河川や湖沼、地下水など陸地に囲まれた水を陸水といいます。
陸水は地下水と河川や湖沼などの地表水に分けられます。
ここでは、陸水を地下水と地表水に分けて解説します。
目次
地下水とその構造
地下水とは、地表より下に存在する水の総称です。
上の図は、地下水と地下構造について示したものです。
降水によって地表にもたらされた水の一部は地下に浸透し、地下水となります。
地層には水を通しやすい透水層(帯水層、粒子が大きい砂礫や水に溶ける石灰岩)と水を通しづらい不透水層(正確には難透水層、粒子が小さい粘土や泥炭)があります。
上図では、青色の1,5,6が透水層で、茶色の2が不透水層です。
地表から浸透した地下水は、地表付近の空気が含まれる不飽和層(通気層、上図3)を通り抜け、透水層(帯水層)にたまります。
透水層の下には不透水層(上図2)があるため、水は透水層よりも下に行くことができません。
透水層は2種類に分けられ、地表との間に不飽和層(通気層)しかない自由地下水(上図6)と不透水層にはさまれた被圧地下水(上図5)があります。
自由地下水
自由地下水は地表と一番浅い不透水層の間にたまった地下水です。
地表から近いため入手しやすく、古くから利用され、乾燥地域など地表に水が少ない場所では重宝されてきました。
自由地下水を利用した井戸を浅井戸(上図8)といいます。
井戸をつくるために地中を掘削すると、自由地下水は圧力がかかっていないため自噴せずに地下水面として現れます。
自由地下水は地表に近いため、地表の環境変化の影響をうけやすく、周囲の環境によって水量や水質が変化します。
自由地下水の例として、扇状地の扇央付近の伏流水や砂漠の水無川の下に存在する地下水などがあります。
宙水
局所的な不透水層に囲まれた小規模な自由地下水の場合は宙水(ちゅうすい、ちゅうみず)といいます。
洪積台地では自由地下水の地下水面が深いため、比較的浅い宙水が得られる場所に集落がでみられます。
被圧地下水
被圧地下水は、上下を不透水層にはさまれた透水層にたまった地下水です。
被圧地下水はその名の通り圧力がかかっているため、井戸をつくるために掘削すると圧力によって水が噴出します。
被圧地下水を入手するために不透水層を貫通した井戸を深井戸(掘り抜き井戸)といいます。
被圧地下水を入手するためには不透水層の硬い岩盤を貫通する必要があります。
そのため、取水するのは技術的・費用的に大変ですが、水質や水量が安定していることから灌漑(かんがい)などの農業用水や工業用水として利用されています。
化石水
地層が堆積したときに封じこめられ、数万年以上にわたって水の循環から切り離された水を化石水といいます。
たとえば、ロッキー山脈の東側のグレートプレーンズ(アメリカ)の地下水であるオガララ帯水層の大部分は、氷期に蓄えられた地下水です。
グレートプレーンズは栄養分の多い肥沃な土壌ですが、乾燥した気候(ステップ気候)のため地表に水が少なく、地下水をくみあげて灌漑(かんがい)農業を行っています。
自噴井
地下水が掘削によらず地表へ吹き出す井戸を自噴井(じふんせい)または鑽井(さんせい)といいます。
次の図は、自噴井の模式図です。
盆地と周囲の高台に地表面に沿うように地層が広がる場合、透水層の一部が盆地底部よりも高い場所に存在する場合があります。
この場合、盆地底部の地下では水圧が大きくなり、地中の圧力が弱いところを通って地上に自然に噴出することがあります。
これを自噴井(鑽井)といい、自噴井が多数みられる盆地を鑽井盆地といいます。
鑽井盆地として有名なのは、世界最大の鑽井盆地であるグレートアーテジアン盆地(大鑽井盆地、オーストラリア)です。
グレートアーテジアン盆地は、オーストラリア内陸部の乾燥地域に広がる鑽井盆地です。
この地域では自噴井は貴重な淡水ですが、自噴井の塩分濃度が高く農業には不向きなので牧畜が行われています。
地表水
河川や湖沼などの陸地の表面にある水を地表水といいます。
地表水は降水によって得られた水のうち、地下に浸透した水と蒸発で失われた水以外の地表にとどまっている水です。
地表で最も利用しやすい重要な水資源ですが、地表水の大部分は氷河などの氷雪で、湖沼や河川は地球上の淡水の0.2%に過ぎません。
ここでは、河川水と湖沼の分類についてまとめます。
河川水と河況係数
河川を流れる水を河川水といいます。
河川の水の一部は河床(かしょう、川の底)へもぐって伏流水になり、再び地表に湧水して戻ることもあります。
河川水は農業用水や工業用水、生活用水として利用されるだけではなく、水運にも利用されます。
このような河川水の利用には、川の水の流量が安定して季節変動が少ないことが重要になります。
しかし、河川によっては季節変動が激しく、極端な例では降水時にのみ水が流れる砂漠のワジがあります。
日本のようなに傾斜が急な国土では、山の源流部から河口までの距離が短いが高度差が大きく(河川勾配が急)、河川の流量が上流での降水量に影響されて水量が安定しません。
一方、大陸内陸部の安定陸塊や傾斜のゆるやか山地を流れる河川は、源流部から河口までの距離が長く、河川の流量の変化がゆるやかで水量が安定しています。
以上のような川の水量の変化を示す指標として河況係数(かきょうけいすう)があります。
河況係数は、ある地点の川の流量の年間最大値と最小値の比で表されます。
河況係数が1に近いほど流量の変化が少なく、「河況が良好である」と表現されます。
砂漠のワジなど最小流量が0の場合は河況係数は∞(無限大)になります。
また、河況係数は同じ川でも上流の山間部では大きな値になり、河口では小さな値になります。
たとえば、コロラド川(アメリカ南西部~メキシコ)の河況係数を例にとると、上流のグランドキャニオンでは181、河口に近いアメリカ・メキシコ国境付近では46となります。
日本の河川の河況係数は大きく、一般に100-400程度になります。
モンスーンによる降水量の季節変動や上流の積雪の雪解けなども河況係数を大きくする要因です。
河況係数の例として、テムズ川(ロンドン)では8ぐらい、セーヌ川(パリ)では34、淀川(大阪府枚方市)67、北上川(宮城県登米市)223となります。
河況係数が1に近く、水量が安定している河川は内陸水路として水運に利用されます。
ヨーロッパでは河況係数が小さい河川が多いため水運が発達し、外国籍の船舶が自由に航行できる国際河川が発達しています(例:ライン川:スイス~ドイツ~オランダ)。
河川を水運として利用するためには河況係数だけではなく河川勾配も重要です。
アフリカ大陸では、河川の下流に急勾配や滝が存在するため、その区間で航路が分断されている大河川が多くあります(例:コンゴ川)。
湖沼の種類
陸地上の凹地に水がたまった地形を湖や沼、池などとよびます。
ここでは湖の種類を成因別に紹介します。
構造湖・断層湖・地溝湖
断層や褶曲(しゅうきょく)などの地殻変動によって生じた湖を構造湖といいます。
構造湖の中でも、断層運動によって地表の一部が落ち込んだ断層盆地に水がたまった湖を断層湖といいます。
断層湖は断層に沿ってできるため細長い地形をしていて、湖の底は深い溝ができて水深が深くなる場合もあります。
断層湖(地溝湖)の例として、世界一水深が深いバイカル湖(ロシア)、アフリカ大地溝帯沿いのタンガニーカ湖(タンザニア・コンゴ民主共和国等)やマラウイ湖(マラウイ等)、死海(イスラエル・ヨルダン)があります。
日本では琵琶湖(滋賀)や諏訪湖(長野)などが断層湖です。
海跡湖
かつて海だった場所が外海から切り離されて湖沼化したものを海跡湖(かいせきこ)といいます。
海跡湖ができる要因にはいろいろあり、陸地の隆起などで切り離されたものや、沿岸流によって砂州が発達してできた潟湖(せきこ)、サンゴ礁によって外海から切り離された礁湖(しょうこ)などがあります。
同様に河川の一部が河川本体から切り離されてできた湖を河跡湖(三日月湖)といいます。
堰止湖
水の流れが何らかの要因でせき止められてできた湖を堰止湖(せきとめこ)といいます。
水の流れをせきとめる要因には次のようなものがあります。
・火山活動による火山噴出物の堆積(例:阿寒湖(北海道)、富士五湖(山梨))
・土砂崩れによる土砂の堆積
・河川堆積物によるもの(例:印旛沼や手賀沼(千葉))
・モレーンによるもの(氷河湖)
火山湖
火山活動によって生じた湖を火山湖といいます。
火山湖には火山噴出物による堰止湖や火口の凹地ににできたカルデラ湖があります。
参考文献
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井戸の種類について | 浅井戸と深井戸の違い コラム ネクストプラン 2021/1/31閲覧
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堰止湖とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説、日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/1/31閲覧