日本には多数の火山が分布していますが、世界的には火山が分布している地域は偏っています。
このページでは、火山の分布についてプレート境界に着目して解説します。
プレート境界と火山の分布
上の世界地図は、世界の活火山の分布を示したものです。
小さい濃赤色の点が活火山であり、淡赤色の線が海嶺(海洋上の広がる境界)です。
活火山が多い場所は、大きく3つに分けられます。
①沈み込み帯(環太平洋造山帯)
②広がる境界(アフリカ大地溝帯)
③ホットスポット(ハワイ諸島)
以下では、①②③について順に解説します。
狭まる境界と火山の分布
狭まる境界(収束境界)の中でも沈み込み帯には活火山が集中して分布しています。
沈み込み帯は、プレート境界で比重が重い海洋プレートが軽い大陸側のプレートの下に潜り込む場所です。
地球内部へ沈み込んでいった海洋プレートは、高温高圧下で融解してマグマとなり、その一部が地表に噴出します。
このため、沈み込み帯の大陸側ではプレート境界に並行して円弧を描くように活火山が並びます(火山弧、火山列)。
活火山が海洋上に並ぶ場合には、弧状列島(島弧)とよばれる円弧状に並ぶ火山島が見られます。
以上のような活火山が多く見られるのが環太平洋造山帯です。
環太平洋造山帯は、太平洋プレートと周囲のプレートとの境界であり、太平洋を囲むように分布しています。
代表的な地域としては、アンデス山脈、中央アメリカ、ロッキー山脈、アラスカ半島、アリューシャン列島(米国アラスカ州南西部)、千島列島、日本列島、伊豆諸島、小笠原諸島、マリアナ諸島(米領北マリアナ諸島~グアム)、南西諸島、フィリピン諸島、大スンダ列島(インドネシア)、トンガ諸島(オセアニア)、ニュージーランドです。
環太平洋造山帯ではありませんが、沈み込み帯がある西インド諸島やイタリア南部~ギリシャ南部も活火山が多い地域です。
同じ狭まる境界であっても、ヒマラヤ山脈などの衝突帯では活火山はあまり見られません。
広がる境界と火山の分布
広がる境界(発散境界)では、2つのプレートが離れようとするため地球内部からマグマが噴出しやすいので活火山が見られます。
広がる境界の大部分は大洋上に位置するため、海底火山が多く陸上の火山はそこまで多くありません。
広がる境界で陸上の火山が見られる例は2つあります。
1つは、大陸上に広がる境界が位置するアフリカ大地溝帯です。
アフリカ大地溝帯では、タンザニア・ケニア周辺から紅海周辺にかけて火山が分布しています。
代表的な火山としてはアフリカ最高峰のキリマンジャロ(5,895m, タンザニア)やケニア山(5,199m, ケニア)があります。
もう1つは、大洋上の広がる境界の海底火山が噴火を繰り返して成長して海から顔を出して火山島になった場所です。
大西洋中央海嶺上に位置するアイスランド島やアゾレス諸島(ポルトガル)などがあります。
ホットスポット
ホットスポットは、プレート境界とは無関係に活動する孤立した火山がある場所です。
ホットスポットでは高温のマグマが上昇流に乗って地表へ噴出するため、局所的に火山が見られます。
ホットスポットが分布する場所は、プレートの内側(大陸や大洋の中央部など)と広がる境界に位置する場合があります。
海洋上の広がる境界にある火山の多くは海底火山です。
しかし、広がる境界上にホットスポットがあると火山活動が局所的に著しく活発になり、マグマが海面から顔を出すほど高く積み重なります。
このため、広がる境界ではホットスポットが重なる場所に例外的に火山島が分布しています。
プレート境界から離れた場所にあるホットスポットの代表例は、太平洋プレートの中央部に位置するハワイ諸島(米国)です。
他にもモロッコ沖のカナリア諸島(スペイン)、西アフリカのセネガル沖のベルデ岬諸島(ヴェルデ岬諸島、カーボベルデ)、インド洋の仏領レユニオン島などがあります。
ホットスポットが陸上にある例としては、イエローストーン国立公園(米国北西部)があります。
広がる境界上に位置するホットスポットの例としては、大西洋中央海嶺上に位置するアイスランド島やアゾレス諸島(ポルトガル)、東太平洋海嶺上に位置するイースター島(チリ)などがあります。
ガラパゴス諸島(エクアドル)も広がる境界上に位置するホットスポットです。
プレートの移動とホットスポット
地球表面は移動するプレートで覆われているため時間の経過とともに位置が変化します。
一方、ホットスポットの位置は一定です。
このため、最初はホットスポット上に位置して噴火を繰り返していても、時間の経過とともにホットスポットから外れてマグマの供給がなくなります。
ホットスポットから外れると新しい火山の成長は止まり、それまで形成された火山は雨風の侵食と海底の沈下によって次第に沈んでいきます。
このような現象がはっきり見られるのが、太平洋(プレート)の中央部に位置するハワイ諸島(米国)です。
太平洋(プレート)の中央部は水深が深い盆地状の地形をしていますが、ホットスポットであるハワイ諸島は海底からそびえ立つ山脈のようになっています。
海底からの高度が高い(=島になっている)部分は、ハワイ諸島から北西方向に向かって列をなすように続いています。
この原因は、ホットスポットの位置が変わらない一方でプレートが移動し続けているためです。
ハワイ諸島では、南東端のハワイ島が最も新しい火山であり、現在も活発に火山活動が行われています。
ホットスポットは今も昔も現在のハワイ島の場所に位置していますが、太平洋プレート(地面)は少しずつ北西方向に動いています。
このため、南東側のハワイ島から北西方向に向かって島が形成された年代が古くなり、長年の侵食や沈下によって標高は次第に低くなっていきます。
ハワイ諸島の北西側の延長線上には、さらに小規模な島々からなる北西ハワイ諸島(米国ハワイ州など)があり、その先(北側)には天皇海山列とよばれる海に沈んだ海山が並びます。
これらの島々はハワイ島の位置にあるホットスポットで火山島となり、その後プレートに乗って移動しながら長年の侵食と沈下によって標高を下げていったものです。
参考文献
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地理用語研究会編「地理用語集」山川出版社(2024)
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