地形 系統地理

火山の形の分類(楯状火山・溶岩台地・溶岩円頂丘・成層火山)

一口に火山と言っても様々な形の火山があります。
火山の形は噴出するマグマの粘性(粘り気の強さ)によって決まります。
このページではマグマの粘性の違いに基づく火山の形について解説します。

マグマの粘性と火山の形

キラウエア火山の溶岩(米国ハワイ諸島南東部・ハワイ島)。火山の噴火により地上に吹き出した火山噴出物のうち、液体状のものを溶岩という。溶岩は高温のまま地表を流れるように動き、溶岩が流れるさまを溶岩流という。キラウエアはマグマの粘性が低い楯状火山であり、写真の溶岩は粘性が低いため水飴状なり遠くまで流れている。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/11/2閲覧

火山の形はマグマの粘性(粘り気の強さ)によって変わります。
二酸化ケイ素(SiO2)の含有率が低い玄武岩質のマグマだと、高温で粘性が低い(=粘り気が弱い)ため、マグマが遠くまで流れていき平べったい形の火山(楯状火山)になります。
一方、二酸化ケイ素の含有量が高い流紋岩質のマグマだと、低温で粘性が高い(=粘り気が強い)ため、マグマが火口の近くで積み重なり、かさ高い溶岩円頂丘(溶岩ドーム)とよばれるドーム状の火山になります。
二酸化ケイ素の含有量が中程度の安山岩質のマグマだと、粘性も中程度になるのでマグマが流れる範囲も溶岩円頂丘以上楯状火山未満となり、富士山のような円錐形にマグマが堆積します(成層火山)。

表 火山の種類とマグマの性質の違い

火山の種類楯状火山成層火山溶岩円頂丘
(溶岩ドーム)
溶岩の組成流紋岩質安山岩質玄武岩質
SiO2含有率
粘性
マグマが
流れる範囲
火山活動大規模・間欠的に噴火小規模・頻繁に噴火
火山の例有珠山、昭和新山、雲仙岳富士山、羊蹄山、岩木山キラウエア、マウナ・ケア(ハワイ)

また、火口が山の上の1か所ではなく地面に長さ数百m~数十kmにもおよぶ亀裂が入りそこから噴火する場合は、山ができずに溶岩があたりを埋め尽くし、溶岩台地とよばれる広大な台地状の地形を作ります。

溶岩円頂丘はマグマの粘性が高く火口付近に噴出物が堆積するため1回の噴火で地形ができ上がります。
同じ火山でも火口の位置が変わることもあり、別々の場所に溶岩円頂丘が形成されます。

一方、マグマの粘性が低いと、火口から離れた場所まで溶岩(マグマ)が流れていくため、噴火を繰り返すたびに広い範囲に厚い堆積物が層を作るように溜まっていきます。
マグマの粘性が非常に低い場合は平べったい楯状火山になりますが、中間的な粘性の場合はマグマが流れる範囲が狭くなり、富士山のような円錐形にマグマが堆積します(成層火山)。

以上のように、噴出するマグマの粘性の違いによって火山の形が大きく変わります。

火山の形

ここからは、火山の形に関する地形を順に見ていきます。
以下では、楯状火山、溶岩台地、溶岩円頂丘(溶岩ドーム)、成層火山について順に説明します。

楯状火山

楯状火山マウナ・ロア(4,169m, 米国ハワイ諸島南東部・ハワイ島)。マウナ・ロアのマグマの粘度が低いため遠くまで流れ、傾斜が緩やかで平べったい形の楯状火山を形成している。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2021/1/9閲覧

楯状火山は、高温で粘性が低い玄武岩質のマグマが繰り返し噴出・堆積してできた火山です。
マグマの粘性の低い(=粘り気が弱い)とマグマが火口の遠くまで流れていくため、平べったい形になります。

楯状火山が見られる場所としては、広がる境界やホットスポットで見られます。
広がる境界で楯状火山が見られる場所としては、大西洋中央海嶺に位置するアイスランド島アフリカ大地溝帯周辺があります。
楯状火山が見られるホットスポットとしては、ハワイ諸島(米国)があります。
代表的な楯状火山としては、ハワイ島のマウナ・ロア(4,169m)や、マウナ・ケア(4,205m)、キラウエア(1,247m)などがあります。

溶岩台地

ランギボ砂漠の溶岩台地(ニュージーランド・北島)。ニュージーランド北島内陸部に位置するランギボ砂漠では、年間1,500-2,000mm程度の降水量があるにも関わらず、火山噴出物が堆積した土壌のため砂漠のように植生が乏しいエリアが広がる。出典:Wikimedia Commons, ©James Dignan, CC BY-SA 3.0, 2021/1/9閲覧

溶岩台地は、大量の溶岩流があたりを埋め尽くしてできた台地状の火山地形です。
楯状火山と同様に粘性の低い(=粘り気の少ない)玄武岩質の溶岩からできているため、山ではなく台地状の地形になります。
溶岩台地はマグマが噴出してできた地形ですが、山の上の1か所の火口ではなく、地面に長さ数百m~数十kmにもおよぶ亀裂が入りそこから大量の溶岩が噴出します。
溶岩流はあたりの低地を埋め尽くし、広大な台地状の地形が形成されます。

溶岩台地の例としては、インド内陸部のデカン高原やアメリカ北西部のコロンビア川台地(ワシントン州ほか)などがあります。
デカン高原では溶岩台地を構成する玄武岩が風化してできたレグールという土壌が広がります。
レグールは肥沃な土壌として知られ、綿花小麦の栽培が盛んに行われています。

デカン高原の丘陵地帯(インド西部・マハーラーシュトラ州)。デカン高原は地面が線状に割れてマグマが噴出する割れ目噴火によって形成された溶岩台地である。溶岩台地の溶岩は粘性が低い玄武岩質のマグマからなり、この玄武岩質の土壌が風化してできたレグールという土壌が広がる。レグールは肥沃な土壌として知られており、綿花や小麦の栽培が盛んに行われている。出典:Wikimedia Commons, ©Kppethe, CC BY 3.0, 2024/11/5閲覧

溶岩円頂丘

溶岩円頂丘(溶岩ドーム)の典型例である昭和新山(398m, 北海道胆振地方・壮瞥町)。デイサイト質の粘性が高いマグマが火口付近でうず高く堆積してできた火山地形である。出典:Wikimedia Commons, ©Mugu-shisai, CC BY-SA 3.0, 2021/1/9閲覧

溶岩円頂丘(溶岩ドーム)は、低温で粘性が高いデイサイト質のマグマが火口付近に堆積した地形です。
マグマの粘性が高いと流動性が低くなり、火口からほとんど流れずにドーム状にうず高く堆積します。
溶岩円頂丘は上空からは円形の見え、地上からは円墳のように盛り上がった形に見えます。

楯状火山成層火山(後述)は噴火のたびに噴出した溶岩火山灰が積み重なって堆積した火山地形ですが、溶岩円頂丘は1回の噴火で形成された地形です。
同じ火山の噴火であっても、火口の位置が変わることがあります。
マグマの粘性が高いと溶岩が遠くまで流れないため、各火口付近に別々の溶岩円頂丘が形成されます。

溶岩円頂丘の例としては、有珠山の東隣にそびえる昭和新山(398m, 北海道・胆振地方)や雲仙普賢岳の頂上付近にできた平成新山(1,482m, 長崎県東部・島原半島)などがあります。
溶岩円頂丘は1回の噴火でできた地形であるため、比較的小規模です。
度重なる噴火で大きな火山が形成された後に、山頂部分で小規模な噴火が起きて小さな溶岩円頂丘が形成されることも多いです。(先述の平成新山も該当)

樽前山(1,041m)の山頂付近に形成された溶岩円頂丘(溶岩ドーム)(北海道胆振地方・苫小牧市)。溶岩円頂丘は粘性が高いデイサイト質のマグマが噴出してできた火山地形である。マグマの粘性が高いため溶岩が火口付近に堆積してドーム状に積み上がる。樽前山のように複数回の噴火によって積み上がって形成された火山の山頂部(カルデラ内など)に溶岩円頂丘が形成される場合もある。出典:Wikimedia Commons, ©Highten31, CC BY-SA 3.0, 2024/11/4閲覧

成層火山

北側から見た富士山(3,776m, 静岡東部・山梨南東部)。山梨県南東部・富士河口湖町から撮影したものである。手前の湖は精進湖(しょうじこ)であり、富士山の手前の小さな山は大室山(1,468m)である。富士山は複数の噴火による溶岩や火山砕屑物などが積み重なったできた成層火山である。出典:Wikimedia Commons, ©名古屋太郎, CC BY-SA 3.0, 2024/11/6閲覧

成層火山は、ほぼ同一の火口からの度重なる噴火により、溶岩流火山砕屑物(かざんさいせつぶつ)が交互に何重にも積み重なり、円錐状の形をした火山です。
成層火山は麓は傾斜がゆるやかで、頂上に向かうにしたがって傾斜が急になります。

成層火山は主に安山岩からなる火山です。
粘性が低い玄武岩質で平べったい形の楯状火山と粘性が高いデイサイト質の溶岩円頂丘(溶岩ドーム)の中間的な形です。

成層火山として有名なのが富士山(3,776m, 静岡東部・山梨南東部)です。
成層火山は数が多いので富士山と似たような形状の山が日本国内に多数あり、〇〇富士とよばれています。
たとえば、同じく成層火山の羊蹄山(1,898m, ようていざん、北海道後志地方)は蝦夷富士(えぞふじ)とも称されています。

成層火山は海外にも多数存在し、アフリカ最高峰のキリマンジャロ(5,895m, タンザニア北東部)、ヴェスビオ山(1,281m, イタリア南部)、タラナキ山エグモント山、2,518m, ニュージーランド北島)、ピナトゥボ山(ピナツボ山、1,486m, フィリピン北部・ルソン島)、セント・ヘレンズ山(2,549m, 米国北西部・ワシントン州)、エルチチョン山(1,205m, メキシコ南部)などがあります。

参考

葛飾北斎の『凱風快晴』(富嶽三十六景33番)。赤く染まった富士山(赤富士)が描かれている。富士山は古来から山岳信仰の対象になっており(富士講など)、芸術作品の対象ともなっている。過去の火山噴火のため植生が乏しく、世界各地で見られる典型的な成層火山であることから世界遺産(自然遺産)の対象とはならなかったが、その文化的な側面から世界遺産(文化遺産)として登録された(2013年登録「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」)。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/11/6閲覧

文化遺産として登録された富士山
富士山は世界遺産に登録されていますが、自然遺産ではなく文化遺産として登録されています。その理由は、富士山のような成層火山は世界中にたくさんあり、過去の噴火の影響で植生が乏しいこともあって自然遺産としての登録が難しいからです。
富士山は非常に人気がある観光地であり、多くの観光客が富士山に登るため、ごみなどの環境問題も影響したようです。
そのため、富士山は山岳信仰や芸術との関連を前面に推して文化遺産として登録することになりました(2013年登録「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」)。

参考文献

火山(カザン)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、改訂新版 世界大百科事典、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2024/10/29閲覧
地理用語研究会編「地理用語集」山川出版社(2024)
矢ケ﨑 典隆 他「新詳地理探究」帝国書院(2023)
割れ目噴火(ワレメフンカ)とは? コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、百科事典マイペディア、岩石学辞典 2024/11/5閲覧
溶岩台地(ヨウガンダイチ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、改訂新版 世界大百科事典 2024/11/5閲覧
Shield volcano, Wikipedia 2024/11/4閲覧
Deccan Traps, Wikipedia 2024/11/5閲覧
David Bressan「恐竜絶滅、最大の原因は「火山の冬」だった? 新たな研究結果」(2023/12/24) Forbes JAPAN 2024/11/5閲覧
レグール土とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2024/11/5閲覧
Columbia Plateau, Wikipedia 2024/10/29閲覧
溶岩円頂丘(ヨウガンエンチョウキュウ)とは? 日本大百科全書(ニッポニカ)、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2024/11/4閲覧
4_2_3 榛名富士溶岩 - 榛名 - 榛名火山の噴出物 産業技術総合研究所 地質調査総合センター 2024/11/4閲覧
成層火山(セイソウカザン)とは? コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、改訂新版 世界大百科事典、日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2024/11/6閲覧
富士山-信仰の対象と芸術の源泉 ウィキペディア 2024/11/6閲覧
凱風快晴 ウィキペディア 2024/11/6閲覧

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