに山が見える平地の2点を基準点とし、その2点間の距離を測定します(上図の距離 l)。
次に、2点からそれぞれ山の頂上へ結んだ線を引き、その直線と地平面の角度(上図の角度 α, β)をそれぞれ測定します。
上図の青点線の三角形について、一辺の長さ(l)と二つの角の角度(α, β)がわかるため、三角形の数学的な定理から山の高さ(h)を算出できます。
数学で学習する正弦(sin)、余弦(cos)、正接(tan)といった三角関数は、このような角度と辺の長さの関係を求めるために役立つ関数です。

このようにして、位置関係がわかる場所を基準点として、三角形を作りながら測量を繰り返すことで位置関係を特定していきます。

三角点

伊吹山(いぶきやま)の山頂に設置された一等三角点(標高1,377m、滋賀県東部・米原市)。三角点は緯度や経度が厳密に測定された地点であり、新たに測量を行う際に基準となる点である。三角点の本体は地面に埋め込まれた柱状の石(標石)であり、上部に十字がほられ、三角点の位置を正確に示している。三角点は山頂などの見晴らしの良い場所を中心に全国約10万箇所に設置されている。出典:Wikimedia Commons, ©Alpsdake, CC BY-SA 3.0, 2024/4/21閲覧

三角点とは、緯度や経度などの位置情報が厳密に測定された基準点です。
新たに測量を行う際には、三角点を基準として三角測量を行って位置を決定します。

三角点は山頂などの見晴らしの良い場所に設定され、位置がわかるように柱状の石(標石)が地面に埋めこまれています。
三角点には測定した順番に応じて一等三角点から四等三角点まで存在し、全国に10万箇所以上存在します。

水準点

高さの基準点として設置された一等水準点(千葉県北東部・香取市)。中央の柱状の石(標石)が水準点である。水準点は標高が厳密に測定された点であり、新たに測量を行う際に高さの基準となる点である。地盤沈下などによって高さが変わらないように地盤が強固な場所に設置されることが多い。一等水準点は全国の主要な国道沿いに約2km間隔で設置されている。出典:Wikimedia Commons, ©katorisi, CC BY 3.0, 2024/4/21閲覧

水準点とは、標高が厳密に測定された高さの基準点です。
ある地点の「高さ」を測定する際には、水準点を基準して測量を行います。

三角点が経緯度の基準点であるのに対し、水準点は高さ方向(標高)の基準点となります。
地盤沈下などによって高さが変わらないように地盤が強固な場所に設置されることが多いです。
全国の主要な国道沿いに約2 km間隔で設置され、設置箇所がわかるように柱状の石(標石)が地面に埋めこまれています。

天体観測による現在位置の特定

地球上の緯度や経度といった大きなスケールでの位置関係を特定するためには、天体観測により測定した太陽や星の位置情報を利用します。
たとえば、ある季節のある時刻に太陽や他の星の位置を観測することで、相対的な位置関係がわかります。
夏至の南中時のように天体の位置情報が正確にわかる場合、天体観測の結果から観測地点の緯度や経度を求めることができます。

参考

太陽と月の観測による現在位置の特定。特定の時刻に太陽と月の高度角を測定し、その角度を元に現在位置を特定できる。赤線は太陽の観測結果、青線は月の観測結果に基づく現在位置である。両者が交わる2点が現在位置の候補である。この例では、北大西洋上と南アメリカ大陸の内陸部が候補であり、どちらが現在位置であるかは観測者にとっては自明である。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/4/21閲覧

天測航法
天体観測による位置情報の決定は、海上を移動する際に現在位置を把握するために古くから利用されてきました。
古代ポリネシアの先住民は点在する島をカヌーで移動するために天体観測により位置を把握していました。
船舶や航空機においても、天体観測を行って現在位置を把握する天測航法が20世紀後半まで利用されていました。

しかし、1983年に天測航法で運航していた大韓航空機(ニューヨーク発ソウル行き)が誤ってソ連領内(樺太)に侵入して撃墜される事件が発生しました(大韓航空機撃墜事件)。
そこで、アメリカ政府は当時軍事目的で運用されていたGPSを民間開放することを決定しました。
現在ではGPSを利用して現在位置を特定できるため、天測航法は補助的な存在になっています。

ちなみに、軍隊では現在でも天測航法の実習が行われています。
GPSは電波を発するため自分の位置が敵に探知されるリスクがあるのに対し、天体観測は電波を発しないためです。

関連記事

参考地球の自転と公転(地軸の傾きと四季)

続きを見る

参考地球平面説と地球球体説(地球の形の議論の歴史)

続きを見る

参考陸地と海洋(大陸と外洋を大まかに理解)

続きを見る

参考地球の形と大きさ(地球の半径と表面積の概算)

続きを見る

参考文献

測量(そくりょう)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、改訂新版 世界大百科事典 2024/4/21閲覧
TSを用いた出来形管理ガイドブック(平成24年度要領対応版) 一般社団法人 日本建築機械施工協会 2024/4/21閲覧
三角点 国土地理院 2024/4/21閲覧
水準点 国土地理院 2024/4/21閲覧
天文測量(てんもんそくりょう)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2024/4/21閲覧
天文経緯度と測地経緯度 塩屋天体観測所 2024/4/21閲覧
天測航法 ウィキペディア 2024/4/21閲覧
準天頂衛星システムの歴史 宇宙航空研究開発機構(JAXA)(国会図書館によるアーカイブ 2017/4/6時点) 2024/4/22閲覧

-地理情報, 系統地理