外的営力による地形を作る力としては侵食が代表的ですが、それ以外にも風化という現象も発生します。
特に水が少ない乾燥帯では風化の影響は大きくなります。
このページでは、侵食と風化の違いと風化の分類について解説します。
目次
風化とは
風化とは、地表の岩石が太陽光や温度変化などにさらされて、しだいに変質していく現象です。
地球上では気温や天気の周期的な変化が起きるため、岩石が同じ場所にあるだけで、次第に岩石の構造が破壊されていきます。
侵食と風化の違い
侵食と風化の違いは、岩石や土壌が同じ位置のまま作用が進むのか、あるいは流されて別の場所に移動するかです。
風化は岩石が定位置のまま変質していくのに対し、侵食は土壌の一部が水などに流されて別の場所に移動することで発生します。
表 侵食と風化
侵食 | 風化 | |
岩石・土壌の位置 | 一部が移動(流出) | 定位置のまま |
分類 | 河食、海食、氷食 | 物理的風化、化学的風化 |
具体例 | V字谷、海食崖、圏谷(カール) | 砂砂漠(砂漠砂丘) |
参考
カルスト地形は侵食と風化のどちらなのか
カルスト地形は石灰岩質の土壌が広がる場所にできる地形であり、石灰岩が雨水に溶けて流出する溶食(ようしょく)という現象によりできあがった地形です。
溶食は、その名前から侵食の一分類と思われやすいですが、実際には溶食は風化と侵食が組み合わさった現象です。
溶食は次の二段階に分けられます。
①石灰岩が雨水により加水分解(化学反応)されて成分が雨水に溶け込む
②雨水に溶け込んだ成分が低い場所へ流れていき、元の場所から失われる
①は化学的風化の一種である「溶解」という現象であるのに対し、②は侵食作用です。
①→②と進むプロセスを溶食とよびます。
風化の分類
風化は大きく分けて物理的風化と化学的風化の2つに分けられます。
物理的風化は、温度変化などの物理的な現象によって岩石が破壊される現象です。
一方で化学的風化は、酸化還元や溶解などの化学反応で岩石が変質する現象です。
また、それ以外の分類として、生物が関与する風化を生物風化と呼びます。
生物風化も物理的風化(例:植物の根の成長による岩石の破壊)と化学的風化(例:コケ植物(蘚苔類)が出す酸による土壌の溶解)に分けられます。
物理的風化と化学的風化は並行して進みますが、高温多湿な気候では化学的風化が優勢な傾向(例:カルスト地形)であるのに対し、乾燥寒冷な気候では物理的風化が優勢になる傾向(例:砂漠の熱風化や寒冷地の凍結風化)があります。
以下では、物理的風化、化学的風化、生物風化について順に具体例を見ていきます。
物理的風化
物理的風化とは、温度変化などの物理的な現象によって岩石が破壊される現象です。
岩石が膨張・伸縮することで機械的な力で岩石が破壊されるため、機械的風化とも呼びます。
物理的風化の例として、熱風化、凍結風化、乾湿風化などがあります。
熱風化

熱風化とは、岩石が加熱による膨張と冷却による収縮を繰り返すことで破壊される現象です。
細かい粒子が広がる砂砂漠(すなさばく、砂漠砂丘)は熱風化によって作り出された地形です。
岩石は太陽光に照らされて温度が上がると膨張し、逆に夜になると温度が低下して収縮します。
膨張・収縮を毎日繰り返すことで、岩石内部の構造が少しずつ壊れていき、やがて岩石が崩壊してしまいます(金属疲労と同様の強度低下は岩石でも起きる)。
特に、気温の日較差(一日の最低気温と最高気温の差)が大きい砂漠で岩石の疲労が早く進みます。
凍結風化

凍結風化とは、岩石中の水分が凍結・融解を繰り返すことで岩石が内部から破壊される現象です。
気温0℃をまたいで気温変化する場所では、岩石内部の水が凍結・融解を繰り返して岩石を破壊します。
岩石中に含まれる液体の水は、気温が氷点下に下がると氷になります。
氷は水よりも体積が大きいため、凍結(凝固)する際に膨張して岩石を内側から圧迫します。
気温が上昇して氷が融解すると、今度は岩石と水の間に隙間ができてしまいます。
凍結・融解を繰り返すことで、岩石は内部から少しずつ破壊されていきます。
乾湿風化

乾湿風化とは、岩石が吸水・乾燥を繰り返すことで岩石が破壊される現象です。
岩石内部に水分が浸透していくと内部で水圧により岩石を圧迫しますが、逆に乾燥して水分が抜けると水圧が無くなり収縮します。
遠浅の海では、潮の満ち引きにより海中に沈む時間と干上がって乾燥する時間があります。
このため、潮の満ち引きに合わせて、岩石が吸水・乾燥を繰り返すことで岩石が変質していきます。
化学的風化
化学的風化とは、酸化還元や溶解などの化学反応で岩石が変質する現象です。
化学的風化には、溶解や水和、酸化還元などがあります。
岩石や水の膨張・収縮で岩石が破壊される物理的風化に対し、化学反応により岩石を構成する物質が変質することによって引き起こされるのが化学的風化です。
溶解

化学的風化における溶解とは、岩石が雨水に溶かされて変質する現象です。
石英のように水に溶けにくい岩石であっても、非常に長い期間をかけて少しずつ溶解が進んでいきます。
岩塩や石灰岩など水に溶けやすい岩石がある場所では、溶解により岩石が変質し、さらに雨水によって洗い流されることで侵食が進みます(溶食)。
石灰岩が溶食により変質・侵食したカルスト地形は、溶解の影響が顕著にみられる典型例です。
雨水は石灰岩が溶かし込みながら地下に浸透していきます。
この過程で石灰岩質の土壌の内部に鍾乳洞(しょうにゅうどう)と呼ばれる空洞ができあがります。
鍾乳洞内部では、地表で石灰岩を溶かし込んだ雨水が天井からしたたり落ちます。
この際、水分が蒸発したり水温の低下で溶けていた石灰岩が析出し、天井からつらら状の鍾乳石(しょうにゅうせき)が伸びていきます。
地表側でも同じ原理で、石筍(せきじゅん)と呼ばれるタケノコ状の地形ができあがります。

酸化

酸化反応も化学的風化の一種です。
岩石に含まれる金属イオンなどが、空気中の酸素と反応して酸化することで、岩石の構造が変質します。
特に鉄は酸化されやすい元素であり、岩石中に含まれる鉄が酸化されると岩石が赤褐色を呈します。
上の画像は様々な金属イオンを含む岩石が酸化された光景が見れる場所であり、色とりどりの岩石が見られることからアーティスツ・パレット(Artists Palette, 芸術家のパレット)と呼ばれています。
生物風化

生物風化(生物的風化)とは、動植物や微生物などの生物によって引き起こされる風化です。
生物由来の風化であっても、物理的風化と化学的風化に分けられます。
たとえば、植物の根が伸びる力で岩石が破壊される生物風化は物理的風化に分類されます。
一方、地衣類や蘚苔類(いわゆるコケ)が酸を放出して岩石を溶解し、薄い土壌を作り出す働きは化学的風化に分類されます。

参考文献
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