地球上にみられるいろいろな気候を、その類似点や特性によってグループ化して分類したものを気候区分といいます。
ここでは、アリソフとケッペンの気候区分について紹介したあとに、最も一般的なケッペンの気候区分の各気候帯について見ていきます。
各気候区の詳細については、以下のリンク先をご覧ください。
【ケッペンの気候区分:熱帯・乾燥帯・温帯・亜寒帯(冷帯)・寒帯・高山・植生・土壌】
目次
さまざまな気候区分
気候を分類するには大きく分けて2つのアプローチがあります。
一つは、大気の大循環などの気候をつくりだす気候因子に着目し、成因別に気候を分類する方法です。
もう一つは、その地域の気候の結果を反映する植生や土壌に着目し、これを基準に分類する経験的(結果論的)な方法です。
理想的には成因別に分類する前者の方が合理的ですが、たとえば大気の状態などは定量化が難しく、気候の境界がわかりづらいため、細かい地域ごとの分類は難しくなります。
一方、経験的に分類する方法は、現実の感覚に近い分類ができますが、植生や土壌に基づくと気候以外の要因が入り込んだ分類になる可能性があります。
ここでは成因別に気候を分類したアリソフの気候区分と経験的に分類したケッペンの気候区分についてふれます。
アリソフの気候区分
1950年にソ連のアリソフ(B. P. Alissow, 1891-1972)は、大気の状態に着目した気候分類を発表しました。
大気の大循環の結果として発生する気団の境界には前線が発生しますが、季節によって前線の位置は移動し、各地域の気候に影響をあたえる気団は変化します。
アリソフは各地域の夏と冬の気候を支配する主要気団の違いによって世界を7つの主要気候帯に分類しました。
ケッペンの気候区分
一方、ドイツのケッペン(Wladimir Peter Köppen, 1846-1940)は、植生に着目した経験的な気候区分を提唱しています。
ケッペンの気候区分は、気温と降水量の2つの変数から気候を分類できる簡便さと、各地域の景観を反映した分類であることから、現在でも広く用いられています。
ここからは、ケッペンの気候区分に基づく気候帯についてみていきます。
ケッペンの気候区分
ケッペンの気候区分では、低緯度地域から順に、熱帯(A)、乾燥帯(B)、温帯(C)、亜寒帯(冷帯、D)、寒帯(E)の5つの気候帯に分類されます。
各気候は低緯度地域から順にA-Eの記号で表現されます。
各気候帯は、細かい気候の違いによりさらにいくつかの気候区に分類されます。
上図のA~Eのあとにつづくアルファベット小文字が気候区を表します。
上図にはありませんが、これらとは別に海抜高度が高い地域に見られる高山気候(H)があります。
気候帯の分類
気候帯はまず樹木の有無によって2つ(無樹木気候と樹木気候)に分けられます。
乾燥帯と寒帯は樹木が生育できない気候帯です。
樹木が生育できない原因が乾燥にある場合は乾燥帯、低温にある場合は寒帯です。
年降水量が乾燥限界(おおむね~500 mm)に達しない場合は乾燥帯、最暖月平均気温が10℃以下の場合は寒帯に分類されます。
樹木が生育できる環境の気候は、気温が高い順に熱帯、温帯、亜寒帯(冷帯)です。
これらは、気温によって分類される気候帯です。
熱帯は最寒月平均気温18℃以上の気候帯で、これはヤシが自生できるかどうかを基準にしています。
温帯は最寒月平均気温18℃未満から-3℃以上の気候帯です。
最寒月平均気温-3℃は、冬期の積雪が根雪(積雪が春まで溶けずに残る状態)になるかどうかの境界です。
ヤシは自生しないが、積雪は根雪にならない熱帯と亜寒帯の中間的な気候帯です。
亜寒帯(冷帯)は最寒月平均気温-3℃未満かつ最暖月平均気温10℃以上の気候帯です。
冬期の積雪は根雪になり、春まで溶けずに残ります。
熱帯と温帯は最寒月平均気温だけで分類できますが、亜寒帯のみ最暖月平均気温が関わってきます。
これは、最暖月平均気温が10℃以下になると、樹木が生育できず寒帯になるためです。
以上の気候帯の分類を表にまとめます。
表 ケッペンによる気候帯の分類
気候帯 | 樹木の生育 | 降水量 | 最寒月平均気温 | 最暖月平均気温 |
熱帯(A) | ○ | 乾燥限界以上 | 18℃以上 | --- |
乾燥帯(B) | ☓ | 乾燥限界未満 | --- | --- |
温帯(C) | ○ | 乾燥限界以上 | 18℃~-3℃ | 10℃以上 |
亜寒帯(冷帯、D) | ○ | 乾燥限界以上 | -3℃未満 | 10℃以上 |
寒帯(E) | ☓ | --- | --- | 10℃未満 |
熱帯(A)
熱帯(A)は最寒月平均気温18℃以上で樹木が生育できる降水量がある気候帯です。
熱帯では、熱帯収束帯(赤道低圧帯)の影響をうけて降水量が多くなります。
熱帯は降水量に基づいて、熱帯雨林気候(Af)、熱帯モンスーン気候(Am)、サバナ気候(Aw)の3つの気候区に分かれます。
表 熱帯の気候区
気候区 | 特徴 | 年降水量 | 最少月降水量 | 最寒月平均気温 |
熱帯気候(A)共通 | 年中温暖 | 乾燥限界以上 | --- | 18℃以上 |
熱帯雨林気候(Af) | 年中多雨 | --- | 60 mm以上 | --- |
熱帯モンスーン気候(Am) | 弱い乾季 | --- | 60 mm未満かつ(100-0.04×年平均降水量) mm以上 | --- |
サバナ気候(Aw) | 明確な乾季 | --- | 60 mm未満かつ(100-0.04×年平均降水量) mm未満 | --- |
熱帯の気候については、次の記事でまとめています。
参考熱帯の気候(熱帯雨林気候・熱帯モンスーン気候・サバナ気候)
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乾燥帯(B)
乾燥帯(B)は降水量が少なく樹木が生育できない気候帯です。
乾燥帯は、降水量よりも蒸発散量の方が多いため乾燥が原因で樹木が生育できず、草原や砂漠が広がります。
乾燥帯は降水量が極めて少ない砂漠気候(BW)と降水のあるステップ気候(BS)に分けられます。
表 乾燥帯の気候区
気候区 | 特徴 | 年降水量 | 最暖月平均気温 |
乾燥気候(B)共通 | 乾燥のため樹木を欠く | 乾燥限界未満 | 10℃以上 |
砂漠気候(BW) | 乾燥のため植生に乏しい | 乾燥限界の半分以下 | --- |
ステップ気候(BS) | イネ科植物主体の短草草原 | 乾燥限界の半分~乾燥限界未満 | ---- |
乾燥帯の気候については、次の記事でまとめています。
参考乾燥帯の気候(砂漠気候とステップ気候)
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温帯(C)
温帯(C)は、最寒月平均気温18℃未満から-3℃以上で、最暖月平均気温が10℃以上の気候帯です。
熱帯と亜寒帯の中間的な気候帯で、ヤシが自生する熱帯(最寒月平均気温18℃以上)ほど温暖ではありませんが、冬期の積雪が根雪になる亜寒帯(冷帯、最寒月平均気温-3℃未満)ほど寒冷でもありません。
また、寒帯と異なり最暖月平均気温が10℃以上のため樹木が生育できます。
温帯は4つの気候区に分けられます。
夏に乾燥する地中海性気候(Cs)、冬に乾燥する温暖冬季少雨気候(Cw)、年中降水し比較的温暖な温暖湿潤気候(Cfa)、年中降水し比較的寒冷な西岸海洋性気候(Cfb)です。
小文字はドイツ語の単語の頭文字であり、sは夏に乾燥(sommertrocken)、wは冬に乾燥(wintertrocken)、fは湿潤(feucht)を表します。
表 温帯の気候区
気候区 | 特徴 | 年降水量 | 最多雨月・最少雨月降水量 | 最寒月平均気温 | 最暖月平均気温 |
温帯気候(C)共通 | 四季がある | 乾燥限界以上 | --- | 18℃~-3℃ | 10℃以上 |
地中海性気候(Cs) | 夏に乾燥 | --- | 以下をすべて満たす ①最多雨月が冬 ②3×最少雨月降水量<最多雨月降水量 ③最少雨月降水量が30mm未満 | --- | --- |
温暖冬季少雨気候(Cw) | 冬に乾燥 | --- | 以下の両方を満たす ①最多雨月が夏 ②10×最少雨月降水量≦最多雨月降水量 | --- | --- |
温暖湿潤気候(Cfa) | 年中湿潤でやや温暖 | --- | CsやCwではない | --- | 22℃以上 |
西岸海洋性気候(Cfb) | 年中湿潤でやや寒冷 | CsやCwではない | --- | 10℃~22℃未満 |
温帯の気候については、次の記事でまとめています。
参考温帯の気候1(地中海性気候と温暖冬季少雨気候)
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参考温帯の気候2(温暖湿潤気候と西岸海洋性気候)
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亜寒帯(冷帯、D)
亜寒帯(冷帯、D)は、最寒月平均気温-3℃未満かつ最暖月平均気温が10℃以上、樹木が生育できる降水量がある気候帯です。
亜寒帯は気温の年間変動(年較差)が最も大きい気候帯で、北半球の高緯度地域に分布しています。
亜寒帯の気候は、年中降水し比較的寒冷な亜寒帯(冷帯)湿潤気候(Cf)、冬に乾燥する亜寒帯(冷帯)冬季少雨気候(Dw)、夏に乾燥する高地地中海性気候(Ds)に分けられます。
小文字はドイツ語の単語の頭文字であり、fは湿潤(feucht)、wは冬に乾燥(wintertrocken)、sは夏に乾燥(sommertrocken)を表します。
表 亜寒帯(冷帯)の気候区
気候区 | 特徴 | 年降水量 | 最多雨月・最少雨月降水量 | 最寒月平均気温 | 最暖月平均気温 |
亜寒帯(冷帯、D)共通 | 気温の年較差が大きい 北半球のみに分布 | 乾燥限界以上 | --- | -3℃未満 | 10℃以上 |
亜寒帯(冷帯)湿潤気候(Df) | 年中湿潤 | --- | DwやDsではない | --- | --- |
亜寒帯(冷帯)冬季少雨気候(Dw) | 冬に乾燥 東アジア~シベリアに分布 | --- | 以下の両方を満たす ①最多雨月が夏 ②10×最少雨月降水量≦最多雨月降水量 | --- | --- |
高地地中海性気候(Ds) | 夏に乾燥 ごく限られた地域に分布 | --- | 以下をすべて満たす ①最多雨月が冬 ②3×最少雨月降水量<最多雨月降水量 ③最少雨月降水量が30mm未満 | --- | --- |
亜寒帯(冷帯)の気候については、次の記事でまとめています。
参考亜寒帯の気候(亜寒帯湿潤気候・亜寒帯冬季少雨気候など)
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寒帯(E)
寒帯(E)は、最暖月平均気温が10℃未満で、低温のため樹木が生育できない気候帯です。
寒帯は地球上で最も寒冷な気候帯で、北極・南極周辺に広がります。
寒帯の気候は、短い夏にコケ類が生育するツンドラ気候(ET)と万年雪に閉ざされる氷雪気候(EF)に分かれます。
表 寒帯の気候区
気候区 | 特徴 | 年降水量 | 最暖月平均気温 |
寒帯(E)共通 | 低温のため樹木が生育できない | --- | 10℃未満 |
ツンドラ気候(ET) | 短い夏にコケ類が生育 | --- | 0-10℃ |
氷雪気候(EF) | 大陸氷河(氷床)が発達 | --- | 0℃未満 |
寒帯の気候については、次の記事でまとめています。
参考寒帯の気候(ツンドラ気候と氷雪気候)
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高山気候(H)
高山気候(H)はケッペンの気候区分には存在しない気候区分で、トレワーサ(Glenn Thomas Trewartha, 1896-1984)によって加えられました。
上のケッペンの気候区分の図のように高山気候を考慮しない分類もあります。
森林が存在する限界線である森林限界をこえる標高が高い地域でみられます。
高山気候については、次の記事でまとめています。
参考高山気候と森林限界
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気候と植生
地表を覆う植物の種類はその地域の気候の影響を大きくうけます。
以下の記事では、気候の観点から植生について解説しています。
気候と植生
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気候と土壌
地表を覆う土壌の種類は、気候の影響を大きくうけて生成する成帯土壌と岩石の種類などそれ以外が主要因となる間帯土壌に分けられます。
土壌については、以下の記事で解説しています。
土壌の分布と分類(成帯土壌と間帯土壌)
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成帯土壌(ラトソル・黒色土・褐色森林土・ポドゾル・ツンドラ土)
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間帯土壌(テラロッサ・テラローシャ・レグール等)
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参考文献
気候区分とは コトバンク 世界大百科事典 第2版、日本大百科全書(ニッポニカ) 2021/2/8閲覧
ケッペンの気候区分 ウィキペディア 2021/2/9閲覧
乾燥気候とは 世界大百科事典 第2版 2021/2/11閲覧