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【共通テスト解説】2025年 地理総合、地理探究 本試験 第4問

大学入試共通テスト(2025年 地理総合、地理探究 本試験 第4問)の解説ページです。

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問題と解答

共通テスト(2025年 地理総合、地理探究 本試験)の問題と解答のリンクです。
問題文のPDFは下記リンク先から入手し、図表や問題文を手元に置きながら解説(次項)を見て下さい。
リンク切れ対策のため複数サイトへリンクを貼っていますが、いずれも同一です。

入試速報トップ:河合塾東進朝日新聞
問題:河合塾東進朝日新聞
解答:河合塾東進朝日新聞

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過去問サイト:日本の学校中日進学ナビ

解説

第4問はエネルギーと産業に関する設問です。

問1国別・発電方式別発電量

2010年から2019年までの国別・発電方式別の発電量について国名の組み合わせを答える問題です。
表中のア~ウが日本、中国、ドイツのいずれかです。

ア:全発電方式で大幅増加
イ:火力が微増、原子力が大幅減(ウ以上に減少)、太陽光・地熱・風力が大幅増
ウ:火力が減少、原子力が大幅減、太陽光・地熱・風力が大幅増(イ以上に増加)

この期間に原子力が減少しているのは2011年に東日本大震災で福島第一原発事故が発生したためです。
日本では大部分の原子力発電所が稼働停止に追い込まれました。
一方で、急激な原子力発電所の稼働停止で電力が不足し、代わりに古い火力発電所を稼働させて火力発電により電力需要を賄う体制になりました。
このため、火力発電が増加して原子力が最も大きく減少している「イ」が日本です。

ドイツは脱原発を掲げていますが、原発事故を起こした日本ほど急激な変動はしておらず、脱炭素も掲げているため火力発電も減少しています。
その代わりに太陽光・地熱・風力などの再生可能エネルギーの増加率が日本以上に高くなっています。
よって「ウ」がドイツです。

新興国である中国はこの期間に飛躍的な経済発展を遂げ、経済発展を優先していることから原子力を含むあらゆる発電方式が大幅に増加しています。
よって、「ア」が中国です。

日本とドイツの判別が難しいですが、日本では原発事故による急な原子力発電所稼働停止の代替として火力発電で電力を補っている点がポイントです。

正解:3

必要な知識:
・日本では2011年の原発事故以来原子力発電の比率が急落して、火力発電で代替していること
・新興国である中国は、経済発展により電力需要需要が急増していること

問2 ウェーバーの工業立地論

醤油製造、石油製造、ワイン製造の3種類の工業について、ウェーバーの工業立地論にあてはめて立地を選ぶ問題です。
原料指数という指数が与えられ、分子が「特定山地でのみ算出される原料の重量」、分母が「製品の重量」です。
つまり、製品重量に比べて特定の原料が重い場合(=原料指数が1以上)は原料の生産地近くに工場を建てるのが合理的であり、反対に1つ1つの原料がそこまで重くない場合は消費地の近くに工場を建てるのが合理的になります。

以上をふまえて3種類の工業について見ていきます。
設問では、各工業の製造過程について次のような説明があります。
醤油製造:大豆を煮て小麦を混ぜ、食塩と水を加えて発酵させる。
石油精製:原料を、ガソリン・ナフサ・軽油・重油などに分離する。
ワイン製造:ぶどうを搾り、その果汁を発酵させ、長期間熟成させる。

ワイン製造は、「ぶどうを搾り」とあるので、搾りかすを使わない分だけ製品重量よりも原料(ぶどう)の重量の方が多いことがわかります。
このため、原料指数が1より大きく原料産地近くに立地するほうが有利です。
→A

醤油製造は、大豆や小麦、食塩や水など様々な材料を混ぜ合わせて作っています。
様々な材料、特に重さがある水を加えているため、原料(大豆)よりも製品のほうが重量は大きいと考えられます。
→C

残った石油精製は、原油からガソリンや軽油などを分離する工業ですが、分離するだけなので原料(原油)と製品の重量はそこまで大きく変わらないと考えられます。
→B

設問で知識をすべて説明しているため、知識ゼロでも正答できますが、工業立地論の概要を理解していると文章の意味を理解しやすくなります。

正解:6

必要な知識:なし

問3 繊維・衣服の製造・卸売・小売

繊維・衣服産業の製造品出荷額、卸売販売額、小売販売額を都道府県別に示した地図から正しい組み合わせを選ぶ問題です。

衣服は生活必需品であり、市内あるいは隣町くらいの距離感にある店で購入することが多い商材です。
このため、都道府県別に見ても人口に応じて小売販売額が増えていくと考えられます。

卸売に関しては、小売販売額に比例するものの拠点に集約して取引した方が効率が良いため、首都圏販売分は東京で一括するなど集約されているはずです。
たとえば、首都圏に展開する衣料品チェーン店に衣服を卸す際に都道府県別に分けて売るよりも首都圏分として一括して東京で売ってしまった方が売る方も買う方も効率的です。

製造に関しては、産業が発展している地域で生産量が多いため、人口とは無関係に分布していると考えられます。

以上をふまえてカ~クを確認すると、唯一東京で割合が高くない「カ」が製造であると判断できます。
次に「キ」と「ク」の判別のために首都圏に着目します。
「ク」では人口におおむね比例して千葉や神奈川でも円が大きくなっているのに対し、「キ」では東京が大きな円となり、千葉や神奈川の円が極端に小さくなっています。
これは、卸売が東京に集約されているのに対し、小売は各県で販売されていることの表れです。
よって、東京に集約されている「キ」が卸売、千葉や神奈川でも円が大きい「ク」が小売です。

正解:1

必要な知識:
・卸売業の分布
・小売業の商圏規模

問4 国際観光収支

2010年と2019年の4か国(日本、スペイン、タイ、ドイツ)の国際観光収支の棒グラフからドイツを選ぶ問題です。

ドイツは先進国であり、裕福な国民が海外に旅行に行くため支出額は大きいと考えられます。
また、ヨーロッパでは西岸海洋性気候で曇天が多いイギリスやフランス北部、ドイツから温暖な地中海沿岸に行くバカンスという文化があります。
バカンスは、ドイツの国際観光収支の「支出」を大きくする要因になります。
このため、4か国の中が飛び抜けて支出が多い②がドイツです。

ちなみにスペインはバカンスを受け入れる側の国であり、ヨーロッパの中では貧しい方なので、支出よりも収入の方が大きいと考えられます。
また、ヨーロッパは陸続きであるため外国に観光に行きやすいですが、日本は島国で言語の壁も大きいため支出はドイツよりも少なくなるはずです。
また、タイは発展途上国であるため、先進国よりも支出が少なくなると考えられます。
以上より、ドイツ以外に②のような支出を示す可能性がある国はありません。

正解:2

必要な知識:
・ドイツは先進国であること
・観光支出は裕福な国ほど多くなる傾向
・ヨーロッパのバカンス文化

問5 ファブレス企業

ファブレス企業の企業間取引に関する模式図を見て、不適切な文章を選ぶ問題です。

ファブレス企業とは、ファブ(fabrication facility=製造工場)を持たない(-less)メーカーのことです。
商品開発やマーケティングに特化して、別企業に作ってもらった商品を自社ブランドで販売する形態をとります。
自社工場をもたないことで、最先端の技術を気軽に採用できたり、発注先を競わせることで安価に製品を製造できます。
代表的なファブレス企業として、iPhoneを販売する米国のApple社やユニクロ、任天堂、計測機器メーカーのキーエンスなどがあります。

①多大な設備投資を必要とする製造部門を切り離している
→正しい
ファブレス企業の定義です。

②商品開発やマーケティングに特化し
→正しい
ファブレス企業は製造以外の付加価値創造に注力します。

③複数の企業から製造工程の一部を委託されている。
→正しい
ファブレス企業などから製造を受託して、自社工場で製造した製品を発注元へ納品する企業をOEM (Original Equipment Manufacturing) 企業といいます。
OEM企業で製造された商品は他社ブランドとして発売されます。
ファブレス企業と取引するf社やw~z社はOEM企業なので、妥当な内容です。

④部品製造工場と製品の消費地とが近接する
→誤り
工場と消費地が近接するか否かは、ウェーバーの工業立地論にあるように、原料重量と製品重量の関係で決まります。
ファブレス企業であるか無いかは無関係です。
問2でウェーバーの工業立地論の説明があるため、順番に解いていれば④が誤りであると判断しやすいです。

正解:4

必要な知識:
・ファブレス企業とOEM企業のビジネスモデル
・ウェーバーの工業立地論

問6 貿易収支

業種別国別の貿易収支を指数化した表を見て、JとK(家庭用電気機械または輸送機械)、「サ」と「シ」(アメリカ合衆国または中国)の組み合わせを当てる問題です。
貿易収支の指数は中間財と最終財でそれぞれ記載しています。

まず日本を見ると、Jと一般機械は貿易収支がプラスであるのに対し、Kはマイナスです。
日本では、家庭用電気機械(洗濯機や冷蔵庫など)が中国などの新興国のメーカーとの価格競争に負けているのに対し、輸送機械(自動車)は日本車が強いです。
町中で見かける車はだいたい日本のメーカーの車ですが、家電量販店で並ぶ洗濯機や冷蔵庫の中には中国メーカーのものたくさんあります。
このため、日本の貿易収支がプラスであるJが輸送機械、マイナスであるKが家庭用電気機械です。

次に「サ」と「シ」の判別です。
「サ」では家庭用電気機械の貿易収支がプラスであるのに対し、「シ」では日本同様にマイナスです。
このため、「サ」が新興国で価格競争に強い中国であり、「シ」が日本同様に先進国で価格競争に弱いアメリカ合衆国であることがわかります。

正解:3

必要な知識:
・家電と自動車における日本メーカーの国際競争力の違い(普及している家電と自動車の製造メーカーが日本なのか外国なのか)

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