卓状地はかたい岩盤層とやわらかい地層が交互に堆積した地質構造をもつため、楯状地とは異なる侵食地形が見られます。
ここでは、卓状地で見られる大地形(構造平野)と小地形(メサ、ビュート、ケスタ)について紹介します。
卓状地と構造平野

先カンブリア時代の古い岩盤の上に古生代以降の堆積岩の地層が乗っている地質構造を卓状地(たくじょうち)と呼びます。
楯状地とは異なり、卓状地では古い岩盤が地表に露出しておらず、地表にあるのは水平な堆積岩の地層です。
このような地質構造のため、卓状地ではテーブル状の平坦地が広がります。
この平坦地は地質構造に起因して平坦になっているため、地形としては構造平野と呼ばれます。
卓状地では広大な平原や台地が広がっており、地形としては構造平野と呼ばれます。
構造平野は、平坦である理由が主に地質構造(卓状地であること)に起因する平野です。
地質構造に起因するため、河川の堆積作用に起因する沖積平野よりも大規模な平野になります。
かたい地層とやわらかい地層が積み重なった卓状地では、地層ごとのかたさに応じて侵食が進むスピードが変わるため、ケスタやメサ、ビュートといった侵食地形がみられます。
古い岩盤の平地が海面上昇で一度海に沈んで土砂が堆積した後に、海面低下で再び陸地になったものが卓状地です。
卓状地表面は海底で堆積した堆積岩の層がそのまま乗っているわけではなく、侵食によって削られて水平になったものです。
卓状地の例としては、ロシア卓状地(東ヨーロッパ平原、ロシア西部~東ヨーロッパ諸国)とシベリア卓状地(ロシア)がありあます。

卓状地の小地形
卓状地に広がる構造平野では、かたい岩盤層とやわらかい地層が交互に堆積しているため、侵食速度の違いにより特徴的な侵食地形が見られます。
以下では、構造平野で見られる小地形として、メサ、ビュート、ケスタについて紹介します。
メサ

メサは、周囲を急な崖で囲まれたテーブル状の地形です。
かたさが異なる地層が水平に重なっている場所では、上側のかたい層の侵食が進まず、逆に下側のやわらかい層が早く侵食が進むことでテーブル状の地形ができあがります。
元々水平に地層が堆積している場所であったため、テーブルの上面は平坦になっています。
かたさが異なる地層が堆積している卓状地では、メサがよく見られます。
参考

テーブルマウンテン
メサは頂上部が崖で囲まれた広い平坦地となっているのが特徴で、その形からテーブルマウンテンとよばれることもあります。
メサ自体もスペイン語でテーブルを意味するので、メサとテーブルマウンテンはほとんど同じ意味です。
ケープタウン(南アフリカ南西部)にあるテーブルマウンテンやギアナ高地(南米大陸北東部)のテプイが有名です。

ビュート

ビュートは、メサがさらに侵食が進んで塔状になった地形です。
やわらかい地層の上にかたい岩盤層が水平に堆積している場所では、侵食速度の差から下側の侵食が早く進んで台地状(テーブル状)の地形(メサ)ができあがります。
メサは台地状の地形ですが、侵食がさらに進むと塔状の地形になり、ビュートと呼ばれます。
メサとビュートの違いは、頂上の平坦部の幅と台の高さのどちらが大きいかによります。
平坦部の幅の方が大きい場合はメサ、台の高さの方が大きい場合はビュートです。

ケスタ

ケスタとは、かたい地層とやわらかい地層が交互に堆積している場所で、やわらかい地層が早く侵食されて形成された丘状の地形です。
地層がゆるやかに傾斜している場所では、下側のやわらかい地層が早く侵食される一方、上側のかたい岩盤は侵食が遅いため、上側の岩盤層が地表に突出したケスタ地形ができます。
ケスタでは、片側(上画像の左側)がかたい地層に沿ったゆるやかな斜面であるのに対し、もう片側(上画像の右側)はやわらかい地層が先に侵食されて失われたため形成された急崖(急斜面)になっています。
ケスタが見られる場所としては、パリ盆地(フランス北部)やロンドン盆地(英国イングランド南東部)や五大湖(米国北東部/カナダ中東部・オンタリオ州)周辺にもみられます。
次の模式図はケスタの地層と地表の地形の模式図です。
濃い色がかたい地層であり、薄い色がやわらかい地層です。

土地利用

ケスタの急斜面側は日当たりが良い上にやわらかい地層のため水はけが良いという特徴があります。
このため、ブドウをはじめとする果樹栽培に適しています。
パリ盆地(フランス北部)では、水はけがよいケスタの急斜面を利用してワイン用のブドウ栽培がおこなわれています。
パリ盆地東部のシャンパーニュ地方はシャンパンの語源にもなり、ワインの産地として有名です。
また、ケスタの急斜面は人間が移動するのが大変なので、いくつもの丘が線状に並ぶケスタは戦争における防衛線としても利用されます。
第二次世界大戦でフランスはドイツに対する防衛のため、パリ盆地のケスタ地形を使ってマジノ線とよばれる要塞線をつくりました。
参考

ケスタの急崖を落ちるナイアガラの滝
ナイアガラの滝(米国北東部・ニューヨーク州/カナダ中東部・オンタリオ州)は、ケスタ地形の急斜面の部分にできた滝です。
ケスタはやわらかい地層が露出している場所なので、滝へ落ちる水の流れで侵食が進み、滝の裏側が大きくえぐられています。
現在も侵食によって滝の位置が後退し続けているので、滝としての景観を保つために流水量を減らして侵食を遅くするとともに、余分な水を使って水力発電を行っています。
参考文献
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