乾燥地域である砂漠には特有の乾燥地形がみられます。
ここでは、乾燥地域でみられる地形について解説します。
砂漠
降水量よりも蒸発量の方が多いため、草木がほとんど生育せず、砂礫や岩石が露出している土地を砂漠といいます。
砂漠は乾燥して植物も少ないため、気温の一日の変化である日較差(にちかくさ)が大きいという特徴があります。
砂漠は気温の日較差が大きく、日光を遮るものがないため、温度変化と太陽光により物理的風化が激しく進行します。
砂漠には、地表に露出している砂礫の種類によって、岩石砂漠、礫砂漠、砂砂漠に分類できます。
岩石砂漠
地表が砂や礫に覆われずに、岩盤が地上に露出している砂漠を岩石砂漠といいます。
後述の礫砂漠とまとめて、地表が岩石や礫で覆われた砂漠を岩石砂漠ということもあります。
サハラ砂漠では岩石砂漠のことをハマダといいます。
礫(れき)砂漠を含む岩石砂漠は地球上の砂漠の80-90%を占めます。
礫砂漠
粒子の直径が2 mm以上の礫で地表が覆われた砂漠を礫砂漠といいます。
サハラ砂漠では礫砂漠のことをレグとよびます。
礫砂漠は岩石砂漠に含まれる場合もあります。
砂砂漠
直径2 mm以下の細かい粒子(砂)に覆われた砂漠を砂砂漠といいます。
サハラ砂漠では砂砂漠のことをエルグといいます。
砂砂漠は一般的な砂漠のイメージですが、世界の砂漠全体の10-20%を占めるにすぎず、大部分は岩石砂漠や礫砂漠です。
砂砂漠の砂は元々は別の場所で雨による侵食によって作られたものであり、川によって運搬・堆積したものが風によって吹き飛ばされて集まったものです。
そのため、砂砂漠は砂漠の中でもかなり例外的なものです。
砂砂漠の地表は直径2 mm以下の細かい粒子(砂)に覆われ、風によって運ばれて独特の模様(風紋)をつくります。
風に運ばれて砂が丘状に積み重なった砂丘を形成します。
砂丘は、乾燥帯以外の海岸沿いにも形成されることがあります(海岸砂丘)が、砂砂漠の中にも地形として砂丘が形成されます(砂漠砂丘)。
砂漠に広がる乾燥地形
砂漠には乾燥した気候に特有の地形が広がります。
大雨のときだけ水が流れるワジが見られ、湖は蒸発量が多いため塩分濃度が高くなります(塩湖)。
砂漠の大部分は水の入手が困難ですが、地下水や湖水が利用できるため緑が広がるオアシスが点在します。
オアシスでは水が利用できることから集落や農地が見られ、砂漠を横断する交易(キャラバン)の拠点となります。
以下では、ワジ、オアシス、塩湖、メサ、ビュートについて紹介します。
ワジ
普段は枯れていて大雨のときにしか水が流れない季節河川をワジといいます。
ワジは大雨が降ったときだけ水が流れ、普段は乾いた水無川です。
砂漠はほとんどの日は雨が振りませんが、雨が降るときは大量に降るという極端な気候です。
そのため、一度大雨が降るとワジに一気に雨水が集まり鉄砲水になることも多く、溺死者が出ることもあります。
一方で、ワジの地下の比較的浅い場所に水が流れているため井戸から水を入手することが可能であり、ワジに沿って集落が発達することがあります。
オアシス
砂漠で常に水が利用可能な場所をオアシスといいます。
オアシスは砂漠の中で例外的に緑が広がっている場所で、カイロ(エジプト)やダマスカス(シリア)など規模が大きいオアシスでは農業が可能です(オアシス農業)。
オアシスの水源は地下水や外来河川などです(詳細はこちらのページを参照)。
砂漠の外から流入する河川の大部分は、砂漠の中で消える末無川(すえなしがわ)になっています。
しかし、ナイル川やユーフラテス川とティグリス川のような大河川は海まで流れ、流域のエジプトやイラクでは大規模な農地や都市が広がります。
アメリカ合衆国中西部のグレートプレーンズでは、大量に存在する地下水(オガララ帯水層の化石水)を人工的にくみあげて利用した大規模な灌漑(かんがい)農地として開発されています(企業的農業)。
オアシスやその水源については、次のページで解説しています。
参考オアシスとその分類(泉性・山麓・外来河川・人工オアシス)
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塩湖
湖水中の塩分濃度が0.5%以上の湖を塩湖といいます。
砂漠などの乾燥気候では水の蒸発量が多いため、河川などの水の出口がない内陸湖ができます。
内陸湖では、水は蒸発によって流出していきますが、河川が運んできた塩分は蒸発しないため、食塩水を温めるように塩分濃度が濃縮されて、塩分濃度が高い塩湖になります。
死海(イスラエル・ヨルダン)やグレートソルト湖(米ユタ州、湖畔にソルトレイクシティが立地)は、海水よりも塩分濃度が高い湖です。
メサとビュート
卓状地に位置する乾燥地帯では、地層のかたい部分が侵食から取り残されて台状に残った地形であるメサやビュートがみられます。
台形の頂上の平坦部の幅の方が大きい場合はメサ、台の高さの方が大きい場合はビュートといいます。
メサやビュートは以下の記事で解説しています。
参考楯状地と卓状地の違い(地質構造と地形の対応)
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参考文献
砂漠とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、日本大百科全書(ニッポニカ) 2021/1/21閲覧
岩石砂漠とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、デジタル大辞泉 2021/1/21閲覧
ハマダとは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、日本大百科全書(ニッポニカ) 2021/1/21閲覧
礫砂漠とは コトバンク デジタル大辞泉 2021/1/21閲覧
松倉公憲「れきさばく 礫砂漠」地形の辞典 日本地形学連合編 朝倉書店(2017)
レグとは コトバンク 世界大百科事典内 2021/1/21閲覧
砂砂漠とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、デジタル大辞泉 2021/1/21閲覧
松倉公憲「すなさばく 砂砂漠」地形の辞典 日本地形学連合編 朝倉書店(2017)
小泉武栄「F3-3 砂漠と温帯草原」自然地理学事典 小池一之ら編 朝倉書店(2017)
乾燥地形(かんそうちけい)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、百科事典マイペディア、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2023/4/7閲覧
ワジとは コトバンク 百科事典マイペディア、世界大百科事典 第2版、日本大百科全書(ニッポニカ) 2021/1/21閲覧
小口高・宮越昭暢「わじ ワジ」地形の辞典 日本地形学連合編 朝倉書店(2017)
オアシスとは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2021/1/21閲覧
塩湖とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、日本大百科全書(ニッポニカ) 2021/1/21閲覧
内陸湖とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2021/1/21閲覧