大陸プレート同士がぶつかり合う狭まる境界(収束境界)を衝突帯とよびます。
衝突帯では、2つのプレートがぶつかり合うことで山脈が形成されます。
このページでは衝突帯とその地形(褶曲と褶曲山脈、背斜と向斜、逆断層)について解説します。
【プレートテクトニクス:広がる境界(海洋・大陸)・狭まる境界(沈み込み帯(地形)・衝突帯)・ずれる境界】
衝突帯とは
衝突帯とは、大陸プレート同士がぶつかり合う狭まる境界(収束境界)です。
低密度で軽い大陸プレート同士がぶつかると、片方のプレートがもう片方のプレートに乗り上げます。
その際、乗り上げたプレートは横から強い力を受けて変形して波を打つように湾曲して地面が隆起したり(褶曲(しゅうきょく))、断層ができて断層面をずり上がるように隆起します。
このように、衝突帯では地面を隆起させる力が働くため、大規模な山脈が形成されます。
褶曲によってできた山脈を褶曲山脈といい、断層運動による隆起の繰り返しで形成された山地を断層山地といいます。
実際には複数の作用が組み合わさって隆起している場合も多いです。
上図では、左側のプレートの上に右側のプレートが乗り上げてプレート境界付近に山脈が形成されています。
代表的な衝突帯としては、ヒマラヤ山脈(中国・インドなど)があります。
ヒマラヤ山脈は、南側のインドプレート(インド=オーストラリアプレート)の上に北側のユーラシアプレートが乗り上げる狭まる境界(衝突帯)です。
他には、ザグロス山脈(イラン)や北アフリカのアトラス山脈(モロッコ~アルジェリア)も衝突帯であり、褶曲が多数見られます。
衝突帯は次の地図の紫色の線の部分です。
アルプス=ヒマラヤ造山帯の陸上部分に衝突帯が多く見られます。
ヒマラヤ山脈の形成
ヒマラヤ山脈は元々海の底であり、2つのプレートが衝突したことで隆起して8,000m級の山脈が形成されました。
南側の現在のインド側はインドプレート(インド=オーストラリアプレート)であり、ヒマラヤ山脈付近を境界に北側はユーラシアプレートです。
このため、昔はインドはユーラシア大陸の他地域とは別の独立した大陸(インド亜大陸)であり、ユーラシア大陸の間には海がありました。
しかし、2つのプレート境界は狭まる境界(収束境界)であったため、インド亜大陸はユーラシア大陸に向かって近づいていき、4,000-5,000万年前に2つの大陸が衝突しました。
衝突の結果、インド亜大陸とユーラシア大陸の間にあった海は隆起して陸地となり、さらに押し上げられて急速に隆起し、現在のヒマラヤ山脈が形成されました。
ユーラシアプレートはインドプレートの上に乗り上げるような形になっているため、かつて間にあった海の下に堆積していた地層は、隆起してヒマラヤ山脈の一部となっています。
そのため、ヒマラヤ山脈では最高峰のエベレスト(チョモランマ、8,848m)の山頂付近でも昔の海洋生物(アンモナイトなど)の化石が見つかります。
衝突帯の地形
ここからは、狭まる境界の衝突帯で見られる地形として、褶曲、背斜、褶曲山脈、断層について順にふれていきます。
褶曲(しゅうきょく)と褶曲山脈
褶曲(しゅうきょく)とは、元々平らに堆積していた地層が力を受けて湾曲するように変形した構造です。
褶曲は様々な場所に見られますが、狭まる境界(収束境界)の衝突帯にも褶曲が多数見られます。
衝突帯では片方のプレートがもう片方のプレートに乗り上げますが、乗り上げたプレートは横から強い力を受けて褶曲が多数見られます。
衝突帯では褶曲によって地面は隆起し、褶曲山脈とよばれる山脈が形成されます。
褶曲や褶曲山脈は、アルプス=ヒマラヤ造山帯に属する山脈に多数見られます。
褶曲が多数見られる例としては、狭まる境界(衝突帯)に位置するヒマラヤ山脈(中国・インド他)、ザグロス山脈(イラン)、アトラス山脈(モロッコ~アルジェリア)などがあります。
褶曲山脈の例としては、ヒマラヤ山脈やアルプス山脈(スイス・イタリア他)などがあります。
これらの山脈は狭まる境界周辺に位置し、現在も活発に造山運動が行われている場所(変動帯)です。
2つのプレートの境界付近では、双方のプレートから強い力が働いて褶曲や断層(逆断層)が発生した結果、隆起して褶曲山脈となっています。
背斜(はいしゃ)と向斜(こうしゃ)
褶曲により変形した地層では、波を打つように山と谷が交互に繰り返す構造になっており、褶曲の山の部分を背斜(はいしゃ、上図2)、褶曲の谷の部分を向斜(こうしゃ、上図3)といいます。
山の部分(背斜)には気体や液体などがたまっており、資源開発に重要な場所です。
地層の中に気体や液体が含まれていると固体よりも軽いため上へ押し出されてきます。
しかし、堆積している上側の地層の中に水を通さない不透水層があると、その地層の手前(下側)に気体や液体がたまっていきます。
通常の地層は平らに積み重なっているため、気体や液体は薄く広がっていますが、褶曲している場合は山の部分(背斜)に気体や液体が集まっていきます。
そのため、山の部分(背斜)の不透水層のすぐ下に気体や液体がたまっていきます。
地層の中に微生物の遺骸が堆積した場所があると、高温高圧環境下で有機物が変質していき原油が生成されます。
原油は液体で岩石よりも軽いため、上の方に上がっていき、不透水層の下側にたまります。
この際、地層が褶曲していると、山の部分(背斜)に原油が集まっていき、1箇所から大量の原油がたまっている場所ができあがります。
このため、資源開発において背斜構造の部分を掘り当てると、被圧地下水のように原油が地表まで噴出して採取できます。
逆断層
大陸プレート同士がぶつかり合う狭まる境界(収束境界)である衝突帯では、横から強い力を受けてできた断層(逆断層)が多数見られます。
断層の片側は横からの力で断層面をずり上がるように隆起します。
衝突帯ではプレート同士がぶつかり合い続けるため、何度も断層運動による隆起が繰り返されます。
このように隆起を繰り返して標高が高くなった山地を断層山地とよびます。
ヒマラヤ山脈は褶曲山脈でもありますが、褶曲だけで標高が高くなったのではなく、断層運動による隆起の効果もあります。
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