過去問解説

【共通テスト解説】2025年 旧地理B 本試験 第3問

大学入試共通テスト(2025年 旧地理B 本試験 第3問)の解説ページです。

2025年 旧地理B 本試験 |第1問第2問|第3問|第4問第5問

問題と解答

共通テスト(2025年 旧地理B 本試験)の問題と解答のリンクです。
問題文のPDFは下記リンク先から入手し、図表や問題文を手元に置きながら解説(次項)を見て下さい。
リンク切れ対策のため複数サイトへリンクを貼っていますが、いずれも同一です。

入試速報トップ:河合塾朝日新聞
問題:河合塾朝日新聞
解答:河合塾朝日新聞

試験日(2025年)から年数が経過している場合はリンク切れの可能性が高いため、下記サイトを利用して下さい。

過去問サイト:日本の学校中日進学ナビ

解説

第3問は人口と都市・村落に関する設問です。

問1 出生率・乳幼児死亡率・平均寿命

タンザニアの人口に関する各種指標の2000年から2020年までの推移のグラフが与えられ、指標の内容を当てる問題です。
指標A~Cは、出生率、乳幼児死亡率、平均寿命のいずれかに対応します。
文章中に「発展途上国の人口増加を理解するためには」とあるので、タンザニアは人口が増加している発展途上国であると推察できます。

A~Cの推移を見ると、Aは増加傾向、Bは横ばい~若干の減少、Cは減少傾向です。
まず一般論として、経済発展して人口が増加している発展途上国では、年を経るごとに生活環境や衛生環境は改善していきます。
このため、乳幼児死亡率は減少し、平均寿命は増加するはずです。
そして、乳幼児死亡率が減少するとたくさん子どもを産まなくても同じ人数が生き残るため、出生率は低下します。
以上より、まず増加傾向にあるAは平均寿命です。

次に、減少傾向にあるBとC識別です。
乳幼児死亡率と出生率を比較すると、乳幼児死亡率は医療の発達や衛生状態の改善により急激に減らすことができますが、出生率の変化には社会環境や人間の意識の変化(結婚したいか、子どもを何人産むか等)を伴うため、変化には時間がかかります。
また、出生率の低下は乳幼児死亡率に起因する現象であり、先に乳幼児死亡率が減少して後から出生率が減少するという関係にあります。
このため、より急激に減少しているCが乳幼児死亡率であり、減少幅が小さく、最初は横ばいに推移した後にCに遅れて減少するBが出生率です。

正解:4

必要知識:
・発展途上国の人口動態の経時変化

問2 都市圏における人口動態変化

東京都市圏内外に位置する3つの自治体について、1990年から2020年にかけての14歳以下と65歳以上の人口割合の推移が与えられ、自治体と年代の組み合わせを当てる問題です。
人口推移グラフE, Fは14歳以下または65歳以上の人口割合の推移です。
グラフの凡例「ア」「イ」は東京都心に位置する東京都港区または東京都市圏外の茨城県大子町です。
ほかに、東京都市圏内の郊外に位置する千葉県鎌ケ谷市の人口推移も与えられています。

まず、細かい自治体名は解答に不要なので、東京都港区は「都心」、茨城県大子町は「地方」、千葉県鎌ケ谷市は「郊外」と呼ぶことにします。
つまり、「ア」「イ」は都心と地方を当てる問題になります。

2つのグラフを見ると、Eでは「イ」および地方が減少傾向、「ア」のみ2005年まで減少傾向ですがそれ以降は増加傾向です。
Fでは「イ」および地方が増加傾向、「ア」では2000年まで増加傾向ですがそれ以降はなだらかな減少傾向です。

日本では過去数十年間で急速に高齢化が進行しているため、地方を中心に多くの場所で高齢者の人口割合は増加しているはずです。
このため、「イ」および郊外で増加傾向にあるFが65歳以上であり、もう一方のEが14歳以下の人口割合です。
Eの「イ」と郊外で減少傾向にあるのは、少子化の進行を表しています。

次に「ア」「イ」の判別です。
「イ」は郊外と同様に少子高齢化が進んでいますが、「ア」は少し異なります。
「ア」は2005年頃を境に少子高齢化の進行が止まり、逆に子どもの割合が上がり高齢者の割合が下がっています。
このため、少子高齢化が進行する「イ」が地方であり、途中で少子高齢化が止まるエリアが都心だと考えられます。
ちなみに、都心で2005年頃を境に少子高齢化が止まったのは、若年層の都心回帰が原因です。
都心部の港区や江東区には多数のタワーマンションが建設され、若年層が大量に入居したことが象徴的です。

正解:1

必要知識:
・日本の都心と地方の人口動態の推移

問3 経済発展と首都一極集中

2000年と2020年の国別の巨大企業数と首都に本社がある企業数(2020年)の表を元に、国を選ぶ問題です。
①~④はイギリス、オランダ、韓国、中国であり、韓国に当たる選択肢を選びます。

まず特徴的なのは④です。
④は20年間で巨大企業数が9から124まで急増しています。
これは典型的な新興国の特徴であり、なおかつ2020年には世界上位500社のうち124を占めるため、非常に影響力がある国であることがわかります。
よって選択肢の中で人口が多い新興国である中国が④です。

ここで、①~③のどれが韓国であるかを考えます。
韓国は新興国であるため、経済発展の過程で首都へ人口が一極集中するため、首都への巨大企業の集中度が高い①か②であるはずです。
次に、新興国である韓国が先進国よりも巨大企業数が多いか少ないかを考えます。
①と②では2000年には圧倒的に①の巨大企業数が多く、2020年には差は縮小しているものの①の方が多いです。
これは、先進国である①が2020年には新興国である②に大きな差をつけていたものの、2020年には追いつかれて差が縮小したためと考えられます。
以上より、巨大企業数が少ない②が韓国です。

ちなみに①はイギリスです。
単にイギリスとオランダのどちらが経済規模が大きいかで捉えてイギリスの方が大きいから、でも良いです。
もう少し筋道立てて考えると、①は2000年の時点では①~④の中で巨大企業数が最大であるため成熟した先進国かつそれなりに影響力がある国であることがわかります。
また、2020年の巨大企業21社中15社が首都に位置することから、首都に産業が一極集中している国であることがわかります。
選択肢のうち先進国であるイギリスとオランダのどちらで巨大企業数が多いかを考えると①はイギリスであると考えられます。
イギリスはロンドンに一極集中しているのに対し、オランダは王宮や国際機関がデン・ハーグに立地するなど首都(アムステルダム)以外に分散しています。

正解:2

必要知識:
・新興国は首都に人口・産業が一極集中すること

問4 都市景観

ナイロビ、パリ、メルボルンの3都市について、都市の遠景を撮影した写真が与えられ、撮影方向を答える問題です。
撮影方向は、「都心から都心周辺部」方向また「都心周辺部から都心」方向の2択です。
「都心周辺部から都心」方向の写真を全て選びます。

3都市の写真を見ると、いずれも手前側に低層建築物、奥側に高層ビルが映ります。
一見すべての都市で、「都心周辺部から都心」方向であるように見えますが、一旦立ち止まって下さい。
それはいくら何でも問題として単純すぎです。
地理では知識ゼロで解ける問題もありますが、それは色々と考えた上で解けるわけで、ぱっと見で知識ゼロで正答できるほど甘くありません。

問題文をよく読むと、注釈に「都心周辺部には、副都心や新都心とよばれる地区を含む。」とあります。
つまり、実は写真に映る高層ビル群は副都心や新都心のものかもしれないです。
実際、東京の「副都心」である新宿にも高層ビル群が密集しています。

ここで、3都市の都市の成り立ちを考えます。
aのナイロビ:ケニアの首都であり、元々は植民地の中心都市
bのパリ:フランスの首都であり、非常に歴史がある都市
cのメルボルン:オーストラリアの都市であり、イギリスからの移民により建設された都市

ナイロビとメルボルンは元植民地の都市であるのに対し、パリだけは非常に歴史のある都市であるという違いがあります。
ここで、パリのように歴史のある都市では、歴史的建造物が立ち並ぶ旧市街と近代以降に新しく開発された新都心に分かれている点に着目します。
昔からの旧市街は歴史的建造物が立ち並び建築物も密集しているため、再開発が難しいです。
このため、旧市街の外側に新都心を建設し、新都心にオフィスビルなどの都市機能を集約するといった形態がよく見られます。
旧市街はその景観自体が観光名所となるため、高層ビルなどの建築は規制される場合も多いです。

以上より、歴史のある旧市街をもつパリでは都心(旧市街)から都心周辺部(新都心)を撮影した写真であり、植民地化の過程で建設された歴史の比較的浅い都市であるナイロビとメルボルンは順当に都心周辺部から都心を撮影した写真であると判断できます。

正解:3

必要知識:
・ナイロビ、パリ、メルボルンの都市形成の背景
・旧市街と新都心の景観

問5 都市への通勤率

カナダのトロント市周辺地区について、トロント市への通勤率と2006年から2016年にかけての通勤者増加率を示した図が与えられ、適切な文章を選ぶ問題です。

①カでは、2006年から2016年の間に、トロント市に立地する企業の社員向け住宅が多く建設されたと考えられる。
→誤り
社宅が建設されると通勤者は増えるはずですが、地区「カ」は通勤者が減少しています。

②キでは、トロント市への通勤率が高く、通勤によるトロント市との結びつきは、2006年から2016年の間に強まったと考えられる。
→誤り
地区「キ」は通勤者が減少しており、通勤によるトロント市との結びつきは弱まっています。

③クでは、2006年から2016年の間に住宅地の開発が進み、この地域はトロント市のベットタウンとして成長したと考えられる。
→正しい
地区「ク」は通勤率が20%以上増加しています。
通勤者の増加要因にあたる「住宅地の開発」や「ベットタウンとして成長」が挙げられており、適切な文章です。

④トロント市への通勤率の高低には、トロント市からの距離の長短は影響を与えていないと考えられる
→誤り
左側の通勤率の図を見ると、トロント市へ隣接する地区のほうが通勤率が高く、離れた地区は通勤率が低いです。
距離が近いほうが通勤率が高いです。

図を読み取ることができれば、知識ゼロで正答できます。

正解:3

必要知識:なし

問6 地形図読み取り

地形図上に示された集落と説明文の組み合わせを答える問題です。

サ:川に沿うように伸びる細長い集落、周囲には田んぼ
シ:一本の道路に沿って両側に広がる集落、周囲の畑は短冊状
ス:山の麓に等高線に沿う方向で広がる集落

J:水害を避けるため、周囲よりわずかに高い場所に集落が立地している。
K:台地上の集落で、道路沿いの住居の背後に耕地が短冊状に配列している。
L:湧き水を得やすい場所に集落が立地している。

まず、Kは「シ」にそのまま当てはまります。
台地上であるかは判断しづらいですが、水田ではなく畑が広がることや河川が見当たらないことから矛盾はありません。

次にJは自然堤防の説明です。
「サ」は川沿いに集落が立地し、川から見て集落の後ろ側には水田が広がるため、集落がある場所は自然堤防上である判断できます。
よってJは「サ」の説明文です。

最後にLは扇状地における扇端の説明です。
扇央で地下にもぐった河川が扇端で湧水となって再び地表に現れるため水を入手しやすく、集落が形成されます。
「ス」の立地が当てはまります。

正解:1

必要知識:
・自然堤防と扇状地の地形と土地利用

他の設問

2025年 旧地理B 本試験 |第1問第2問|第3問|第4問第5問

-過去問解説