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等角航路と大圏航路

地図投影法と密接に関連する船舶の航海ルート(航路)として等角航路と大圏航路という概念があります。
等角航路メルカトル図法の地図を片手に15-17世紀の大航海時代の外洋航海で使われた航路であり、大圏航路は地球上の最短距離を結ぶ航海ルート(航路)です。
このページでは、等角航路と大圏航路についてそれぞれ解説します。

等角航路と大圏航路

大圏航路(大圏コース)は地球上の実際の最短距離を結ぶ航路(ルート)であるのに対し、等角航路(等角コース)メルカトル図法の地図上で二点間を結んだ直線上を通る航路(ルート)です。
そのため、等角航路は大圏航路よりも遠回りになります。
歴史の長い間、目印がない大海原で現在位置を特定するのは難しかったため、遠回りであっても船が進む方角を固定すれば確実に目的地へたどり着ける等角航路が利用されてきました。
現在では、科学技術の発達により大圏航路の利用が一般的です。

以下では、等角航路と大圏航路について順に解説します。

等角航路

等角航路のイメージ。等角航路とは、地球上で方位を一定にしながら進むこと航路である。メルカトル図法の地図上で二地点間を直線で結んだ航路に相当する。緯度と経度がわかれば、メルカトル図法の地図を元に方位を一定に保つだけで確実に目的地にたどり着くことができる。現実には二地点間の最短経路ではないが、現在地の把握が困難な大航海時代(15-17世紀)には航海の安全性を高める航法であった。出典:Wikimedia Commons, ©Alvesgaspar, CC BY-SA 2.5, 2024/5/9閲覧

等角航路(等角コース)は、地表を移動する際に経線や緯線との角度を一定に保ちながら進む航路です。
等角航路は地球上の二点間を結ぶ経路としては遠回りですが、羅針盤(方位磁針)を使って船が進む方角を一定方向に保ちながら航海することで確実に目的地に到達できます。

羅針盤は11世紀の中国で実用化され、12世紀終わりには地中海の航海でも使われるようになりました。
それに合わせて羅針盤を用いた航海に使うための地図が発明されました。
13世紀には羅針盤での航海用に方角を示す補助線を引いたポルトラノ海図が用いられ、16世紀には正角図法の一種であるメルカトル図法が使われるようになりました。
メルカトル図法では、地図上で出発地から目的地へ引いた直線が等角航路になります。

昔は何も目印がない大海原で現在位置を把握するのは困難であり、広大な外洋の航海は遭難と隣合わせでした。
そこで、メルカトル図法で作成された地図を元に出発地から目的地への方角を確認し、航海中はひたすら目的地の方角へ進み続けることで目的地へ向かいます。
等角航路は最短経路ではありませんが、現在位置の把握すら困難な時代には、現在位置がわからなくなっても羅針盤で船の進行方向さえ一定に保ち続ければ遭難せずに確実に目的地へたどり着ける点が画期的であり、15-17世紀の大航海時代の航海で広く利用されました。

大圏航路

球体表面に描かれた大圏航路(大圏コース)。大圏航路は地球表面を移動する最短経路であり、地形の制約を受けない航空航路に使われている。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/7/16閲覧

大圏航路(たいけんこうろ、大圏コース)は、地球上を移動する際に地表面での二点間の最短経路を通る航路です。
正距方位図法の地図では中心点からの大圏航路が直線になります。
メルカトル図法の地図では高緯度地域が引き伸ばされているため、高緯度地域を通る大圏航路を描くとカーブを描きます。
極方向ほど大きく引き伸ばされているため、大圏航路を描くと北半球では北極点側、南半球では南極点側にカーブします。
ただし、メルカトル図法の地図であっても、二点間の距離が近すぎる場合や遠距離であっても赤道付近では二点間の大圏航路はほぼ直線になります。

大圏航路は地形の影響を受けづらい航空機の航路に利用されるほか、現代では外洋の航海には大圏航路が利用されます。
現代では科学技術の発達により大圏航路をたどることも容易になっているため、船舶も燃料節約のために大圏航路で航海を行います。

東京とサンフランシスコ(米国西部・カリフォルニア州)の間の航空機の航路。航空機の航路は燃料を節約するために最短経路にあたる大圏航路を使用するのが一般的である。しかし、日本とアメリカ西海岸の間の上空にはジェット気流とよばれる強い偏西風が吹いている。そのため、東京からサンフランシスコへ向かう際はジェット気流を利用することで遠回りにも関わらず所要時間短縮と燃料節約をすることができる。一方、サンフランシスコから東京へ向かう際は最短距離である大圏航路を利用する。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/7/16閲覧

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参考正距方位図法

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参考文献

地球上と地図上の最短距離 国土地理院 2024/7/16閲覧
地理用語研究会編「地理用語集」山川出版社(2024)
羅針盤(ラシンバン)とは? コトバンク 改訂新版 世界大百科事典 2024/5/18閲覧
History of the compass, Wikipedia 2024/5/18閲覧
メルカトル図法(メルカトルズホウ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2024/5/9閲覧
Rhumb line, Wikipedia 2024/5/9閲覧
大圏航路(タイケンコウロ)とは? コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2024/7/16閲覧

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