大学入試共通テスト(2025年 地理総合、地理探究 本試験 第2問)の解説ページです。
2025年 地理総合、地理探究 本試験 |第1問|第2問|第3問|第4問|第5問|第6問|
問題と解答
共通テスト(2025年 地理総合、地理探究 本試験)の問題と解答のリンクです。
問題文のPDFは下記リンク先から入手し、図表や問題文を手元に置きながら解説(次項)を見て下さい。
リンク切れ対策のため複数サイトへリンクを貼っていますが、いずれも同一です。
入試速報トップ:河合塾|東進|朝日新聞|
問題:河合塾|東進|朝日新聞|
解答:河合塾|東進|朝日新聞|
試験日(2025年)から年数が経過している場合はリンク切れの可能性が高いため、下記サイトを利用して下さい。
解説
第2問は地域調査(愛知県東部・東三河地域)に関する設問です。
問1 地形図
1919年と現在の豊橋市周辺の地形図を見ながら、文章の正誤判定を行う問題です。
a:軍用地が公園に変えられる
→正しい
1919年の地形図を見ると、市街地の中に「歩兵◯」「◯兵場」といったように軍隊に関する施設の名前が見られます。
現在の地形図では、同じ場所は豊橋公園となっています。
b:図1中の他地域よりも宅地開発が進んでおらず
→正しい
飽海町と豊川の間(地形図右上)は、現在の地形図でも田畑が残っています。
他地域は開発されて市街地や住宅地になっているため、正しい内容です。
c:東新町から瓦町に向かって国道1号は下り坂になっており
→誤り
東新町と瓦町は地形図右下に存在し、国道1号が中央から右下に向かって下り坂になっているかという問題です。
現在の地形図は建物が込み入っていてわかりづらいので、1919年の地図を見たほうが良いでしょう。
国道1号の両側には等高線が見えるのですが、国道1号そのものにも等高線がかかっていようです(非常に見づらいです)。
ここで地形の特徴を考えます。
この地形図の場所では北側に豊川という河川が流れています。
川の周囲は川に向かって標高が低くなります。
つまり、常識的に考えて、地図左上側に川が流れているということは、地形図の左上から右下に向かって標高が高くなる(=上り坂になる)はずです。
このため、国道1号は東新町(左上側)から瓦町(右下側)に向かって上り坂になっているはずです。
さらに、現在の地形図をよく見ると、「東新町」の文字の左上に標高8.8mの水準点があるのに対し、「瓦町」の文字の上側に19mと書かれています。
この標高からも、東新町(左上側)から瓦町(右下側)に向かって上り坂になっていると考えられます。
正解:2
必要な知識:
・等高線や田畑などの地図記号の読み取り
・川の近くでは川に向かって標高が低くなること
問2 メッシュ図
豊橋市の製造業従事者数のメッシュ図を見て、不適切な文章を選ぶ問題です。
メッシュ図の中でも特に製造業従事者数が多い2か所について、「三河湾臨海地区」と「二川・谷川地区」であると説明されています。
①従業者数が1000人以上のメッシュのみで市内の総数の1割以上を占める
→正しい
直前に豊橋市の製造業従事者の総数が3.6万人とあるので、1割は3,600人です。
つまり、製造業従事者数1000人以上のメッシュの数が4か所以上あれば、正しいことになります。
確認すると、三河湾臨海地区に1か所、二川・谷川地区に2か所、市北側に1か所の合計4か所あるため正しいことがわかります。
②従業者数が500人以上のメッシュが連続して分布している
→正しい
メッシュ図を確認すると、三河湾臨海地区で500人以上のメッシュが隣り合っていることがわかります。
③輸送や取引にかかるコスト削減のメリットがある
→正しい
隣の工場で生産した化学薬品を原料として製品を製造するなど、工場が集積していることは輸送・取引面でメリットがあります。
④道路の利便性が最も大きな立地要因である
→誤り
確かに二川・谷川地区は内陸に位置するため国道に近接する点が立地要因として大きいですが、三河湾臨海地区については「臨海」とあるように原料や製品の海上輸送のために海沿いに立地しています。
三河湾臨海地区の説明文にも「『海外』自動車メーカーの『流通基地』も立地」とあり、その下の写真も港の風景です。
これらは、船舶での輸送のための立地であることを暗示しているものです。
「最も大きな」といった限定する表現では、理由の1つではなく最大の理由である必要があります。
本当にそうなのか注視する必要があります。
正解:4
必要な知識:なし
問3 農業生産量の推移
1960年と2006年の市町村別・作物別の収穫量を見て、キャベツ、米、サツマイモがどれかを当てる問題です。
1960年と2006年の収穫量を比較すると、「ア」は減少、「イ」は消滅、「ウ」は急増です。
聞き取り調査の結果としては、この期間に「大消費地へのアクセス向上した」「豊川用水の開通で栽培作物が変化した」とあります。
まず、唯一2006年の方が生産量が増えた「ウ」について考えます。
大消費地へのアクセス向上により生産量が増えた作物としては、近郊農業で栽培されるいたみやすい作物であるキャベツが考えられます。
大都市周辺では鮮度が重要な野菜などが栽培される近郊農業が発展します。
東三河地域も大都市である名古屋とほど近いため、アクセスの向上により近郊農業が発展したと考えられます。
次に生産量が急減した「イ」について考えます。
「豊川用水の開通で栽培する作物が大きく変化した」とあるため、それまでは灌漑が十分にできない粗放的な農業形態であったと考えられます。
そのため、環境が悪い農地でも栽培できる救荒作物として知られるサツマイモが当てはまります。
最後に生産量がゆるやかに減少している「ア」です。
1960年から2006年という時期は、日本人の食の欧米化が進み、米の消費量が減って小麦や肉の消費量が増加した時期です。
これに合わせて、自給率ほぼ100%の米の生産量を抑制する減反政策が行われました。
よって、この期間に生産量が減少していることから米の収穫量で矛盾ありません。
正解:5
必要な知識:
・近郊農業で野菜が栽培されること
・サツマイモは環境が悪い農地でも栽培できること
・米の減反政策
問4 旅客流動と交通手段
東三河地域と近県の間の交通手段別年間旅客数の表の穴埋め問題です。
交通手段は「カ」と「キ」(自動車または鉄道)、県はJ県、K県、大阪府(J, Kは静岡または長野)です。
交通手段別に数字を見ると、隣県にあたるJ県とK県(静岡または長野)は「キ」の方が圧倒的に多いのに対し、数百km離れた大阪府では逆転して「カ」の方が多いです。
問1の資料1左上の地図を見ると、愛知県東端部に位置する東三河地域から見て静岡と長野は隣り合っています。
このため、近隣(静岡や長野)に行く際に自動車と鉄道どちらを使うか、数百km離れた場所(大阪)に行く際に自動車と鉄道どちらを使うかを考えます。
近隣は自動車、遠方は鉄道(新幹線)を使う場合が多いと考えられるため、「カ」が鉄道、「キ」が自動車です。
次にJ県とK県の旅客数を比較すると、K県の方が圧倒的に多いです。
これは、東三河地域の中心地である豊橋市のすぐ東隣が静岡県であり、新幹線や高速道路、国道1号が通っている(問1の資料1左上の地図参照)のに対し、長野県は鉄道路線を通してつながっているだけです。
しかも、問3の資料3左下の起伏図を見る限り、長野との県境はかなり山奥です。
このような地理的条件から、旅客数が多いK県が静岡県、少ないJ県が長野県であると判断できます。
以上より、会話文の穴埋めは、K:静岡県、キ:自動車となります。
正解:1
必要な知識:
・隣町と遠方に向かう際の交通手段の違い