過去問解説

【共通テスト解説】2024年 地理B 本試験 第2問

大学入試共通テスト(2024年 地理B 本試験 第2問)の解説ページです。

地理B 2024年 本試験 |第1問|第2問|第3問第4問第5問

問題と解答

共通テスト(2024年 地理B 本試験)の問題と解答のリンクです。
問題文のPDFは下記リンク先から入手し、図表や問題文を手元に置きながら解説(次項)を見て下さい。
リンク切れ対策のため複数サイトへリンクを貼っていますが、いずれも同一です。

入試速報トップ:福井新聞東進朝日新聞
問題:福井新聞東進朝日新聞
解答:福井新聞東進朝日新聞

試験日(2024年)から年数が経過している場合はリンク切れの可能性が高いため、下記サイトを利用して下さい。

過去問サイト:日本の学校中日進学ナビ

解説

第2問は鉄鋼業を中心とした資源と産業に関する問題です。

問1鉄鉱石の貿易

鉄鉱石の産出量、輸出量、輸入量の国別割合を当てる問題です。

はじめにこれら3つの統計量の特徴について考えます。
鉄鉱石を輸出する国は、鉄鉱石を自国内で産出し、そのうち一部を輸出します。
そのため、産出量と輸出量では、同じような国が登場するはずです。

一方、輸入量が多い国は、輸出量は少ないはずです。
重くて運ぶのが大変な鉄鉱石をわざわざ輸入するのは国内で不足しているからであり、反対にわざわざ輸出するのは国内で産出してい鉄鉱石が余っているからです。

以上をふまえてA-Cの地図を見ます。
AとCはオーストラリアとブラジルで大きな丸がありますが、Bにはありません。
そのため、AとCが産出量と輸出量であり、Bが輸入量であるということがわかります。

次にAとCを判別する方法について考えます。
産出量と輸出量の関係について論理的に考えます。
「鉄鉱石を産出しているが輸出していない」は論理的にありえます(国内消費に回してる)が、逆に「鉄鉱石を産出していないが輸出している」は論理的にありえません(輸出している鉄鉱石はどこから来ているのか)。
このような観点でAとCを比較すると、Cは中国に丸があるのにAには丸が無いことに気づきます。
つまり、Cが産出量でAが輸出量であれば、「中国は鉄鉱石を産出しているが輸出していない」という解釈が成り立ちます(逆だと論理的におかしい)。
この解釈だと、中国の輸入量(B)が多いのも筋が通ります(国内消費が多いから産出量の全てを国内消費に回しているから輸出しておらず、さらに不足するから大量に輸入している)。
以上より、Cが産出量でAが輸出量です。

正解:5

必要知識:なし

問2製鉄所の立地の変化

1910年から2022年までの日本国内の製鉄所の分布図を見ながら、会話文の誤りを見つける問題です。

①「原料や燃料のほうが重く、産出地の近くに立地することで輸送費を安くすることができる」
内容としては論理的におかしな所はないです。
北海道や福岡に炭田が多いことを知っていれば、グラフとの対応関係が正しいこともわかります。
グラフとの対応関係が正しいかは知識がないとわかりませんが、他に明確な誤りを含む文章があるため問題はありません。
→正しい

②「国内に埋蔵される原料や燃料が枯渇して」
明確に誤りです。
第2次世界大戦後に燃料が石炭から石油にシフトしたのは、原料の枯渇が原因ではありません。
国産の石炭よりも海外産の石油の方が安くてエネルギーを取り出す効率が良いため、石油にシフトしました(エネルギー革命)。
また、石炭需要についても安い海外産の石炭を船で輸入した方が安価になり、価格競争に負けて国内では生産しないようになりました。
→誤り

③「臨海部に造成された埋立地に建設された」
海外から重くてかさばる鉄鉱石を輸入するのは必然的に船になるため、臨海部に製鉄所があるのは妥当です。
1974年のグラフでも沿岸部にたくさんの製鉄所があります。
製鉄所の場所が埋立地かどうかを知らなくても、少なくても論理的におかしい話ではありません。
→正しい

④「経営の合理化や企業の再編が影響している」
事実です。グラフでも1974年から2022年にかけて製鉄所の数が減っています。
たとえ知らなかったとしても、製鉄所の減少理由としておかしな内容ではないです。
→正しい

正解:2

必要知識:
・エネルギー革命の内容

問3石炭輸入量の推移

日本の石炭輸入元である3カ国(アメリカ合衆国、インドネシア、オーストラリア)について、日本の石炭輸入量の推移(1970-2020年)のグラフと国ごとの説明文を読み、対応するグラフと説明文の組み合わせを当てる問題です。

グラフと対比しながら説明文を読んでいきます。

ア:「採掘技術の進歩などによって石炭産出量が急増したことで、輸出量が増加した。この国の国内でも火力発電を中心に消費量が増加している。」
輸出量が増加したという記述があることから、EかFであることがわかります。
Gは減少しているため記述と合致しません。

イ:「世界有数の資源大国で、石炭は大規模な露天掘りによって大量に採掘されている。国内市場は小さく、採掘された石炭の多くが輸出されている。」
輸出量に関する記述はありませんが、「資源大国」であり、「国内市場が小さい」ため「採掘された石炭の多くを輸出」しているという記述があります。
Gのように近年輸出量が低迷していたり、Fのように90年以前にほとんど輸出していないような国が「資源大国」ということは考えづらいです。
また、国内市場が小さいならば、FやGに見られる輸出量がほぼゼロの時期は採掘した石炭の行き場がなくなります。
これらの状況証拠から考えると、Eがもっともらしいと考えられます。

イがEであるとわかったので、アは自動的にFになります。
残ったGがウです。

ウ:「石炭の確認埋蔵量は世界で最も多い。国内市場の大きさを背景に、この国の国内に置ける消費量も世界有数である。」

正解:3

必要な知識:なし

問4製造業関連の統計量の推移

製造業関連のグラフにおいて、4カ国(イギリス、中国、ドイツ、ベトナム)の1990年と2018年のプロットの位置の変化を見て、ドイツを当てる問題です。
縦軸に「GDPに占める製造業の割合」、横軸に「人口1人あたりの製造業付加価値額」をとったグラフです。

横軸はどれだけ高価なものを作っているかという意味です。
そのため、先進国であるイギリスとドイツが高く、発展途上国である中国とベトナムが低いはずです。
特に新興国が経済発展する前の1990年の時点では、先進国と発展途上国の分布がはっきりと分かれて見えるはずです。

実際、1990年では①と②は低いグループ、③と④が高いグループに分かれています。
そのため、ドイツとイギリスが③と④です。

次にイギリスとドイツの判別です。
グラフを見ると③よりも④の方が縦軸の「GDPに占める製造業の割合」が高いです。
つまり、ドイツはイギリスよりも第二次産業の割合が高いか低いかを考えれば答えがわかります。

ここで、ドイツは工業国であり先進国の中では第二次産業(製造業)従事者の割合が比較的高い国であることをに注意して下さい。
一方でイギリスは金融業をはじめとする第三次産業(サービス業)従事者の割合が特に高い国です。
そのため、「GDPに占める製造業の割合」が高い③がドイツであると判断できます。

正解:3

必要な知識:
・ドイツは先進国の中では第二次産業(製造業)の占める割合が高い工業国であること

問5製造業の立地の変化

大都市圏の空中写真とそれに関連する会話文を読み、会話文中の誤りを見つける問題です。

①「豊富な労働力を求めて国内の農村部に工場が移転」
明確に誤りです。
昭和末期には日本の経済成長に伴って賃金や物価が上昇したため日本国内で工場を運営すると製造コストが高くなり価格競争力が低下しました。
そのため、安い労働力を求めて海外に移転しています。
→誤り

②「単独で立地するスーパーマーケットよりも広範囲から買い物客が訪れている。」
大型複合商業施設に関する記述です。
週に何回も買い物に行くようなスーパーは自宅から近い場所へ行く傾向にあります。
一方、「イオンモール」や「ららぽーと」のような大型複合商業施設は、週末にみんなでお出かけに行くような場所であり、普通のスーパーよりも広範囲からお客さんがやってきます。
→正しい

③「戸建ての住宅地へと変化している。」
空中写真の読み取りです。
2008年の写真の右下の白い建物が1988年と同一なので、これが工場と思われます。
その西側は細い道路と一軒家の屋根が並び、住宅地になっているのが写真からわかります。
→正しい

④「製品や技術の研究開発を行う拠点に転換する」
事実です。これを知識として知っているのは少しハードルがあるかもしれません。
製品を作るだけの工場は物価の安い海外に移しても問題ないかもしれません。
一方で高等教育(大学教育)を受けた研究者や技術者を集めて最先端の研究開発を行うには、大学などの研究機関や高等教育を受けた人々が多い先進国の方が人を集めやすいです。
そのため、多くの大学をかかえる先進国である日本に研究開発拠点が立地しているのは妥当なことです。
そこで、工場の海外移転で空いてしまった跡地に研究所を設置することがしばしば行われました。
→正しい

正解:1

必要な知識:
・国内工場の空洞化・海外移転の原因

問6目的と取り組みの組み合わせ

目的に対応する取り組みの組み合わせを答える問題です。
知識ゼロでも論理的に妥当な組み合わせを選べば正答できます。

P:「関連する施設に新たな価値を見出し、地域の魅力を高める。」
→シ:「照明がともされた稼働中の工場群を、夜景として鑑賞できる機会を提供する。」

「新しい価値を見出し」とあるので、通常ではない使われ方をする選択肢を選べばよいです。
工場の本来の役割は製品の製造であるため、工場の夜景鑑賞は「新しい価値」と言えます。

Q:「持続可能なエネルギー利用により、環境に配慮した社会を構築する。」
→ス:「生ごみや間伐材を利用して発電する施設を建設し、地域の電力自給率を向上させる。」

環境に配慮した取り組みとしてバイオマス発電は妥当な取り組み内容です。

R:「特定の大企業に依存する企業城下町から脱却する。」
→サ:「地元の中小企業が地域の大学や他企業と連携して、製造業の新たな分野に進出する。」

「特定の大企業」以外の企業のビジネスを広げる内容なので妥当な取り組み内容です。

正解:4

必要な知識:なし

他の設問

地理B 2024年 本試験 |第1問|第2問|第3問第4問第5問

-過去問解説