気候 系統地理

気候を作る風(卓越風・風系のスケール)

風はその土地の気候を形成する気候因子の1つです。
特に長期間にわたって同じ方向に風が吹く卓越風がある地域では、卓越風の影響を大きく受けた気候を呈します。
このページでは、気候を作る風(特に卓越風)について説明した上で、地球規模で吹く恒常風から特定の地域でのみ吹く局地風(地方風)までを風のスケール(規模)ごとに解説します。

気候を作る風

大陸を横断する偏西風の模式図。南アメリカ大陸南部の南緯40°付近では、偏西風が大陸西岸と大陸東岸の気候を形作っている。大陸西岸では海上で水蒸気を含んだ空気が山脈を上る際に地形性降雨により雨が降るため、大陸西岸では森林が広がる。一方、山を越えた後は乾いた空気となるため、大陸東岸では降水量が少なく、乾燥した草原や砂漠が広がる。

は気圧差や温度差によって生じる空気の動きです。
地球上の大気は気圧が高い所(高気圧)から低い所(低気圧)に向かって移動します。
高温の空気は膨張して軽くなって上昇気流が発生して上空で結露(凝結)して雨雲を作るのに対し、低温の空気は密度が高く重いため、重力によって斜面を滑り降りるような風(滑降風)を発生させます。

風は気候を作り出す気候因子の1つです。
海からの水蒸気を内陸部に運んで雨を降らしたり、砂漠の乾燥した空気を別の場所に運んで乾燥した気候を作り出します。
特に長期間にわたって同じ方向に風が吹く卓越風がある地域では、卓越風の影響を大きく受けた気候を呈します。

卓越風

地球上の偏西風と貿易風の分布。青色が偏西風、黄色が北東貿易風、茶色が南東貿易風である。貿易風は低緯度地域で赤道に向かって吹く東風であり、偏西風は中緯度地域で吹く西風である。出典を加工して作成。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2025/12/29閲覧

卓越風たくえつふうとは、ある期間に一定方向に吹くことが多い風のことです。
卓越風には様々な種類があり、年間通して同じ方向に風が吹く恒常風や特定の季節に特定方向に風が吹く季節風(モンスーン)などがあります。

同じ方向に風が吹き続けると、その土地の気候は風の影響を大きく受けます。
たとえば、海から陸地に向かって卓越風が吹くと、海から運ばれた水蒸気の影響で雨が多い湿潤な気候になります。
反対に大陸内陸部から海洋側に向かって卓越風が吹くと、陸地には常に乾燥した空気が運ばれ、雨が少ない乾燥した気候になります。

卓越風には、年間通して同じ方向に風が吹く恒常風や季節によって風が吹く方角が入れ替わる季節風があります。
恒常風は地球上の位置関係(緯度)によって吹く風が決まっており、低緯度地域の東風である貿易風や中緯度地域の西風である偏西風、高緯度地域の東風である極偏東風などがあります。

一方で季節風はその名の通り季節ごとに周期的に卓越風の方向が変化する風です。
日本では夏に小笠原高気圧(太平洋高気圧)から吹き出す南東季節風、冬にシベリア高気圧から吹き出す北西季節風が卓越します。

風系のスケール

地球上の風は、地球を一周する大規模なものから、ごく限られた地域にとどまる小規模なものまで様々です。
風向がほぼ同じ風のまとまりを風系ふうけいと呼び、重要な風系には偏西風季節風(モンスーン)などの名前がつけられています。
風系には地球全球規模で発生する大規模なもの(貿易風偏西風など)から、局所的な地形の影響を受ける小規模なもの(局地風)まで様々な規模(スケール)があります。

以下では、風系の規模ごとに具体的な風について紹介します。

大規模な風系

ジェット気流の概略図。ジェット気流は偏西風の中でも特に風が強い上空11 km(対流圏界面)付近の偏西風である。ジェット気流は中緯度帯(緯度30-60°)で見られ、フェレル循環の低緯度側で見られる亜熱帯ジェット気流(図中赤色)と高緯度側で見られる亜寒帯ジェット気流の2種類がある。どちらのジェット気流も蛇行しながら地球を一周しており、季節によってジェット気流が吹く位置も変化する。出典:Wikimedia Commons, by Lyndon State College Meteorology, Public domain, 2025/12/29閲覧

地球全球レベルで発生する大規模な風系は地球の自転に起因するものであり、具体的には貿易風偏西風極偏東風などがあります。
地球の自転は年間通して一定であるため、これらの大規模な風系も年間通して決まった方向に吹く恒常風です。

これらの地球規模の恒常風については、以下のページで解説しています。

参考恒常風のしくみ(貿易風・偏西風・極偏東風)

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中規模な風系

東アジアの夏(左)と冬(右)の季節風の風向き。日本を含む東アジアでは、大陸と海洋の比熱の差から、夏は太平洋から大陸に向かって暖かく湿った南東風が吹き、降水量が多くなる。一方、冬はシベリア高気圧がある大陸内部から太平洋に向かって冷たく乾燥した北西風が吹くため、降水量が少なくなる。冬の北西風が日本海を渡る途中で水蒸気を吸収するため、日本の日本海側ではむしろ冬の方が降水量が多くなる。

全球規模には及ばない中規模な風系としては、ユーラシア大陸東岸の気候を形作る季節風(モンスーン)や、直径数千km以上にもおよぶ低気圧や高気圧などがあります。
これらの中規模な風系は、季節による日射量の変動、海洋と大陸の比熱の差に基づく気温差など様々な要因の影響を受けて形成されます。

季節風(モンスーン)、低気圧と高気圧、熱帯低気圧については、それぞれ以下のページで解説しています。

参考季節風(モンスーン)

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参考低気圧と高気圧(大気圧・風向)

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参考熱帯低気圧と災害(台風・ハリケーン・サイクロン)

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小規模な風系

山谷風の模式図。山谷風は山頂部(稜線)と谷筋の温度差により日中と夜間で風向きが逆になる局地風である。(左)日中は太陽光に暖められて気温が上昇するが、比熱の小さい地面に近い稜線上では、周囲の大気よりも空気が暖まりやすいため上昇気流が発生する。稜線の上昇気流に引っ張られて平地から谷筋、稜線に向かって谷風が吹く。(下)夜間は山頂部の方が冷めやすいため放射冷却により気温が低下して下降気流が発生する。稜線の下降気流に押されて稜線から谷筋、平地に向かって山風が吹く。

さらに小規模な風系としては、海と陸、山と谷など地形の影響を受けて発生する局地風(地方風)があります。
局地風は大陸-海洋間など数千kmの範囲で発生する風(季節風など)よりもさらに狭い範囲でのみ発生する風であり、小規模で局地的な地形の効果や地域的な気圧や気温の特徴によって局地風が発生します。

次のページでは、局地風をその成因別に整理して解説しています。

参考局地風と成因の分類(海陸風・山谷風・地峡風・滑降風など)

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参考文献

風(カゼ)とは? コトバンク 改訂新版 世界大百科事典 2025/2/9閲覧
卓越風(タクエツフウ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2025/12/27閲覧
風系(ふうけい)とは? コトバンク 精選版 日本国語大辞典 2025/2/11閲覧
 気象庁 2025/2/9閲覧
地理用語研究会編「地理用語集」山川出版社(2024)
帝国書院編集部「新詳地理資料 COMPLETE 2023」帝国書院(2023)
局地風(キョクチフウ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2026/2/15閲覧

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