河川は水が流れる力によって上流の土砂を侵食し、運搬して下流に堆積する作用があります。
この過程で、上流から下流まで河川のはたらきに応じた地形が形成されます。
ここでは、河川のはたらきによって形成された地形を上流側から順に解説します。
この記事では川の上流と中流、谷口にできる地形について解説します。

川の下流や河口にできる地形については、以下の記事で取り上げています。
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氾濫原に広がる微地形(自然堤防・後背湿地など、河川の下流部の地形)
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川の下流の地形2(三角州とその分類)
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上流部の地形(V字谷と崩壊地)

山に降った雨水は、周りよりも低い場所を筋状に流れ、やがて川を形成します。
傾斜が急な上流部では、川は相対的に低い場所に集まって筋状に流れ、侵食と運搬の作用が強いため谷状に削られてV字谷を形成します。
また、上流部は山の斜面が急なので、山崩れや地滑りをおこして木々や土砂が流出した崩壊地がみられることがあります。
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参考V字谷(河川の上流部の地形)
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中流部の地形(谷底平野と河岸段丘)

川の中流部では上流部同様、侵食作用がはたらいて谷ができますが、上流からの土砂がうすく堆積した地形がみられます。
うすくしか堆積しないのは、土砂を侵食・運搬する作用がまだまだ強いからです。
川の中流域に特徴的な地形としては、谷底平野と河岸段丘があります。
谷底(こくてい、たにぞこ)平野は、V字谷において川の流れが弱まるなどして谷が土砂が堆積し、谷が土砂で埋められて形成された平坦な地形です。
谷底平野は砂礫が堆積していますが、下流の平野部の沖積平野と比べて薄い堆積層となっています。
河岸段丘は、川沿いに階段状に平坦地(段丘面)と急な崖(段丘崖)が何段か続く地形です。
気候変動などの様々な要因で河川の侵食や堆積作用の強さが変化し、川が下へ下へと削られていった結果できた地形です。
河岸段丘の段丘面は、かつての河川に広がる谷底平野だった場所です。
気候の変化などで上流から運ばれる土砂の量が減り、侵食作用が強くなった結果、川がより深く削られます。
その際に、元々あった谷底平野より狭い新しい谷底平野ができます。
この新旧の谷底平野の境目の跡が段丘崖です。
このような変化が何回かおきることで、段状の地形が形成されます。
河川の中流部に特徴的な谷底平野と河岸段丘については、次のページで詳しく解説しています。
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参考谷底平野と河岸段丘(河川の中流部の地形)
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谷口の地形(扇状地)

河川は上流部では細い谷をつくりながら流れますが、下流部では谷がひらけて平野を流れます。
この細い谷の部分から平野へ広がる谷口にできる地形が扇状地です。
扇状地は上流側の扇のかなめの部分を扇頂、下流側の扇の端の部分を扇端、間の中央部を扇央といいます。
扇状地は、細い谷がひらける谷口を扇のかなめ(扇の根元の軸の部分)として、下流に向かって扇状に砂礫が堆積した地形です。
扇状地の上流側ほど粒が大きくて重い礫が堆積し、下流に向かって軽いものが堆積していきます。
堆積物は重力と水の流れによって扇頂から円を描くように堆積していくので、扇頂から同じ距離にある場所は同じ標高になります。
扇状地については、次のページで解説しています。
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参考扇状地(扇頂・扇央・扇端、谷口の地形)
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参考文献
山から海へ川がつくる地形 国土地理院 2021/1/13閲覧
谷底平野とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2021/1/13閲覧
谷底平野 ウィキペディア 2021/1/14閲覧
平野(へいや)とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2021/1/13閲覧
河岸段丘とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、世界大百科事典 第2版、日本大百科全書(ニッポニカ) 2021/1/14閲覧
扇状地とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、日本大百科全書(ニッポニカ) 2021/1/14閲覧