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【共通テスト解説】2025年 旧地理B 本試験 第5問

大学入試共通テスト(2025年 旧地理B 本試験 第5問)の解説ページです。

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問題と解答

共通テスト(2025年 旧地理B 本試験)の問題と解答のリンクです。
問題文のPDFは下記リンク先から入手し、図表や問題文を手元に置きながら解説(次項)を見て下さい。
リンク切れ対策のため複数サイトへリンクを貼っていますが、いずれも同一です。

入試速報トップ:河合塾朝日新聞
問題:河合塾朝日新聞
解答:河合塾朝日新聞

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過去問サイト:日本の学校中日進学ナビ

解説

第5問は北海道ニセコ地区の地域調査に関する設問です。

問1 雨温図と都市の対応

北海道内の3都市の雨温図と都市名の対応を答える問題です。
ア~ウは倶知安町、旭川市、釧路市のいずれかです。

設問の地図からわかるように、倶知安町は日本海側、旭川市は内陸部、釧路市は太平洋側沿岸に位置します。
雨温図を見ると、「ア」は冬に降水量が多く夏に少ない典型的な日本海側の気候であり、立地的に倶知安です。
次に旭川と釧路の立地を比較すると、旭川は内陸部に位置するため夏は暑く冬は寒いと考えられるのに対し、沿岸部の釧路は海に近い影響で温度変化が小さいはずです。
そこで「イ」「ウ」の雨温図を比較すると、真冬の1月は「イ」の方が気温が低く、真夏の8月は「イ」の方が気温が高いです。
よって、年間の気温差が大きい「イ」が旭川、小さい「ウ」が釧路です。

正解:1

必要知識:
・日本海側と太平洋側の降水量の季節性
・内陸と沿岸の気温差

問2 土地利用と農産物

町ごとの農畜産物別の産出額のグラフを見て、町名の組み合わせを当てる問題です。
グラフのカ~クが倶知安町、ニセコ町、蘭越町のいずれかです。

設問の地図から分かる特徴は以下の通りです。
倶知安町:畑が多い
ニセコ町:畑が多いものの水田も見られる
蘭越町:水田が多い

グラフも確認します。
カ:3町の中で米が最も少なく、逆にイモ類が最も多い
キ:3町の中で米が圧倒的に多い
ク:3町の中では米もイモも中間である

以上より水田が多い蘭越町は米が多い「キ」、逆に水田が少なく畑が最も多い倶知安町はイモが多い「カ」であり、水田も畑も見られるニセコ町が中間的な「ク」です。

正解:2

必要知識:
・土地利用と作物の対応関係

問3 地形図と写真の読み取り

4地点の地形図と陰影起伏図、写真が与えられ、会話文の中で誤りを含む選択肢を選ぶ問題です。

①この地形は溶岩が流れてできた
→正しい
地形図Aの右側には横幅がある舌状に等高線が見られ、これは火砕流や溶岩などが流れて固まった地形であると考えられます。
ニセコ連峰(のニセコアンヌプリ)は活火山であることを知っていれば、地形が溶岩によるものか判断できなくても火山地形があるのが妥当だと考えることができます。
しかし、この知識がないと判断が難しいので②~④の正誤判定から答えを出す方が現実的でしょう。

②スキー場の地点bは尾根上に位置している
→正しい
地形図Bを見ると、地点bは周囲より等高線が出っぱっているため、尾根上にあります。

③計画的な開拓の歴史が反映されたもの
→正しい
地形図Cを見ると、地点cの先には、道路が格子状(碁盤の目状)に走る市街地があります。
これは、開拓時に格子状に区画割りをして区画の境界に沿うように道路を走らせたためです。

④これらの木々は、住居を風から守るために植えられた
→誤り
地形図Dを見ると、地点dのすぐ北側には川が流れており、地点dの先には水田と三日月湖があることはわかりますが、人家があるかは地形図から判別できません。
さらに、地点dから撮影した写真を見ると、右側の道路沿いには建物が点在していますが、木がコの字型に生えている場所はそれとは無関係な場所です。
木がコの字型に生えている場所を改めて地形図で見返しても、そこには水田しかありません。

正解:4

必要知識:
・地形図の読み取り
・北海道の開拓地の区画割り
・地形図と実際の写真の対照

問4 訪日外国人の位置情報

訪日外国人のの空間利用人数(位置情報)のメッシュ図を見て、会話文中の空白に当てはまる内容を選ぶ問題です。
写真s, tは図6中の範囲FまたはGで撮影したものです。

まずは会話文中のxの判別です。
設問文より、xは範囲FまたはGのいずれかです。
Fは鉄道駅からやや離れたニセコアンヌプリという山の麓であり、Gは倶知安駅周辺です。
ニセコアンヌプリが山の名前であることは知識がないとわかりませんが、問3の地形図A, Bや陰影起伏図から、「ニセコアンヌプリ」という場所には山があることはわかり、問3と問4の地図を見比べるとFが山の麓であることもわかります。

次に、問3の地形図Bには「スキー場」の文字が見られ、地点bの写真は明らかにスキー場のものです。
このため、Fはスキー場が立地するため外国人が集まるエリアであることがわかります。
図6を見てもニセコアンヌプリの山の南側を取り囲むように訪日外国人が多いメッシュが分布していることから、一帯がスキーリゾートになっていると推測できます。
一方で、Gは町名を冠する倶知安駅があることから中心市街地であると考えられ、鉄道駅があることからスキー場への移動途中で外国人が多く訪れると推測できます。
以上をふまえると、外国人が多く利用する宿泊施設が見られるのは、スキーリゾートとして開発されているのはFの方です。

次に会話文中のyの判別です。
yの選択肢サ~スは以下の通りです。
サ:宿泊施設での雇用が増加しても、他の産業への波及効果はないだろうね
シ:宿泊施設の周辺では、観光による利益を見込んで、土地の価格が上昇するだろうね
ス:すでに宿泊施設が十分に立地しているから、新たな宿泊施設が建設されることはないだろうね

yの手前の会話文の内容をふまえると、範囲Fの現状は以下の通りです。
・外国資本によって開発された外国人が多く利用する宿泊施設が見られる
・英語の看板が多く、外国のよう
・ラーメン1杯の価格が3,000円もする
・1月の宿泊料金が1部屋1泊10万円を超えるものもあるのに満室になる

以上をふまえると、ニセコエリアでは日本の他地域と比べて極端に物価が高騰していることがわかります。
宿泊施設や飲食店は値段を上げても売れるため、その土地で商売したい人が増えて土地の需要も上がり、土地の価格が高騰すると考えられます。
宿泊料金やラーメン代が値上がりしているのに、土地だけが上がらないのは不自然です。
よって土地価格の上昇について言及した「シ」が正解です。

ちなみに、「サ」の「他の産業への波及効果はない」は誤りです。
たとえ、日本国内で外国人が外国人相手に宿泊施設を営業したとしても、宿泊施設を建設するのは日本の業者ですし、宿泊施設の内装設備や消耗品は当然地域内で購入しますし、飲食店の仕入先は当然日本の業者です。
さらに従業員がその地域に住むことで生活に関わる消費が増えてスーパーやコンビニの売上も上がります。
このように、観光客の増加は観光産業以外の様々な産業にも波及効果があります。

「ス」についても、「新たに宿泊施設が建設されることはないだろうね」は誤りです。
宿泊料金が1泊10万円でも満室になるということは、まだ宿泊施設の需要があるということです。
ビジネスチャンスがある場合に新規参入があるのは当然です。

正解:2

必要知識:
・地形図や写真、位置情報のメッシュ統計図の読み取り

問5 宿泊者数推移

日本人と外国人の各町の2012年から2022年の宿泊者数推移のグラフを元に、外国人の宿泊者数推移と月別の割合の組み合わせを答える問題です。
宿泊者数推移を示したグラフ「タ」と「チ」、宿泊者数の月別割合を示したグラフPとQがあり、それぞれ日本人と外国人についての統計です。

まず宿泊者数推移ですが、「チ」では2020年頃にコロナウィルス流行の影響でゼロ近くになっていますが、「タ」は減少幅が小さいです。
コロナ禍での入国制限により観光目的での外国人の訪問は困難であったため、ゼロ近くまで減っている「チ」が外国人です。

次に宿泊者数の月別割合を見ると、Pは12-2月に多いのに対し、Qは夏にも多いです。
今までの設問内容より、外国人観光客が集まるのはスキー場があるエリアです。
このため、冬に割合が高いPが外国人です。

正解:3

必要知識:
・2020年のコロナ禍での外国人の入国制限

問6 住民意見と施策案・指標の対応

住民意見の例と施策案・指標案の組み合わせが提示され、施策案・指標案として不適切なものを選ぶ問題です。


住民意見:観光客の増加により地域内の交通に支障が出る
施策案:需要の季節的な偏りに対応した事業者の誘致
指標案:地域内交通のキャッシュレス化率

いずれも観光客の増加による地域内交通への影響について触れていますが、施策案で季節的な需要変動に対応することを掲げているのに対し、指標案では需要変動に対応できたかとは無関係な支払い方法に関する内容です。
よって誤りは②です。

他の選択肢は、住民意見、施策案、指標案が対応しています。

正解:2

必要知識:なし

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