地理情報 系統地理

地図投影法:何を正確に表現するかによる分類(正角図法・正積図法・正距図法)

地図投影法の分類方法として、何を正確に表現するかに基づく分類があります。
3次元の球体である地球表面の情報を2次元の地図上に落とし込むと、必ず何かしらの情報が失われます。
そのため、地図投影法では目的に応じて地図上に正確に落とし込む情報と歪みが生じることを受け入れる情報を取捨選択します。
このページでは、何を正確に表現するかに基づく分類として正角図法、正積図法、正距図法について解説します。

何を正確に表現するかによる分類

様々な地図投影法(1942年、米国陸軍情報部作成)。様々な地図投影法の長所と短所を説明している。地図投影法の選択はトレードオフであり、全ての目的に合致する地図は存在しないという基本的な内容を記載している。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/6/5閲覧

ここからは、「何を正確に表現するか」によって地図投影法を分類していきます。
同種の投影方法であっても何を正確に表現するかの違いによって複数の地図投影法が存在します。
たとえば、円錐図法に分類される正角円錐図法、正距円錐図法、正積円錐図法はそれぞれ角度、距離、面積が正確になるように工夫された地図投影法です。
同じ正積図法であっても、正積円錐図法は円錐図法でありランベルト正積方位図法は方位図法です。
このように投影方法とは別に何を正確に表現するかによる分類が存在します。

以下では、正角図法、正積図法、正距図法について解説します。

正角図法

正角図法の一種であるメルカトル図法による世界地図。参考のため主要な緯線も描かれている。赤道(赤太線)、南北回帰線(23°26', 赤点線)、南北極線(66°33', 青点線)である。メルカトル図法では高緯度地域が南北に極端に引き伸ばされているため、グリーンランドや南極大陸が引き伸ばされて巨大になっている。メルカトル図法で北極点や南極点を描こうとすると、地図を無限に引き伸ばすことになってしまう。そのため、この地図は北緯85°から南緯85°までの範囲で描かれ、北極点/南極点周辺は切り捨てられている。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/6/4閲覧

正角(せいかく)図法とは、地図上のどの地点においても実際の地表での角度を正確に表現できる地図投影法です。
たとえば、正角図法では地表で角度30°の位置関係にある2つの直線は地図上でも角度30°で描かれます。
角度を正確に表現できるため、正角図法では緯線と経線の角度が全て90°になり直交します。

正角図法の特徴として、地球上の狭い範囲であれば、角度だけではなく図形の形も歪むことなくほぼ正確に表現できます。
実際の形と地図上で描かれる形が同じであり、各辺の長さの比が等しい相似という数学の概念が成り立つため、相似図法ともよばれます。

正角図法は狭い範囲であれば形を正確に描けるため、日本地図のような中程度の縮尺の地図に使われます。
他には、角度が正しいという特長を活かして船舶用の海図や航空機用の航空図にも使われます。
測量においても、角度情報を利用して距離を測定する三角測量を行うので、必然的に正角図法が使われます。

代表的な正角図法としては、メルカトル図法や平射図法(ステレオ図法)があります。

正積図法

サンソン図法による世界地図。サンソン図法は正積図法の一種であり、擬円筒図法に分類される。サンソン図法は面積を正確に表現するために経線が歪んでおり、高緯度地域ほど歪みが大きい。低緯度地域では歪みが小さいため、低緯度地域の地方図などに利用される。出典:Wikimedia Commons, ©Strebe, CC BY-SA 3.0, 2024/6/20閲覧

正積(せいせき)図法とは、地図上のどの領域においても実際の地表での面積を正確に反映できる地図投影法です。
地図は実際の地球の大きさを何万分の1かに縮小したものであるため、厳密には面積「比」が正確に描かれています。

正積図法は主題図(統計地図や分布図など)に使われます。
たとえば、国ごとに人口の大小で色分けした統計地図を作成する場合、面積が不正確な世界地図だと面積と人口の関係(人口密度)について間違ったイメージを与えます。
メルカトル図法のように高緯度地域が引き伸ばされる地図投影法を使用した場合、高緯度に位置するロシアやカナダが実際よりも面積が大きく描かれるため、人口密度が現実よりも低い印象を与えてしまいます。
そのため、面積が正確な正積図法の地図を主題図に使用することで、見る人に誤解を与えないようにします。

正積図法の例としては、サンソン図法、モルワイデ図法、グード図法(ホモロサイン図法)などがあります。

参考正積図法(サンソン図法・モルワイデ図法・グード図法・ボンヌ図法)

続きを見る

正距図法

北極点を中心とした正距方位図法による世界地図。正距方位図法は中心点からの距離と方角を正確に描く地図投影法である。出典:Wikimedia Commons, ©Strebe, CC BY-SA 3.0, 2024/7/10閲覧

正距(せいきょ)図法とは、地図上の特定地点からの距離が正確に表現できる地図投影法です。
地図上の全ての場所の距離を正確に表現することはできません。
そのため、正距図法では特定の場所にしぼって距離を正確に表現します。

正距図法には大きく分けて次の2つがあります。
1.特定の1地点を基準にそこからの距離が正確な地図投影法(例:正距方位図法)
2.地図上の全ての経線・緯線の距離が正確な地図投影法

代表的な正距図法としては、特定の1地点からの距離と方位が正確に表現された正距方位図法があります。

関連記事

参考地図投影法:投影方法による分類(円筒図法・円錐図法・方位図法)

続きを見る

参考地図投影法とその分類

続きを見る

参考地図の歴史(バビロニアの世界地図から現代のWebGISまで)

続きを見る

参考地球の形と大きさ(地球の半径と表面積の概算)

続きを見る

参考文献

地理用語研究会編「地理用語集」山川出版社(2024)
地図投影法 地理空間情報技術ミュージアム MoGIST 国際航業株式会社 2024/5/18閲覧
地図投影法とは|GISでの投影法の扱い 空間情報クラブ 株式会社インフォマティクス 2024/5/18閲覧
Map projection, Wikipedia 2024/5/28閲覧
正角図法(セイカクズホウ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2024/5/30閲覧
正角図法 地理空間情報技術ミュージアム MoGIST 国際航業株式会社 2024/5/30閲覧
政春 尋志「正角図法の意義と利用法」地図 44(1) p1-8
正積図法(セイセキズホウ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2024/6/2閲覧
正積図法 地理空間情報技術ミュージアム MoGIST 国際航業株式会社 2024/6/2閲覧
正距図法(せいきょずほう)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2024/6/2閲覧
正距図法 地理空間情報技術ミュージアム MoGIST 国際航業株式会社 2024/6/2閲覧

-地理情報, 系統地理
-,