地形 系統地理

火山の分布(沈み込み帯・広がる境界・ホットスポット)

日本には多数の火山が分布していますが、世界的には火山が分布している地域は偏っています。
このページでは、火山の分布についてプレート境界に着目して解説します。

プレート境界と火山の分布

世界の火山の分布。濃赤色の点が活火山、淡赤色の線が海嶺(広がる境界)である。活火山の分布が多い場所は、環太平洋造山帯や西インド諸島、、アフリカ大地溝帯、大西洋中央海嶺、イタリア南部などがある。狭まる境界(特に沈み込み帯)や広がる境界などの変動帯では活火山が多く分布する一方、安定地域には活火山が少ない。例外的に太平洋のハワイ諸島(米国)は活火山が集中するホットスポットとなっている。出典:Wikimedia Commons, ©Eric Gaba, CC BY-SA 2.5, 2024/8/27閲覧

上の世界地図は、世界の活火山の分布を示したものです。
小さい濃赤色の点が活火山であり、淡赤色の線が海嶺海洋上の広がる境界)です。
活火山が多い場所は、大きく3つに分けられます。

①沈み込み帯(環太平洋造山帯)
②広がる境界(アフリカ大地溝帯)
③ホットスポット(ハワイ諸島)

以下では、①②③について順に解説します。

狭まる境界と火山の分布

環太平洋造山帯の範囲。うす赤色に塗られた地域が造山帯で、赤三角は火山、青線は海溝を示す。出典を加工して作成。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/10/19閲覧

狭まる境界(収束境界)の中でも沈み込み帯には活火山が集中して分布しています。
沈み込み帯は、プレート境界で比重が重い海洋プレートが軽い大陸側のプレートの下に潜り込む場所です。
地球内部へ沈み込んでいった海洋プレートは、高温高圧下で融解してマグマとなり、その一部が地表に噴出します。
このため、沈み込み帯の大陸側ではプレート境界に並行して円弧を描くように活火山が並びます(火山弧、火山列)。
活火山が海洋上に並ぶ場合には、弧状列島(島弧)とよばれる円弧状に並ぶ火山島が見られます。
以上のような活火山が多く見られるのが環太平洋造山帯です。
環太平洋造山帯は、太平洋プレートと周囲のプレートとの境界であり、太平洋を囲むように分布しています。
代表的な地域としては、アンデス山脈、中央アメリカ、ロッキー山脈、アラスカ半島、アリューシャン列島(米国アラスカ州南西部)、千島列島、日本列島、伊豆諸島、小笠原諸島、マリアナ諸島(米領北マリアナ諸島~グアム)、南西諸島、フィリピン諸島、大スンダ列島(インドネシア)、トンガ諸島(オセアニア)、ニュージーランドです。

環太平洋造山帯ではありませんが、沈み込み帯がある西インド諸島やイタリア南部~ギリシャ南部も活火山が多い地域です。

同じ狭まる境界であっても、ヒマラヤ山脈などの衝突帯では活火山はあまり見られません。

広がる境界と火山の分布

2022年の研究に基づく世界のプレートの分布と境界。プレート境界は種類別に色分けしている。広がる境界(発散境界)は赤系、狭まる境界(収束境界)は青系、ずれる境界(すれ違う境界)はオレンジと緑色である。ソマリアプレートはアフリカプレートの一部であり、アフリカ大地溝帯を境界としてアフリカ大陸から分裂しようとしている部分である。出典を加工して作成。出典:Wikimedia Commons, ©M.Bitton, CC BY-SA 3.0, 2024/8/1閲覧

広がる境界(発散境界)では、2つのプレートが離れようとするため地球内部からマグマが噴出しやすいので活火山が見られます。
広がる境界の大部分は大洋上に位置するため、海底火山が多く陸上の火山はそこまで多くありません。
広がる境界で陸上の火山が見られる例は2つあります。

1つは、大陸上に広がる境界が位置するアフリカ大地溝帯です。
アフリカ大地溝帯では、タンザニア・ケニア周辺から紅海周辺にかけて火山が分布しています。
代表的な火山としてはアフリカ最高峰のキリマンジャロ(5,895m, タンザニア)やケニア山(5,199m, ケニア)があります。

もう1つは、大洋上の広がる境界の海底火山が噴火を繰り返して成長して海から顔を出して火山島になった場所です。
大西洋中央海嶺上に位置するアイスランド島やアゾレス諸島(ポルトガル)などがあります。

ホットスポットの分布

プレート境界とホットスポットの分布。凡例は、1:広がる境界(収束境界)、2:ずれる境界(トランスフォーム断層)、3:狭まる境界、4:プレート境界地帯、5:主要なホットスポットである。ホットスポットはプレート境界とは無関係に火山活動が行われている場所であり、プレート境界から離れた場所に位置するものが多いが、広がる境界上にも見られる。広がる境界では通常は海底火山が見られるが、ホットスポットでは局所的に火山活動が活発であるため、火山噴出物が積み重なって海面から顔を出すほどに高度が高い火山が形成される。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/11/21閲覧

プレート境界とは独立した火山活動が行われるホットスポットにも火山が分布しています。
ホットスポットでは高温のマグマが上昇流に乗って地表へ噴出するため、局所的に火山が見られます。

ホットスポットが分布する場所は、プレートの内側(大陸や大洋の中央部など)海洋上の広がる境界海嶺)です。
ホットスポットの火山活動はプレート境界とは独立していますが、プレート境界とホットスポットが重なる場所も存在します。

プレート内側に位置するホットスポットとしては、太平洋プレートの中央部に位置するハワイ諸島(米国)が代表的です。
他にも、モロッコ沖のカナリア諸島(スペイン)、西アフリカのセネガル沖のベルデ岬諸島(ヴェルデ岬諸島、カーボベルデ)、インド洋の仏領レユニオン島、北アメリカ大陸内陸部のイエローストーン国立公園(米国北西部)があります。

海洋上の広がる境界に位置するホットスポットとしては、大西洋中央海嶺上に位置するアイスランド島やアゾレス諸島(ポルトガル)東太平洋海嶺上に位置するイースター島(チリ)などがあります。
ガラパゴス諸島(エクアドル)も広がる境界上に位置するホットスポットです。
いずれも海嶺上に位置する火山島です。
広がる境界とホットスポットが重なったことで特に火山活動が活発になり、海嶺上で例外的に火山島にまで成長しました。

ホットスポットについては、次のページ解説しています。

参考ホットスポットとプレート移動(ハワイ諸島)

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参考文献

火山(カザン)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、改訂新版 世界大百科事典、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2024/11/21閲覧
Volcanism of Italy, Wikipedia 2024/11/21閲覧
大西洋中央海嶺(タイセイヨウチュウオウカイレイ)とは? コトバンク デジタル大辞泉、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、、日本大百科全書(ニッポニカ) 2024/11/21閲覧
ホットスポット火山(ほっとすぽっとかざん)とは? コトバンク 知恵蔵 2024/11/21閲覧
地理用語研究会編「地理用語集」山川出版社(2024)
世界の地質-ホットスポット 栃木県の地球科学 2024/11/21閲覧
アイスランドホットスポット ウィキペディア 2024/11/21閲覧

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