東に行くほど日の出の時間が早くなりますが、初日の出が日本一早い場所は犬吠埼(いぬぼうざき、千葉県銚子市)です。
北海道最東端の納沙布岬(のさっぷみさき、根室市)の方が東にあるのに、なぜ犬吠埼の方が初日の出が早いのでしょうか。
ここでは、犬吠埼の初日の出が早くなる原因である季節ごとの日の出時刻の変化を見ていきます。
日本一初日の出が早い場所
冒頭で初日の出が日本一早いのは犬吠埼と書きましたが、もう一度日本一初日の出が早い場所を考えてみます。
まず、単純に東にある場所ほど日の出が早そうです。
日本最東端の南鳥島の初日の出の時刻はなんと05:27です。
もちろん、一般人が近くに行けるような場所ではないので、あまり実感のない時刻です。
一般人が行ける最東端は北海道最東端の納沙布岬(初日の出時刻06:49)になります。
別の角度で考えると、標高が高い場所のほうが遠くまで見渡せるので、初日の出が早くなりそうです。
これはその通りで、富士山の山頂(標高3,776m)の初日の出時刻は06:42となり、なんと犬吠埼(06:46)より早い時刻です。
冒頭で犬吠埼が日本一早いと書きましたが、正確には本州一早いわけでもありません。
しかし、真冬の富士山はエベレストより登頂が難しいと言われる危険な山ですので、富士山の山頂から初日の出を見るのは現実的ではありません。
一般人が行ける最東端の納沙布岬(06:49)よりも犬吠埼(06:46)の方が初日の出の時刻が早いので、やはり一般人が行ける平地で日本一早い初日の出は犬吠埼になります。
日の出時刻の季節変化
日の出時刻は夏が早く冬が遅いのは全国共通ですが、地点ごとの時刻を比べてみると、夏と冬で大きく変わります。
次の図は、2023/1/1の日の出時刻地図です。
この地図では、日の出時刻が同じ場所を線で結んでいます。
冬なので太陽は南東側に位置し、南東に行くほど日の出時刻が早くなります。
北海道最東端の納沙布岬(根室市)にかかる06:50の線を関東まで見ていくと、ちょうど東京都心や千葉市のあたりにかかります。
このため、それより南東側に位置する犬吠埼の方が初日の出が若干早くなります。
ちなみに、房総半島が南東に膨らんでいる千葉県勝浦市の初日の出時刻は06:47となり、犬吠埼(06:46)にわずか1分およばず日本一を逃しています。
このように、地形的に最も南東側に突き出ているのが犬吠埼なので、犬吠埼で日本一早い初日の出を拝むことができます。
実は、1月1日は一年の中で冬至(12月22日)に非常に近いため、日の出時刻の分布はかなり極端です。
犬吠埼の方が納沙布岬よりも日の出時刻が早いのは、2022年11月28日から2023年1月15日までの約1.5ヶ月間だけで、他の時期は納沙布岬の方が早く日の出を迎えます。
次の図は、昼と夜が12時間ずつになる春分(2023年3月21日)の日の出時刻地図です。
春分では、同じ経度ではほぼ同じ日の出時刻になるため、東に行くほど日の出時刻が早くなります。
初日の出は日本一早かった犬吠埼の日の出時刻は05:39であるのに対し、北海道最東端の納沙布岬は05:20です。
さらに、夏至になると北東側の日の出が早くなるので、さらに日の出時刻に大きな差が生じます。
北海道の北東端の知床岬の日の出が最も早く03:34で、次いで納沙布岬が03:36です。
知床岬の方が早いですが、知床半島先端部は道路もない場所なので、一般人が行ける場所としては、やはり納沙布岬が一番早くなります。
犬吠埼は04:21で、納沙布岬から45分ほど遅れます。
ちなみに、最西端の与那国島(沖縄県与那国町)では、日の出が06:00となり、日本国内で日の出時刻に2時間半もの差が発生します。
もし、夏至付近に1月1日があった場合、北海道ではすっかり初日の出が出ているのに沖縄ではまだ暗いということになります。
これでは、沖縄の人は真っ暗な空のもとテレビ中継で初日の出を見ることになってしまうところでした。
冬至付近では国内の日の出時刻の差が小さくなり、1月1日ではわずか46分ほどの差しかありません(犬吠埼06:46に対し、最も日の出が遅い与那国島(沖縄県与那国町)でも07:32)
初日の出は、どこに住んでいても同じようなタイミングで日の出を見られるベストシーズンにあたります。
参考文献
こよみ計算 国立天文台 2022/12/22閲覧