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局地風と成因の分類(海陸風・山谷風・地峡風・滑降風など)

世界各地で見られる局地風(地方風)の種類は膨大ですが、風が形成される要因に基づいていくつかに分類できます。
このページでは、局地風を成因ごとに解説し、どのような局地風があるかを紹介します。

局地風とは

局地風は特定の地域に限って吹く風のことを指します。
全地球的な規模の風(恒常風など)や大陸-海洋間など数千kmの範囲で発生する風(季節風など)に対し、これよりもさらに小規模で局地的な地形の効果や、地域的な気圧や気温の特徴によって形成された風を局地風と言います。
その地方に特有の性質をもつ風であることから、地方風ともよばれます。

局地風の成因別分類

世界各地の局地風(地方風)は非常に数が多く、地域ごとにそれぞれ固有の名前がつけられています。
一例として、北アフリカのシロッコやアドリア海沿岸のボラ、東北地方太平洋側のやませ、神戸の六甲おろしなどがあります。
これらの局地風はその発生要因ごとにいくつかに分類することができます。
以下では、局地風を成因別に分類・整理して解説します。

参考

やまじ風のしくみ。四国の西を低気圧が北進する際に、低気圧に吹き込む風は灰色矢印のような風向きになる。このため、四国山地を越える南風が発生するが、四国山地は東側の剣山地と西側の石鎚山脈の標高が高く(1,900m)、中央の法皇山脈の標高が低い(1,400-1,000m)ため、赤矢印のように中央部に集中して強風となる。強風は山を越えて瀬戸内海側の低地(愛媛県東部・新居浜市~四国中央市)に吹き下ろす。この際、フェーン現象が発生して気温が上昇する。出典を加工して作成。出典:Wikimedia Commons, CC0, 2026/2/18閲覧

複数の要因が複合して形成される局地風:やまじ風
複数の要因が絡んで1つの局地風が形成されることもあります。
愛媛県東部の新居浜市・四国中央市付近を吹く強い南風であるやまじ(やまじ風)は、①低気圧という風の原動力、②四国山地の地形的要因(地峡風)、③山を吹き下ろすという地形的要因(フェーン)の3つの成因が複合して形成された局地風です。

地球の自転

地球の大気の循環と恒常風の模式図。円の外側の矢印は地表と上空の大気の循環を示している。出典を加工して作成。出典:Wikimedia Commons, ©Kaidor, CC BY-SA 3.0, 2021/1/23閲覧

地球の自転は地表で大規模な風を生み出す原動力であり、年間通して一定方向に吹く恒常風の原動力です。
恒常風である貿易風偏西風は地球全休規模の風なので局地風ではありません。
一方で恒常風に地域ごとの特性が加わって局地風として独自の名前がつけられているものもあります。

たとえば、西アフリカのギニア湾北岸~ヴェルデ岬(セネガル)では、ハルマッタンとよばれる北東貿易風が吹いています。
ハルマッタンは貿易風ですが、サハラ砂漠を中心とした乾燥帯から吹く乾燥した風であり、サハラ砂漠の砂塵を運んでくるという特性をもつため、他の貿易風とは区別された局地風としてハルマッタンという名前がつけられています。

サハラ砂漠から吹く北東風であるハルマッタンが吹く前後の比較(ナイジェリア中央部・アブジャ)。ハルマッタンはサハラ砂漠からの砂塵を運ぶため、視界が非常に悪くなる。出典:Wikimedia Commons, ©Jeff Attaway on Flickr, CC BY 2.0, 2026/2/15閲覧

低気圧・高気圧

やませ(山背)が吹く時の典型的な天気図(2019年7月6日)。オホーツク海付近に寒気を伴ったオホーツク海高気圧が停滞している。この高気圧から東日本の太平洋側に吹き込む冷たい北東風がやませである。この天気図では、南側には太平洋高気圧が張り出しているため、オホーツク海高気圧からの風は南西側に向かって進み、東日本の太平洋沿岸に北東風として吹き込む。出典:東北地方の夏の天候の特徴 気象庁 2026/2/11閲覧

低気圧や高気圧が存在すると、気圧差が発生して高気圧から低気圧に向かって風が吹きます。
亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)高緯度低圧帯のように同じような気圧配置が継続する環境にある場合、高気圧から低気圧に向かって同じような方向から風が吹くことが多くなります。
季節風(モンスーン)が見られる場所でも、季節ごとに同じような方向から吹く局地風が見られます。
このように低気圧や高気圧の気圧配置に起因する局地風としては、シロッコブリザードやませ(山背)やまじ(やまじ風)などがあります。

表 低気圧や高気圧の影響を受けて発生する局地風

局地風地域・季節特徴
やませ東北地方(太平洋側)
6-8月頃
オホーツク海高気圧から吹き込む寒冷湿潤な北東風
シロッコヨーロッパの地中海沿岸
3-5月
低気圧の影響を受けてサハラ砂漠から地中海を越えて吹き込む高温湿潤な南風降砂を伴う
ハムシン
(カムシン)
エジプト
3-5月
低気圧の影響を受けてサハラ砂漠から吹き込む高温乾燥した南風
ブリザード北米の高緯度地域
積雪期
低気圧接近時に積雪を舞い上げてる暴風雪
やまじ
(やまじ風)
愛媛県東端部(四国中央市・新居浜市)
3-5月
低気圧の影響を受けて吹く南風が、四国山地のうち標高が低い中央部を越えて北側に吹き下ろす・フェーン現象を伴う

次の記事では、やませ、シロッコ、北米のブリザードについて解説しています。

参考低気圧・高気圧に起因する局地風(やませ・シロッコなど)

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温度差

場所による温度差が原因で吹く局地風もあります。
温度が高い場所では空気が膨張して軽くなるので上昇気流が発生しやすく、それを補うために逆に温度が低い場所では下降気流が発生します。
このため地表では、温度が低い場所(高圧部)から温度が高い(低圧部)場所に向かって風が吹きます。

このような現象が起こりやすいのは、海と陸のように比熱(物質の温まりやすさ)が違う場所です。
海と陸は昼夜で気温の大小関係が逆転し、風が吹く方向も逆転します(海陸風)。
山と谷にも同様の関係が成立し、山谷風と呼びます。

以下では、海陸風と山谷風についてそれぞれ解説します。

海陸風

海陸風の模式図。海陸風は海と陸の温度差により日中と夜間で風向きが逆になる局地風である。(上)日中は太陽光に暖められて陸地側の気温が上昇して上昇気流が発生するため、それを補うために海側で下降気流が発生し、地表では海から陸に向かって海風が吹く。(下)夜は放射冷却により陸地の気温が低下して相対的に気温が高い海側で上昇気流が発生し、それを補うために陸側で下降気流が発生し、地表では陸から海に向かって陸風が吹く。このように海陸風は1日の中で風が吹く方向が変化する風である。

海陸風(かいりくふう)は、海と陸の温度差により日中と夜間で風向きが逆になる風のことです。
海の水は陸地よりも比熱が大きいため昼と夜の温度差が小さいですが、陸は比熱が小さいため昼と夜の気温差が大きくなります。
このため、昼は海よりも陸地の方が気温が高くなり、気温が高い陸地側で上昇気流が発生し(気圧は低下)、それを補うように海洋側で下降気流が発生します(気圧は上昇)。
この結果、日中は海から陸に向かって海風(かいふう、うみかぜ)が吹きます。

一方、夜には放射冷却によりも陸地の気温が低下していき、気温が相対的に高くなった海洋側で上昇気流が発生し、それを補うように陸地側で下降気流が発生します。
この結果、夜間は陸から海に向かって陸風(りくふう、りくかぜ)が吹きます。

沿岸地域では、このように1日の間に風が吹く方向が変化する海陸風が年間通して見られます。
ただし、季節風(モンスーン)など他の風の影響により海陸風が見えなくなることもあります。

山谷風

山谷風の模式図。山谷風は山頂部(稜線)と谷筋の温度差により日中と夜間で風向きが逆になる局地風である。(左)日中は太陽光に暖められて気温が上昇するが、太陽に近く空気が薄い稜線上では空気が暖まりやすいので上昇気流が発生する。稜線の上昇気流に引っ張られて平地から谷筋、稜線に向かって谷風が吹く。(下)夜間は山頂部の方が冷めやすいため放射冷却により気温が低下して下降気流が発生する。稜線の下降気流に押されて稜線から谷筋、平地に向かって山風が吹く。

山谷風(やまたにかぜ)は、山間部において山頂部(稜線)と谷筋の温度差により日中と夜間で風向きが逆になる風のことです。
山頂部では標高が高く空気が薄いため暖まりやすく冷めやすく、昼と夜の気温差が大きくなります。
このため、太陽光で照らされる日中は谷筋よりも山頂部で空気が暖められて上昇気流が発生します(気圧は低下)。
山頂の上昇気流に引っ張られて山の斜面では山の上る風が吹き、その風に引っ張られて平地から山に向かって谷筋を上る谷風(たにかぜ)が吹きます。

一方、夜には山頂部の方が冷めやすいため放射冷却により気温が低下し、下降気流が発生します(気圧は上昇)。
このため、山頂から斜面を下り、谷筋を山から平地に向かって下る山風(やまかぜ)が吹きます。

山間部では、このように1日の間に風が吹く方向が変化する山谷風が吹きます。
山谷風はよく晴れた穏やかな日にはっきり見られ、低気圧や前線が近づいた時にはサイクルが乱れます。

地形

局所風(地方風)の中には、地形の影響を受けて発生するものもあります。
以下では、地峡風(海峡風)と滑降風について順に解説します。

地峡風(海峡風)

ギャップ風(gap wind)の模式図。ギャップ風は地峡や海峡のような周囲を高い場所で囲まれた細長い場所やその出口付近で発生する局地風である。地峡で発生するギャップ風を地峡風、海峡で発生するギャップ風を海峡風と呼ぶ。地峡や海峡に限らず、峠や谷口でもギャップ風が吹く場所がある。

ギャップ風(Gap wind)は、地峡や海峡のような周囲を高い場所で囲まれた細長い場所やその出口付近で発生する局地風です。
地峡で発生するギャップ風を地峡風、海峡で発生するギャップ風を海峡風とよびます。

ギャップ風が見られる場所としては、アルプス山脈を越えるブレンナー峠(イタリア北東部/オーストリア西部)や、太平洋とシアトルやバンクーバーの間を結ぶファンデフカ海峡(米国北西部・ワシントン州/カナダ西部・ブリティッシュコロンビア州)などです。
日本では、最上川が庄内平野に出る谷口(山形県北西部・庄内町清川)で見られる清川だしが有名です。

表 ギャップ風(地峡風や海峡風)の特徴をもつ局地風

局地風地域・季節特徴
清川だし山形県庄内町
3-5月
最上川の峡谷を通り庄内平野に吹き抜ける南東風の地峡風(谷口で強風)
ミストラルフランス南東部・ローヌ河谷
冬~春
フランス南東部を南北に流れるローヌ川の峡谷を吹き抜ける北風
やまじ
(やまじ風)
愛媛県東端部
3-5月
低気圧の影響を受けて吹く南風が、四国山地のうち標高が低い中央部を越えて吹く・フェーン現象を伴う

次の記事では、ギャップ風について解説しています。

参考地峡・海峡に吹く局地風(清川だし・ミストラルなど)

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滑降風(フェーン型・ボラ型)

山脈の上から平地に向かって滑り降りるように吹く風を滑降風(かっこうふう)といいます。
滑降風はその成因を大別してフェーン型とボラ型の2種類があります。
フェーン型は山脈の向こう側から山を乗り越えて吹き下ろすのに対し、ボラ型は山脈や高原など標高が高い場所に滞留して放射冷却により冷やされて空気が重くなって落ちてきた滑降風です。

地形性降雨とフェーンの模式図。左側から冷たく湿った風が山を越える際に地形性降雨がおきて水蒸気を失い、山の風下側では暖かく乾いた風(フェーン)が吹く。出典を加工して作成。出典:Wikimedia Commons, ©Depunity, CC BY-SA 4.0, 2026/2/12閲覧

フェーン型は山脈を越えてきた風が低地に吹き下ろす暖かく乾燥した滑降風です。
フェーンは山脈を越えた向こう側から吹いてくる風であり、山の斜面を上る過程で空気が膨張して温度が低下し、空気中の水分が結露して雲になり雨が降るため(地形性降雨)、乾燥した空気が山を下ってきます。
この際、気圧が低い山頂から気圧が高い平地に下る過程で空気が圧縮されて温度が上昇します。

標高0mの場所から山脈を越えて標高0mの場所に戻っても温度は最初と同じはず(上昇時の気温低下分と下降時気温上昇分は同じはず)です。
しかし、フェーンは途中で空気中の水分を結露(凝結)により失っているため、化学反応により凝縮熱が発生してその分空気が暖められているため、元の空気より暖かくなっています。

ボラ型の滑降風(カタバティック風)の模式図。山脈など標高が高い場所に空気が滞留すると、放射冷却により冷やされて温度が低下する。低温の空気は重いため、重力に従って斜面を下降していく。このため、ボラ型の滑降風は重力風とも呼ばれる。季節的には寒冷な冬に見られやすく、時間帯としては放射冷却が進む夜間から明け方にかけてが顕著である。

一方でボラ型は、冷たく乾燥した滑降風です。
ボラ型は山岳地帯の標高が高い場所で冷却・収縮した重い空気があふれだし、山の斜面を重力に従って斜面を下降する滑降風です。
重力に従って下降することから重力風とも呼ばれます。

ボラ型の例としては、ディナル・アルプス山脈を越えてアドリア海東岸に吹き下ろすボラや日本の太平洋側で見られるおろし伊吹おろし、赤城おろし、広戸風等)、阿蘇山から吹く冷風であるまつぼり風などがあります。
南極大陸のブリザードもボラ型の滑降風であり、高地で冷やされた空気が斜面を下降して低地で雪を巻き上げて発生します。

参考文献

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海陸風とは?風が吹く仕組みや特徴をわかりやすく解説 tenki.jp 2025/2/11閲覧
山谷風の仕組みや特徴を解説 海陸風との違いも紹介 tenki.jp 2025/2/11閲覧
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ブレンナー峠(ぶれんなーとうげ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、改訂新版 世界大百科事典、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2026/2/13閲覧
滑降風はフェーン型とボラ型 お天気雑学・知恵袋 お天気.com 株式会社ヘッジホッグ・メドテック 2026/2/11閲覧
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質疑応答(1975年1月) 日本気象学会 2026/2/11閲覧

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