地球の自転と公転は、気温の季節変化や大気の循環などに大きな影響を与え、高校地理で学ぶ様々な事象の根源となる現象です。
このページでは、地球の自転と公転について解説します。
地球
地球は太陽の周囲を周回する惑星です。
地理で学ぶ様々な現象(雨・雪・風など)や人間の営み(都市の形成、文化、農業)は地球という星の環境を前提に成り立っています。
たとえば、地球が自ら回転すること(自転)で風が発生し、海風は陸地に水蒸気を運んで雨を降らせ、陸地で降った雨は川を流れて近くの農地の農業用水に利用されます。
そこでこのページでは、地理の前提となる地球という惑星の天体(星)としての現象に注目して解説していきます。
地球の自転
地球の自転とは、北極と南極を結んだ直線(地軸)を回転軸(自転軸)として、おおよそ24時間で地球が1回転する現象のことを指します。
地球は同じ速度で自転を行っているため、地表が太陽側にあるときに昼となり、太陽と反対側に位置するときは夜となります。
地球は西から東へ自転しているため、地表から見ると太陽は東から上り西へ沈むように見えます。
地球の自転は地表の環境にも大きな影響を与えています。
昼は降り注ぐ太陽光のエネルギーによって地表の気温は上昇し、夜になると熱が宇宙空間に逃げて気温が低下します。
砂漠ではこのような1日の中での気温の変化が特に大きく、過酷な気候を作り出しています。
また、熱帯地域では、朝に太陽光に熱せされて上昇した水蒸気が雲を作り、夕方に雨となって地表に降るサイクルを繰り返します(スコール)。
このように天体としての地球の運動は、地表の気候などに大きな影響を与え、地理で学ぶ様々な現象の根源となっています。
地軸(自転軸)の傾き
太陽から見ると地球の自転軸(地軸)は23.4°傾いています。
このため、季節によって地表と太陽の位置関係が変わり、地表が太陽から地表が受け取る太陽光の量(日射量)が変わります(詳細は下のコラム「季節によって変わる日射量が気温に影響」を参照)。
この違いが季節による気温差を生み出し、日本などの中緯度地域では四季が見られます。
もし地軸が傾いていないと(上図で公転軸に垂直な面=地軸だったとしたら)、日本でも季節による気温の変化が発生せず、ずっと同じような気候が続くと考えられます。
地表から見た太陽の位置は1年間で周期的に変化します。
3月下旬(春分、しゅんぶん)と9月下旬(秋分、しゅうぶん)には、太陽は赤道の真上に位置し、赤道付近の日射量が最も多くなります(実際には気候(降水量=雲量)などの影響で日射量は変わりますが、幾何学的にはこのようになります)。
4月から9月にかけては太陽は北半球側に動き、反対に10月から翌年の3月にかけては南半球側に動きます。
太陽が最も北側に位置する6月下旬(夏至、げし)には太陽は北回帰線(北緯23°26')の真上に位置します。
逆に太陽が最も南側に位置する12月下旬(冬至、とうじ)には太陽は南回帰線(南緯23°26')の真上まで動きます。
北半球の大部分では6月下旬(夏至)に日射量が最大となり、反対に12月下旬(冬至)に日射量が最低となります。
このため、北半球では日射量が多い6月前後が夏となり、反対に日射量が少ない12月前後が冬となります。
南半球はその逆です。
ちなみに日本で最も暑い時期(8月頃)や最も寒い時期(1月頃)が夏至や冬至から若干遅れるのは、海や陸地が暖まったり冷えるのにタイムラグが有るためです。
以上のように、地球の自転軸の傾きの影響で太陽との位置関係が周期的に変化して寒暖差が発生し、季節が移り変わります。
参考
季節によって変わる日射量が気温に影響
夏に日差しが強く気温が高い一方、冬に日差しが弱く低温なのは、季節によって日射量が変わるからです。
次の模式図は、太陽光が地球に当たる際の幾何学的・物理的特性を示したものです。
(a) 高緯度地域では、太陽光(日射)に対して地面が斜めに広がるため、太陽光が広い面積に分散して当たります。
地表から見ると、地平線からの太陽の高さ(太陽高度)は低く、太陽が真南に来たときの高度(南中高度)も低くなります。
その結果、同じ面積が受け取るエネルギー量が少なく、気温が下がりやすくなります。
また、地球上から見ると太陽光が斜めから入ってくるため、大気中を通る距離が長くなり、エネルギーが減衰して地表に届くエネルギー量が少なくなります。
(b) 赤道付近では、太陽光は地面に正面から当たるため、狭い面積に多くの太陽光が届きます。
地表から見ると、地平線からの太陽の高さ(太陽高度)も高くなり、太陽が真南に来たときの高度(南中高度)も高くなります。
そのため、面積あたりのエネルギー量が大きくなり、気温が上がりやすくなります。
地球から見ると真上から太陽光が入ってくるため、大気中を通る距離が短くて済むため、エネルギーの減衰が少なく地表に届くエネルギー量も多くなります。
地球の自転軸(地軸)は傾いているため、(b) の位置は一定ではありません。
夏至(6月下旬)には (b) は北回帰線(北緯23°26')上に位置するため、北半球は (b) に近い位置関係となり、太陽から受け取るエネルギーが大きいため気温が上昇します。
反対に冬至(12月下旬)には (b) は南回帰線(南緯23°26')上に位置し、北半球は (a) に近い位置関係となり、太陽から届くエネルギーが少なく気温が低下します。
以上のように、自転軸の傾きが季節によって太陽から受け取るエネルギー量の差を生み出し、気温の変化を引き起こしています。
地球の公転
地球の公転とは、地球が太陽の周りを約1年で1周する現象のことです。
地球の自転軸(地軸)が傾いているため、季節によって太陽との位置関係が変わります。
その結果、季節によって気温が上下し、日本では四季を作り出しています。
参考
地球の公転周期と暦の1年
地球の公転周期は365.2422日(365日5時間48分46秒)です。
1年が365日であることから、4年に1日の割合で閏日(うるうび、2月29日)を挿入し、地球の公転周期と暦上の1年を合わせる工夫がなされています(ユリウス暦、紀元前45年に共和政ローマで導入)。
しかし、地球の公転周期は365.2422日であるため、4年に1日(1年に0.25日)の割合で閏日を挿入すると、1年あたり0.0078日ずつ公転周期からずれてしまいます。
このわずかなずれが長い歴史の中で積み重なり、1,000年あたり約7.8日ずれていきました。
その結果、16世紀のヨーロッパでは、キリスト教の宗教行事の1つである復活祭(春分日を基準に日付を決定)をいつ祝うのかという問題が発生しました。
そこでローマ教皇グレゴリウス13世は1582年に新しい暦を導入しました(グレゴリオ暦)。
グレゴリオ暦では、4年に1回閏日(2月29日)を加えるのを原則としながらも、400年に3回閏日を入れない(=閏年を平年とする)年を作ることで、公転周期とのずれを小さくしています。
グレゴリオ暦では、4で割り切れる年に閏日を入れます(2020年、2024年、2028年…)。
しかし、4で割り切れる年のうち、400で割り切れず100で割り切れる年に閏日を入れない(=閏年ではなく平年とする)ようにします。
具体的には、西暦1700年、1800年、1900年、2100年、2200年、2300年は平年であり、1600年、2000年、2400年は閏年となります。
このようして400年に(100回ではなく)97回の閏日を挿入することで、1年の日数は平均で365.2425日となり、地球の公転周期との差は0.0003日に短縮されます。
この結果、1000年で0.3日のずれにとどまり、地球の公転周期と暦上の1年の差を大幅に減らしました。
グレゴリオ暦は実用性の高さから現在でも世界各地で使用されています。
関連記事
参考緯度と経度(重要な緯線と経線)
続きを見る
参考地球平面説と地球球体説(地球の形の議論の歴史)
続きを見る
参考大気大循環(ハドレー循環・極循環・フェレル循環)
続きを見る
参考恒常風のしくみ(貿易風・偏西風・極偏東風)
続きを見る
参考文献
地理用語研究会編「地理用語集」山川出版社(2024)
Earth's rotation, Wikipedia 2024/4/9閲覧
地球(チキュウ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2024/4/9閲覧
自転(じてん)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2024/4/9閲覧
歳差ってなに? 国立天文台(NAOJ) 2024/4/9閲覧
季節がある理由についてわかりやすく Star Walk 2 2024/10/23閲覧
暦Wiki/季節/季節はなぜ変化するのか? 国立天文台 2024/10/23閲覧
Season, Wikipedia 2024/10/23閲覧
回帰線(かいきせん)とは? コトバンク デジタル大辞泉、日本大百科全書(ニッポニカ) 2024/10/23閲覧
Effect of Sun angle on climate, Wikipedia 2024/10/23閲覧
夏至に一番暑くならない理由 永野裕之のBlog 2024/4/9閲覧
本日3月21日は「春分の日」その意味とは?(2018年3月21日) 浅田英夫の星の歳時記 中日新聞 2024/4/10閲覧
Earth's orbit, Wikipedia 2024/4/10閲覧
Orbital period, Wikipedia 2024/4/10閲覧
うるう年とうるう秒について セイコーミュージアム銀座 2024/4/10閲覧
グレゴリオ暦 ウィキペディア 2024/4/10閲覧