大学入試共通テスト(2025年 旧地理B 本試験 第1問)の解説ページです。
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目次
問題と解答
共通テスト(2025年 旧地理B 本試験)の問題と解答のリンクです。
問題文のPDFは下記リンク先から入手し、図表や問題文を手元に置きながら解説(次項)を見て下さい。
リンク切れ対策のため複数サイトへリンクを貼っていますが、いずれも同一です。
入試速報トップ:河合塾|朝日新聞|
問題:河合塾|朝日新聞|
解答:河合塾|朝日新聞|
試験日(2025年)から年数が経過している場合はリンク切れの可能性が高いため、下記サイトを利用して下さい。
解説
第1問は世界各地の島の自然と人間生活に関する設問です。
問1 世界の海底の水深
世界地図上で円で示した領域A~Cの水深分布の組み合わせを答える問題です。
領域A~Cは以下の通りです。
A:ハワイ諸島周辺
B:カナダ北端部
C:インドネシア中部(バリ島およびロンボク海峡周辺)
水深分布は以下の通りです。
水深 | ア | イ | ウ |
500 m 未満 | 98.6 | 41.6 | 1.4 |
500~3000 m | 1.4 | 23.5 | 5.3 |
3000~6000 m | 0.0 | 32.8 | 93.3 |
6000 m 以上 | 0.0 | 2.1 | 0.0 |
「ア」は水深500m未満の浅い部分が大半であるのに対し、「ウ」は陸地に近いにも関わらず水深が非常に深いです。
「イ」は中間的な水深分布です。
まず水深が深い「ウ」はハワイ諸島(A)です。
ハワイ諸島は太平洋プレート中央部のホットスポットであり、非常に水深が深い海底からそびえたつ火山が海の上まで成長してできました。
このため、ハワイ諸島周辺の水深は非常に深く、「ウ」のように陸地から離れると急激に水深が深くなる海底地形となっています。
次に水深が浅い「ア」はカナダ北端部です。
Bの囲まれた領域周辺を見ると、非常に複雑な形をした島が多数見られます。
これは、沈水海岸の陸地がさらに沈降して海に沈んだ多島海であると考えられます。
このため、これらの海域は元々陸地だったため、水深はそこまで深くないと推測できます。
残った「イ」がインドネシア中部です。
この海域には、非常に水深が深いロンボク海峡が存在し、水深が浅いマラッカ海峡を通れない大型船が東アジア方面とインド・中東方面を行き来するために重要な国際航路となっています。
ロンボク海峡の水深が深いことを知識として知らなくても、「ウ」と「ア」から消去法で正答できるかと思います。
ハワイ周辺の海底地形は知識問題であり、カナダ北端部の水深が深いことを周囲の島の形や分布から類推できるか鍵です。
正解:5
必要知識:
・ハワイ諸島周辺の海底地形
・多島海の形成要因
・ロンボク海峡の水深が深いこと
問2 マダガスカルの降水量分布
マダガスカルの2つの等雨量線図(1月または7月)から季節を判別し、さらに会話文中の語句の穴埋めをする問題です。
2つの等雨量線図「カ」「キ」を見ると、「カ」では等雨量線が南北に引かれて東部が降水量が多く西部が少ないです。
一方、「キ」では等雨量線が東西に引かれ、北部では降水量が多く南部では少ないです。
会話文は次の通りです。
サクラ「カの降水量分布は、南北方向に伸びる山地と( F )の影響を強く受けていると考えられます」
ミドリ「キの降水量分布には、熱帯収束帯の影響があらわれています。熱帯域から( G )周りの経路で移動していくる熱帯低気圧の影響もありますね」
最初にFについて考えます。
マダガスカルは南半球のインド洋西岸の低緯度に位置するため、南東貿易風の影響で東から西に風が吹きます。
「カ」で東海岸の降水量が多いのはそのためです。
西海岸に向かうに従って降水量が少なくなるのは、山脈にぶつかって雨雲が西海岸まで届かないためと考えられます。
このため、Fは貿易風です。
偏西風は西から東に吹く風なので、もし偏西風が吹いていたとしたら東海岸と西海岸の降水量の大小関係は逆になっているはずです。
偏西風だと矛盾することがわかれば、貿易風の知識がなくても正解がわかります。
次にGについて考えます。
熱帯低気圧の進路が時計回りだったり反時計回りだったりするのは、地球の自転速度が緯度により異なることが原因です。
地球は西から東に自転して1日で1周しますが、1周の距離は赤道では4万kmであるのに対し、北極や南極ではゼロに近くなります。
このため、低緯度側ほど自転速度が速く、高緯度側ほど自転速度が遅いです。
熱帯低気圧が(南半球なので)真北から真南に進もうとすると、その緯度の自転速度より速く自転する(=西から東へ動く)ことになるため、東に流されていき時計回りに回転しているように見えます。
よって、Gは時計(回り)です。
最後に「カ」と「キ」の季節です。
会話文より、「キ」の季節に熱帯低気圧が襲来するため、「キ」の季節は夏です。
南半球の夏は1月なので「キ」は1月であり、残った「カ」が7月です。
正解:8
必要知識:
・偏西風と貿易風の意味
・熱帯低気圧が進む方向
問3 アイスランドの地形
アイスランド島上の4地点の地図上の位置と写真を見て、景観について不適切な文章を選ぶ問題です。
地点J~M
J:北西部の沿岸部;写真には海岸に沿うように段差が見られ、家や道路は一段高くなった平らな場所に立地
K:北東部の内陸部;周囲360°を小高い丘(外輪山)に囲まれた円形の窪地(カルデラ)であり、中央には小高い丘(中央火口丘)が立地
L:北東部の沿岸部:海とつながった細長い湾
M:両側に切り立った崖があり、間が細長い窪地
①低平な土地が隆起した
→正しい
ヨーロッパ北部は地球が寒冷だった時代に広範囲に氷河が発達し、氷河の侵食作用で標高が低く平坦な土地が形成されました。
写真には海に平行した段丘が見られ、段丘の上の高台に建つ家は平坦な場所に建っているように見えるので矛盾しません。
②溶食によって、地表が陥没した
→誤り
写真は典型的なカルデラです。
石灰岩が水に溶けて穴が開く溶食による陥没地形としては、ドリーネやウバーレがあります。
ドリーネは単独の陥没穴なので細長いですし、ウバーレは複数のドリーネがつながってできるものなので、写真のようなきれいな円形にはならず、不規則な形をします。
さらに、中央に小高い丘(中央火口丘)があることがウバーレではなく、カルデラであることを明示しています。
③氷河の侵食によってできた細長い谷が沈水した
→正しい
写真・説明文ともに典型的なフィヨルド地形です。
④プレート境界のうち広がる境界で近くが引き裂かれた
→正しい
写真の場所は大部分が海面下にある広がる境界の中でも例外的に地表でプレート境界が見られるギャオです。
ギャオでは凹地の下側から地表に出てきた新しい地殻が、2つのプレートに引き裂かれ、反対方向に移動していきます。
正解:2
必要な知識:
・カルデラの形
問4 植生分布と雨温図
カナリア諸島の植生分布図と地点Pの雨温図が与えられ、会話文の正誤を判定する問題です。
a:高い
→正しい
地図には島ごとの標高が書かれており、常緑広葉樹林が分布している島は標高1,500m以上であるのに対し、そうでない島は1,500m未満です。
このため、常緑広葉樹林が分布している島の方が標高が「高い」のは正しいです。
b:北寄りの風が吹いている
→正しい
常緑広葉樹林は、どの島でも北寄りに分布しています。
標高が低い島の大部分が「サボテンのような多肉植物の分布地」なので、この地域は乾燥帯に位置しています(雨温図からも明らか)。
にも関わらず標高が高い島に常緑広葉樹林があるということは、標高が高いため気温が低下して高山気候を呈して森林が発達する気候になっていることを意味します。
しかし、基本的に乾燥帯である場所で森林が発達するためには、どこかから水分の供給が必要です。
この答えは会話文の最後に書いてあります。
「湿潤な空気が地形に沿って上昇すると、ある高さで霧が発生します。その部分に常緑広葉樹林が分布しています。」
常に北寄りの風が吹いていると、霧が発生するのは北側斜面ばかりになるため、常緑広葉樹林が島の北側に発達しているということで筋が通っています。
c:寒流が流れています
→正しい
カナリア諸島にはカナリア寒流が流れており、冷たい海が地表付近の大気を冷やすため上昇気流が発生せず、雨が降らなくなります。
カナリア諸島の場所や寒流の有無がわからなくても、寒流の存在自体が砂漠を形成する要因になる(例:西岸砂漠)ことが分かれば正誤判定ができます。
正解:1
必要な知識:
・乾燥帯の気候・植生
・寒流と砂漠の形成
問5 地図読み取り
1941年と2004年の土地利用図と2004年の地形断面図を見て、正しい文章を選ぶ問題です。
①滑走路は、島の中でも標高が高い場所に建設された。
→誤り
地形断面図を見ると、滑走路がある位置よりもRやSの近く(=海岸ぎりぎりの場所)の方が標高が高いです。
滑走路はむしろ、標高が中くらい~むしろ低い場所に盛土して作られています。
②湿地が縮小したのは、地球温暖化の進行にともなう気温上昇によって湿地の乾燥化が進んだためである。
→誤り
1941年で湿地が広がっていた場所は、2004年には滑走路が伸びています。
断面図では、この場所が「埋立部分」とあるので、滑走路建設のために湿地を埋め立てたことで湿地が縮小したことがわかります。
③島の西岸部の標高が東岸部に比べて低いのは、外洋に面しており海岸侵食が進んだためである。
→誤り
まず、1941年の地図の右上の方位磁石が真上を指していることから、この地図では上が北です。
よって左側(R側)が西岸部、右側(S側)が東岸部です。
環礁では礁湖(ラグーン)とよばれる内海を取り囲むように細長い陸地(島)が広がります。
このため島の形から、西岸部は礁湖に面しており、東岸部が外洋に面していることがわかります。
さらに凡例を見ると、西岸部は「波浪によりできた砂の高まり」であるのに対し、東岸部は「台風や暴浪によりできた砂や礫の高まり」とあります。
台風の時に、より荒れて大きなエネルギーで砂だけではなく重い礫までもを積み上げるのは内海ではなく外洋の方です。
このように、土地利用からも東岸部が外洋側で西岸部が礁湖側であることがわかります。
よって説明文は誤りです。
④近年、大潮時に浸水被害が発生しているのは、住宅などの建物が標高の低い場所に拡大したことが一因である。
→正しい
島の中央部の凡例で「マングローブや畑など」とある場所は地形断面図を見ても標高が低いです。
地形断面図はあくまでR-S間のものですが、土地利用のされ方が同じ場所が細長く続いているため、他の地点でも同様の地形であると推測できます。
1941年と2004年の建物の分布を比較すると、1941年はR付近の「波浪によりできた砂の高まり」にしか建物は建っていませんが、2004年には建物が大幅に増えて、「マングローブや畑など」の場所にも進出しています。
標高が低い場所は大潮時に浸水すると考えられます。
正解:4
必要な知識:なし
問6 自然環境
自然環境に関する会話文を読み、誤りがある文章を選ぶ問題です。
①大気中に大量の火山灰がひろがり、世界規模で寒冷化が起こる
→正しい
大量の火山灰が大気中に放出されると、まるで火山灰が日傘のように大気を覆い、地表に到達する太陽光が減少して世界規模で寒冷化が起きることがあります(日傘効果)。
②巨大地震に伴う津波は、同じ大洋にある遠く離れた島にも被害を与える
→正しい
1960年のチリ地震では、南米のチリ沖で発生した津波が22時間かけて太平洋を横断し、日本の三陸海岸を中心に津波被害が発生したという実例があります(チリ地震津波)。
③地形や地質の影響により、雨水が短時間で海に流出し、しばしば水不足になります。
→正しい
離島や四国などで水不足が発生しやすい原因です。
離島や四国では台風などで大雨が降っても、内陸部から海までの距離が短く、短時間で海まで流れてしまうため、陸地に水が貯まりません。
一方、東日本では冬の間に高山の山頂付近に蓄えられた積雪が少しずつ溶けていく上に、内陸部から海までの距離があるため真水を陸地に留める湖の数も多くダムの建設もしやすいため、水不足が発生しづらいです。
正解:4
必要な知識:
・火山噴火による日傘効果
・チリ地震津波の事例
・水不足が発生しやすい地形的要因