気候 系統地理

エルニーニョ現象とラニーニャ現象

深海からの湧昇流が存在するペルー沖の貿易風の強さが変化すると、海流を通して世界規模で気象に影響をもたらします。
このページでは、ペルー沖の海流に起因して世界規模で異常気象が発生するエルニーニョ現象とラニーニャ現象について解説します。

エルニーニョとラニーニャ

(左)エルニーニョ現象発生時(1997年11月)と(右)ラニーニャ現象発生時(1988年12月)の太平洋域の海水温。海水温の平年値を基準として、平年より水温が高い場合は赤色、低い場合は青色で色分けを行っている。 出典:エルニーニョ/ラニーニャ現象とは「図1 1997年11月の月平均海面水温平年偏差(左)及び、1988年12月の月平均海面水温平年偏差(右)」 気象庁、2026/7/18閲覧

エルニーニョ現象とラニーニャ現象は、東太平洋の赤道付近の緯度帯(日付変更線付近から南米のペルー沖にかけて)で、海水温が平年とは異なる状態が継続する現象です。
太平洋の赤道付近の緯度帯で平年より海水温が高い状態が継続する現象をエルニーニョ現象と呼び、反対に平年より海水温が低い状態が継続する現象をラニーニャ現象と呼びます。

以下では、平常時、エルニーニョ、ラニーニャ現象発生時の海流・海水温の状態と気象の関係について順に見ていきます。

東太平洋の海流・海水温と気象

大洋の東側(大陸西岸)の海洋の循環。偏西風に押されて東に進む海流(北太平洋海流と南太平洋海流)は、大陸に阻まれて低緯度側へ流れを変えて寒流となる(カリフォルニア海流とペルー海流)。赤道に近くなると、貿易風の影響により西向きに押されて向きを変え、大洋を横断する西向きの海流となる(北赤道海流と南赤道海流)。出典の一部を抜粋・加工して作成。出典:Wikimedia Commons, ©Chtototakoe, CC BY-SA 3.0, 2026/6/25閲覧

南米のペルーやエクアドル沿岸では、北上してきた寒流ペルー海流(フンボルト海流)が流れを変え、恒常風である南東貿易風に押されて西に流れます(南赤道海流)。
この海域では、高緯度側から流れてきた冷たい寒流が低緯度地域で温められながら、西方向に押し流されます。
南赤道海流によって東太平洋の低緯度地域の海水が西側に移動すると、空いた隙間を埋めるように、深海から冷たい海水が湧き上がる湧昇流が発生します。

このため、東太平洋の低緯度地域(ペルー沖)では、温められた海水は西に押し流され、寒流のペルー海流や冷たい湧昇流が埋め合わせるため、海水温が低くなります。
一方、西太平洋の低緯度側(インドネシア付近)では、東から温められた海水が押し寄せるため海水温が高くなります。

この結果、西側のインドネシアでは高い海水温の影響で上昇気流が発生して雨が多く、熱帯雨林が広がります。
一方、東側のエクアドルやペルーの沿岸部では、冷たい海水が大気を冷やすため下降気流が発生しやすく、高気圧に覆われて乾燥し、海岸砂漠が広がります。

エルニーニョ現象のメカニズム

平常時(左)とエルニーニョ現象発生時(右)の太平洋赤道域の海面の断面図。(平常時)南太平洋の低緯度に位置する南米のペルー沖では、北上してきた寒流のペルー海流(フンボルト海流)が貿易風に押されて進路を西に変えて南赤道海流となり、暖められながら太平洋を横断してインドネシア付近に達する。このような海流の影響で、ペルー沖では暖められた海水が西に流され、北上する寒流や深海から湧き上がる冷水が空いた場所を埋める。(エルニーニョ現象発生時)エルニーニョ現象が発生すると、南赤道海流を作り出す貿易風(東風)が弱まることで、暖かい海水が西に押されずに平年時より東側に拡大し、上昇気流が発生しやすい場所も東側に広がる。ペルー沖では深海からの湧昇流が抑制され、海水温は平年より0.5℃程度高い状態が半年以上続く。出典:エルニーニョ/ラニーニャ現象とは 気象庁 2026/7/23閲覧

エルニーニョ現象は、東太平洋の赤道付近の緯度帯(日付変更線付近から南米のペルー沖にかけて)で、海水温が平年より高い状態が継続する現象です。
何らかの要因でこの地域の南東貿易風が弱まると、赤道付近で温められた海水が押し出されずに同じ場所に留まり続け、平年より0.5℃程度海水温が高い状態が半年以上継続します。

ペルーやエクアドル沿岸では、寒流であるペルー海流(フンボルト海流)が毎年12月頃に弱くなるため、海水温が高くなります。
クリスマス頃におきるこの現象を、スペイン語の一般名詞で「男の子」、固有名詞としては「神の子(=イエス・キリスト)」を意味するエルニーニョと呼んでいました。

数年に一度、海水温が0.5℃程度高い状態が半年以上も継続します。
海水温の高温が長期間継続すると、地球規模の複雑な相互作用によって広範囲に影響が及び、南米沖だけではなく世界各地に異常気象をもたらします。
このため、異常気象の原因となる東太平洋の赤道付近で平年よりも海水温が高くなる現象をエルニーニョ現象といいます。

ペルー沖では通常、南から北上してきた寒流であるペルー海流が西向きに進路を変え、南東貿易風に押されて南赤道海流となり、日射が強い赤道域で暖められながら西に進み、南米大陸から離れていきます。
しかし、何らかの要因によって貿易風が弱まると、ペルー沖で暖められた温かい海水が同じ場所に留まり続けて、半年以上海水温が平年より0.5℃程度高くなるエルニーニョ現象が発生します。

この結果、西側(インドネシアなど)では東からの暖かい海水の供給が減るため降水量が減少し、干ばつや乾燥による森林火災が発生し、東側(ペルーなど)では、暖かい海水が留まることで上昇気流が発生して積乱雲が発達し、大雨や洪水に見舞われます。

ラニーニャ現象のメカニズム

平常時(左)とラニーニャ現象発生時(右)の太平洋赤道域の海面の断面図。(平常時)南太平洋の低緯度に位置する南米のペルー沖では、北上してきた寒流のペルー海流(フンボルト海流)が貿易風に押されて進路を西に変えて南赤道海流となり、暖められながら太平洋を横断してインドネシア付近に達する。このような海流の影響で、ペルー沖では暖められた海水が西に流され、北上する寒流や深海から湧き上がる冷水が空いた場所を埋める。(ラニーニャ現象発生時)ラニーニャ現象が発生すると、南赤道海流を作り出す貿易風(東風)が強まるために、暖かい海水がより強く西に押されて平年時より西側に押し込められ、上昇気流が発生しやすい場所も西側に広がる。ペルー沖では深海からの湧昇流が活発となり、ペルー沖では海水温が平年より0.5℃程度低い状態が半年以上継続する。出典を加工して作成。出典:エルニーニョ/ラニーニャ現象とは 気象庁 2026/7/23閲覧

ラニーニャ現象は、東太平洋の赤道付近の緯度帯(日付変更線付近から南米のペルー沖にかけて)で、海水温が平年より低い状態が継続する現象です。
何らかの要因でこの地域の南東貿易風が強まると、赤道付近で温められた海水を西側に押し出す力が強く働き、冷たい海水が引き込まれて、平年より0.5℃程度海水温が低い状態が半年以上継続します。

海水温が平年より高い状態が継続するエルニーニョ現象に対し、平年より低い状態が続く現象であるため、ラニーニャ現象と呼びます。
ラニーニャはスペイン語で「女の子」の意味で、エルニーニョ(男の子)の対義語としてラニーニャと名づけられました。

ラニーニャ現象では、貿易風(東風)が強まることで低緯度地域で暖められた海水を西側に押し流す力が強くなり、東側(ペルー沖)では空いた場所を埋めるために深海からの湧昇流が強まり、平年以上に海水温が低下します。
元々海水温が高い西側(インドネシアなど)がさらに高温になる一方、元々西側より海水温低い東側(ペルー沖)ではさらに海水温が下がるため、東西の海水温の差が平年以上に大きくなります。
この結果、西側(インドネシアなど)では活発な上昇気流により積乱雲が発達して大雨が頻発し、東側(ペルーなど)では、海水が地表の大気をより冷やして上昇気流を抑制し、平年以上に深刻な乾燥に見舞われます。

気象への影響

平常時(左)とエルニーニョ現象発生時(左下)、ラニーニャ現象発生時(右下)の太平洋赤道域の海面の断面図。(平常時)南太平洋の低緯度に位置する南米のペルー沖では、北上してきた寒流のペルー海流(フンボルト海流)が貿易風(東風)に押されて進路を西に変えて南赤道海流となり、暖められながら太平洋を横断してインドネシア付近に達する。このような海流の影響で、ペルー沖では暖められた海水が西に流され、北上する寒流や深海から湧き上がる冷水が空いた場所を埋める。貿易風(東風)の強さによって、暖かい海水が集まる場所が変化する。暖かい海水面の上空では上昇気流により積乱雲が発達するため大雨になるのに対し、積乱雲から遠い場所は乾燥する。このため、ラニーニャ現象発生時には暖かい海水が西側に集まりインドネシアやオーストラリアで大雨、東側のペルーで干ばつを引き起こす。一方、エルニーニョ現象発生時には、暖かい海水が東側に広がり、ペルーで大雨、西側のインドネシアやオーストラリアで干ばつを引き起こす。出典:エルニーニョ/ラニーニャ現象とは 気象庁 2026/7/23閲覧

エルニーニョ現象やラニーニャ現象が発生すると、直接海水温が変化した海域(ペルー沖)だけではなく、日本を含む広範囲で異常気象を引き起こします。
これは、エルニーニョ現象やラニーニャ現象が局所的な現象に留まらず、大気と海洋を巻き込んだ世界規模の複雑な気象現象であるためです。
このため、影響範囲が広範になり、遠く離れた場所で同じような気象現象が発生することがあります。
エルニーニョ/ラニーニャ現象発生時のように、遠隔地で相関する気象現象が発生する現象をテレコネクションと呼びます。

エルニーニョ現象とラニーニャ現象はどちらも災害を発生させますが、それぞれ発生場所と災害の種類が変わります。
エルニーニョ現象発生時には、暖かい海水を西に押す力が弱くなるため、暖かい海水が平年より東側まで広がり、上昇気流が発生して積乱雲が発達する場所も平年より東側に位置します。
積乱雲に近い東側の南米大陸西海岸(ペルーの海岸砂漠)では大雨や洪水が発生し、反対に積乱雲から遠いインドネシアやオーストラリアでは干ばつ(旱魃)や乾燥による森林火災が発生します。
また、エルニーニョ現象発生時には暖かい海水を西に押す力が弱くなるため、ペルー沖では深海からの湧昇流が弱くなり、深海から栄養塩が運ばれる量も減少し、栄養塩類をエサにするプランクトンが減少して、プランクトンをエサとするアンチョビ(カタクチイワシ)の不漁にもつながります。

一方でラニーニャ現象発生時には、暖かい海水を西に押す力が強くなるため、暖かい海水が平年よりも西側に強く押されます。
この結果、上昇気流が発生して積乱雲が発達する場所も平年より西側に動きます。
積乱雲に近いインドネシアやオーストラリアでは大雨や洪水が発生し、積乱雲から遠い南米大陸西海岸(ペルーなど)では平年以上に乾燥して深刻な干ばつにつながります。

日本付近への影響

エルニーニョ/ラニーニャ現象は、赤道付近と緯度30°付近の大気の循環(ハドレー循環)を通して、日本の天候にも影響を及ぼします。

積乱雲が発達する場所(緯度30°未満)の高緯度側(緯度30°付近)では、上昇した空気を地表に戻す下降気流が発生します。
この下降気流が活発に発生する場所が太平洋高気圧(日本付近では小笠原高気圧)です。
このため、エルニーニョ/ラニーニャ現象発生により上昇気流が活発な場所が東西にずれることで、緯度30°付近に広がる太平洋高気圧の位置(張り出し)に影響を及ぼします。

エルニーニョ現象発生時

エルニーニョ現象が日本の夏の天候に影響を及ぼすメカニズム。エルニーニョ現象発生時には、太平洋高気圧の張り出しが弱まることで、亜熱帯ジェット気流(偏西風)が南に蛇行し、オホーツク海高気圧(オホーツク海気団)の冷たく湿った空気が日本付近に流入して冷夏となる。出典:日本の天候へ影響を及ぼすメカニズム 気象庁 2026/7/25閲覧

エルニーニョ現象発生時には、上昇気流が活発な場所がにずれるため、太平洋高気圧にずれて日本付近への張り出しが弱くなります。
この結果、日本付近のジェット気流偏西風)が太平洋高気圧に押されずに平年より南に蛇行します。
平年であれば本州付近は南東からの暖かくて湿った太平洋高気圧に覆われて暑くなりますが、太平洋高気圧の張り出しが弱まることで、オホーツク海高気圧(オホーツク海気団)の冷たく湿った空気が流入して冷夏となります。

一方で冬季には、連鎖的な反応により日本付近のジェット気流偏西風)が平年より北側に蛇行します。
この結果、北から南下してきた寒気がジェット気流によって東に流されて本州付近に到達しづらくなり暖冬になります。
沖縄や奄美群島は低気圧の影響を受けやすく、降水量が増加します。

エルニーニョ現象が日本の冬の天候に影響を及ぼすメカニズム。冬季には日本付近のジェット気流(偏西風)が平年より北側に蛇行してシベリアからの寒気の流入を阻むため、本州付近は暖冬となる。出典:日本の天候へ影響を及ぼすメカニズム 気象庁 2026/7/25閲覧

ラニーニャ現象発生時

ラニーニャ現象が日本の夏の天候に影響を及ぼすメカニズム。ラニーニャ現象発生時には、太平洋高気圧の張り出しが強まることで、日本付近のジェット気流(偏西風)が北側に蛇行する。本州付近は平年以上に太平洋高気圧に覆われて猛暑となり、沖縄や奄美群島は湿った空気の流入で降水量が増加する。出典:日本の天候へ影響を及ぼすメカニズム 気象庁 2026/7/25閲覧

反対にラニーニャ現象発生時には、上昇気流が活発な場所が西にずれるため、フィリピン周辺で活発に積乱雲が発達します。
日本付近で下降気流が発生するため高気圧となり、太平洋高気圧の範囲が西に伸びて日本付近への張り出しが強くなります。
この結果、日本付近のジェット気流偏西風)が太平洋高気圧を避けて平年より北側に蛇行します。
本州付近は平年以上に太平洋高気圧に覆われて猛暑となり、沖縄や奄美群島は湿った空気が入りやすく、降水量が増加します。

一方で冬季には、フィリピン付近の上昇気流が広範囲に複雑な影響を及ぼし、日本付近のジェット気流偏西風)が平年より南側に蛇行します。
この結果、北西側のシベリア高気圧の張り出しが強くなり、大陸からの冷たい空気が日本付近に流入して大雪・厳冬になります。
大陸からの空気は冷たく乾燥していますが、日本海を越える際に水分を含んで湿った空気となり、日本海側を中心に大雪をもたらします。

ラニーニャ現象が日本の冬の天候に影響を及ぼすメカニズム。冬季には亜熱帯ジェット気流(偏西風)が日本付近で南側に蛇行し、シベリア高気圧の張り出しが強くなり、大陸からの冷たい空気が日本付近に流入して大雪・厳冬になる。出典:日本の天候へ影響を及ぼすメカニズム 気象庁 2026/7/25閲覧

参考文献

エルニーニョ/ラニーニャ現象とは 気象庁 2026/7/25閲覧
エルニーニョ現象(エルニーニョゲンショウ)とは? コトバンク デジタル大辞泉、共同通信ニュース用語解説、日本大百科全書(ニッポニカ) 2026/7/25閲覧
ラニーニャ現象(ラニーニャゲンショウ)とは? コトバンク デジタル大辞泉、日本大百科全書(ニッポニカ) 2026/7/15閲覧
エルニーニョ現象とは?ラニーニャ現象との違いや、世界の天候におよぼす影響について解説 -仕組み編- Beyond Our Planet NTT R&D Website 2026/7/81閲覧
テレコネクション(Teleconnection) 一般社団法人 電力技術協会 2026/7/18閲覧
日本の天候へ影響を及ぼすメカニズム 気象庁 2026/7/25閲覧

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