大学入試共通テスト(2025年 旧地理B 本試験 第4問)の解説ページです。
2025年 旧地理B 本試験 |第1問|第2問|第3問|第4問|第5問|
目次
問題と解答
共通テスト(2025年 旧地理B 本試験)の問題と解答のリンクです。
問題文のPDFは下記リンク先から入手し、図表や問題文を手元に置きながら解説(次項)を見て下さい。
リンク切れ対策のため複数サイトへリンクを貼っていますが、いずれも同一です。
入試速報トップ:河合塾|朝日新聞|
問題:河合塾|朝日新聞|
解答:河合塾|朝日新聞|
試験日(2025年)から年数が経過している場合はリンク切れの可能性が高いため、下記サイトを利用して下さい。
解説
第4問は寒冷地域と高山地域に関する設問です。
問1 冬日と真冬日
世界地図上の4地点A~Dについて、月別の冬日・真冬日の日数を示したグラフが与えられ、地点Dのグラフを選ぶ問題です。
地点A~Dの場所は次の通りです。
A:アイスランド島西部
B:ノルウェーの北の離島(スバールバル諸島)
C:中国西端部
D:ロシアのシベリア内陸部
冬日と真冬日の月別日数グラフからは、以下のようなことがわかります。
①:すべての月で冬日があり、10-翌5月までは真冬日もある
②:真冬日は10-翌4月、冬日は8-10月と3-5月のみで11-2月には真冬日のみ
③:冬日は9-翌6月、真冬日は9-翌5月、②とは違い真冬の1月にも冬日がある
④:冬日は9-翌5月、真冬日は10-翌4月だが、①~③よりも真冬日の日数が少ない
まず④は、①~④の中で最も温暖な気候であり、真冬の1月でも真冬日が少ないです。
A~Dの位置をふまえると、暖流であるメキシコ湾流の影響で緯度の割に温暖なアイスランドが④です。
次に唯一7月でも冬日がある①は、最も緯度が高いBです。
緯度的に北極圏に位置する場所であり、他の3地点より夏の気温が低いと考えられます。
残った②と③のグラフを比較すると、②は1月に真冬日のみで冬日が存在しないのに対し、③は1月でも冬日があります。
一方で、③は5月や9月にも真冬日があるのに対し、④にはありません。
以上より、②は夏と冬の気温差が極端に大きい場所であると考えられます。
1月に真冬日しか存在しないような極端な気候の場所としては、ロシアのシベリア内陸部が当てはまります。
よって、②がDであり、残った③がCです。
正解:2
必要知識:
・ヨーロッパの大西洋岸は暖流の影響で緯度の割に温暖な気候であること
・高緯度地域では夏でも気温が低いこと
・シベリア内陸部が夏と冬の気温差が極端に大きく、冬は非常に寒くなること
問2 土地被覆の違い
4エリアの土地被覆の面積割合の表を見て、地点「イ」に当てはまるものを選ぶ問題です。
4エリアの場所は以下の通りです。
ア:グリーンランド西海岸南部
イ:フィンランド内陸部
ウ:ロシアのシベリア内陸部
エ:ロシアのシベリア東端部内陸
表は次のような内容です。
①:森林がほぼ100%
②:森林が9割、水域が1割弱
③:森林2割、低地・草地が8割弱
④:低地・草地が3割強、氷河・氷床が6割強
地点「イ」はフィンランド内陸部に位置し、寒冷な時代に氷河の侵食によって削られた凹地に水がたまって形成された湖が多数存在します。
このため、水域が最も多い②がフィンランドです。
森林が9割を占める点も、フィンランドは亜寒帯に位置し森林が多い点と合致します。
正解:2
必要知識:
・フィンランドに湖が多いこと(氷河の侵食作用)
問3 国別都市の標高分布
アンデス山脈周辺の3か国の人口上位10都市の人口と標高の分布図を見て、国を当てる問題です。
凡例カ~クは、エクアドル、ペルー、ボリビアのいずれかです。
まずカ~クの分布の中で特徴的なのは、「カ」と「キ」は標高ゼロメートルの都市が存在するのに対し、「ク」は存在しません。
海に面している国であれば標高ゼロメートルの都市があるはずですので、「ク」は選択肢中唯一の内陸国であるボリビアです。
次に「カ」と「キ」の中で特徴的なのは、人口最大都市の標高です。
「カ」は人口最大都市がゼロメートルに位置し、人口も唯一1,000万人を超えるのに対し、「キ」の人口最大都市は標高3,000mで人口も200万人程度です。
ペルーの首都リマは太平洋沿いに位置するのに対し、エクアドルの首都キトはアンデス山脈山中に位置する高山気候の都市です。
このため、最大人口都市が標高ゼロメートルに位置する「カ」がペルーであり、標高3,000mに位置する「キ」がエクアドルであると推測できます。
正解:3
必要知識:
・ペルーとエクアドルが海に面しているのに対してボリビアが内陸国であること
・ペルーとエクアドルの首都の位置
問4 気候と作物
ネパールの主要農産物の分布図を見て、凡例と農作物の種類の対応を答える問題です。
凡例サ~スは、米、ジャガイモ、トウモロコシのいずれかです。
まず、サ~スの分布を見ると、各農産物の生産地域は東西に平行に分布しています。
「サ」は南部、「ス」は中部、「シ」は北部です。
ネパールの地理的条件を考えると、北側国境平行して東西にヒマラヤ山脈が走っているため、南から北側に向かって標高が高いことがわかります。
標高が高いほど気温は低下するため、サ→ス→シの順で寒冷な地域で栽培される作物に遷移するはずです。
よって、3種類の作物の中で最も温暖な地域で栽培される米が「サ」です。
米は熱帯原産の作物であり、東南アジアなどの熱帯地域でも広く栽培されています。
次にトウモロコシとジャガイモの栽培環境を比較します。
トウモロコシは比較的温暖な温帯で栽培されるのに対し、ジャガイモは亜寒帯(冷帯)の涼しい環境で栽培されます。
実際、ジャガイモはアンデス山脈原産であり、3,000m以上の標高の高く冷涼な環境に適応した作物です。
このため、より標高が低い中部で栽培される「ス」がトウモロコシ、標高が最も高い北部で栽培される「シ」がジャガイモです。
正解:1
必要知識:
・米、トウモロコシ、ジャガイモが栽培される気候帯
問5 カナダの地下資源分布
カナダの輸出額の州別シェアを品目別に表した4つの図を見て、品目を当てる問題です。
4つの図は鉱物資源、水産物、農畜産物、林産物のいずれかであり、鉱産資源を選びます。
①:東部と西端部に偏って分布(特に西端部が多い)
②:東部と西端部に偏って分布(東端部の小さな州が多い)
③:西部内陸の1つの州の割合が多い他は各州に分散(北部にも存在)
④:南部の州に均等に分散し、北部の州は皆無
まず、輸出するためには州内でその品目を生産する必要があるため、各品目の生産に必要な要素を考えます。
農畜産物はある温暖な土地であり、生産量が多い州は必然的に面積が広いはずです。
林産物は樹木が生育できる気候(乾燥帯と寒帯以外)である必要があり、農産物と同様に面積が広い州ほど生産量が多いはずです。
一方で水産物の生産量が多い場所は、海に面している場所であり、陸地の広さよりも港の数や漁場の位置の方が重要です。
最後に鉱産資源は、特定の場所に集中して埋蔵しているため、特定の地域に偏って分布しているはずです。
以上をふまえて①~④を比較すると、西部内陸部の1つの州に集中している③が鉱産資源の特性に合致しています。
①や②も特定の州に集中していますが、②は東端部海沿いの小さな州に集中しているため水産物であると考えられます。
①は海に面している面積が大きな州にのみ分布しているため、海に近いと生産量が多い→生産量が隔海度(海からの距離)の影響を受けている→生産量が気候の影響を受ける品目であるはずです。
このため、①は農畜産物または林産物です。
実際には①は林産物ですが、今回は鉱物資源の選択肢を選ぶ問題なので①の絞り込みは行いません。
以上より、③のように内陸部の1つの州に集中分布している③の品目として鉱産資源以上に妥当な品目は無いので、③が鉱産資源です。
正解:3
必要知識:
・水産物の生産量が多い場所は、前提条件として海に面している必要があること
・農畜産物や林産物の生産量は気候の影響を受ける(水が手に入らないと生産できない)こと
・隔海度(海からの距離)が大きくなるほど降水量が減少すること
問6 人口分布図
スウェーデン、ノルウェー、フィンランドの50kmメッシュの人口分布図を見て、国内移動の交通手段と乗客数の組み合わせを当てる問題です。
表2中のXとYが航空または鉄道であり、国はスウェーデンのみ明示され、「マ」と「ミ」がノルウェーまたはフィンランドです。
まずメッシュ図を見ると、スウェーデンは南部に人口が集中して人口1万人以上のメッシュが面的に連続して分布しています。
フィンランド南部もメッシュが面的に連続して分布していますが、スウェーデンよりは人口が少なそう(人口密度が低そう)です。
一方でノルウェーは人口1万人以上の場所が海沿いに点在しています。
最初に航空と鉄道の判別を行います。
鉄道は人口が集中する場所で発達して近距離移動でも利用するのに対し、航空機は長距離移動の際にしか使わないという違いがあります。
表2を見ると、特にスウェーデンやフィンランドのように南部に人口が面的に集中するような国では、「国内移動」は近距離移動が中心になるため、航空よりも鉄道の方が多くなるはずです。
表2を見ると、いずれの国でもXの乗客数がYよりも多いため、乗客数が多いXが鉄道であり、少ないYが航空機です。
次にノルウェーとフィンランドの判別です。
航空よりも鉄道の利用が多いのは各国共通ですが、何倍違うかは国によって大きく変わります。
スウェーデンではXの乗客数がYの50倍ほどあるのに対し、「マ」では40倍程度、「ミ」に至っては4-5倍程度しか差がありません。
このことから、スウェーデンと人口分布が近いフィンランドが「マ」であり、遠隔地に人口が点在するため国内移動でも長距離になることが多いと考えられるノルウェーが「ミ」です。
正解:4
必要知識:
・航空と鉄道の交通手段としての特性の違い