広がる境界(発散境界)は2つのプレートが互いに離れるように動くプレート境界であり、主に海洋上(正確には大洋上)に位置します。
このページでは広がる境界の中でも大西洋などの大洋上に位置する広がる境界に着目してその分布と地形(海嶺・ギャオ)について解説します。
【プレートテクトニクス:広がる境界(海洋・大陸)・狭まる境界(沈み込み帯(地形)・衝突帯)・ずれる境界】
大洋上の広がる境界(発散境界)
広がる境界(発散境界)は、2つのプレートが互いに離れるように動くプレート境界です。
次の図は世界のプレート境界を示したものです。
濃赤色の線(海洋リフト)が大洋上の広がる境界、ピンク色(大陸リフト)が大陸上の広がる境界です。
上図を見ると、広がる境界は主に海洋上に分布していることがわかります。
広がる境界が存在する場所としては、大西洋中央部やインド洋西部、南極の外周部、南太平洋の南米大陸沖などがあります。
これらの大洋上の広がる境界では、海嶺とよばれる海底山脈がみられます。
地形の詳細については次の項目で取り上げます。
大洋上の広がる境界の地形
大洋上の広がる境界で見られる地形として海嶺とギャオがあります。
海嶺は大洋の広がる境界のプレート境界に見られる海底山脈です。
海嶺の大部分は海の下に位置しますが、山の頂上が所々海水面より高くなり、火山島となっている場所があります。
大西洋に浮かぶアイスランド島は海嶺が地表に出ているめずらしい場所であり、地上に表れた大地の裂け目を現地の言葉(アイスランド語)でギャオとよびます。
以下では、海嶺とギャオについて順に解説します。
海嶺
大洋上に位置する広がる境界では、プレート境界に沿って海嶺(かいれい)とよばれる海底山脈が連なっています。
代表的な海嶺としては、大西洋の中央を南北に走る大西洋中央海嶺があります。
大西洋中央海嶺は、東側のユーラシアプレート・アフリカプレートと西側の北アメリカプレート・南アメリカプレートの境界上に位置します。
そのため、北極海から南半球の南緯50°付近まで海嶺が続き、総延長は7万kmにもおよびます。
その他の海嶺としては、インド洋のインド洋中央海嶺(中央インド洋海嶺)や南太平洋東部の東太平洋海嶺などがあります。
世界の主な海嶺
・大西洋中央海嶺:大西洋中央部(北極海~南緯50°付近)、東側のユーラシア/アフリカプレートと西側の南/北アメリカプレートの境界
・インド洋中央海嶺(中央インド洋海嶺):インド洋西部(紅海出口のアデン湾~インド南西沖~マダガスカル東沖)、北東側のアラビア/インド/オーストラリアプレートと南西側のアフリカ(ソマリア)プレートの境界
・東太平洋海嶺:南太平洋東部(メキシコ西海岸~南米大陸西沖)、東側のココス/ナスカプレートと西側の太平洋プレートの境界
ギャオ
海嶺の大部分は海の底に沈んでいますが、山の頂上が所々海水面より高くなり、島となっている場所があります。
大西洋中央海嶺では、アイスランド島(北緯63-67°)やアゾレス諸島(北緯36-40°、ポルトガル)、英領セントヘレナ島(南緯16°)などがあります。
いずれも海嶺上に位置する島であり、広がる境界から噴出したマグマが堆積してできた火山島です。
広がる境界は2つのプレートが離れる力が働いているため、地球内部からマグマが噴出しやすくなり、プレート境界に沿って火山が見られます。
しかし、広がる境界の大部分が海面下にあるため、局所的に島になっている場所に(陸上の)火山が集中的に分布します。
そのため、大西洋中央海嶺上に位置するアイスランド島などの火山島は、局所的に火山が多数分布するためホットスポットとよばれています。
通常は海の下にある海嶺が例外的に陸上にある場合、プレート境界では両脇を崖に挟まれた細長いくぼみを見ることができます。
アイスランド島ではこのようなプレート境界部分の大地の裂け目をギャオとよび、地表で間近に見ることができます。
ギャオは幅数m程度のくぼみですが、大規模なものでは幅数km、長さ10kmにもおよびます。
ギャオは細長いくぼみになっているため、水が溜まって細長い池になっていることもあります。
参考
ナポレオンの流刑地・セントヘレナ島
大西洋中央海嶺上に位置するセントヘレナ島(南緯16°、英領セントヘレナ・アセンションおよびトリスタンダクーニャ)は、絶海の孤島という立地を活かしてナポレオン・ボナパルト(Napoléon Bonaparte, 1769-1821)の流刑地として使われました。
フランス皇帝となったナポレオンは1813年のロシア遠征での敗北後に退位して地中海のエルバ島(イタリア北西部)に追放されましたが、1815年にエルバ島を脱出してパリに戻って皇帝に復位しました。
その後、ワーテルローの戦いでフランス軍に勝利してナポレオンを捕らえたイギリスは、ナポレオンが再度戻って来れないような流刑地を探す必要がありました。
そこで、大西洋中央海嶺上に位置するため周囲に陸地がほとんど無いセントヘレナ島に目をつけました。
イギリスはセントヘレナ島にナポレオンを幽閉し、1,300km北西(ヨーロッパ側)に位置するアセンション島に海軍艦隊を駐屯させて警戒しました。
ナポレオンはその後セントヘレナ島を出ることなく1821年に没しています。
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参考火山地形(マール、溶岩堰止湖、火山島など)
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参考文献
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松倉公憲「地形学」 朝倉書店(2021)
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