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フェーンとフェーン現象

フェーンは山から吹き下ろす高温乾燥した局地風(地方風)です。
フェーンが吹くとフェーン現象が発生して局所的に気温が上昇し、日本では夏の酷暑や季節外れの気温上昇の一因となります。
このページでは、フェーンとフェーン現象について解説します。

フェーンとは

カンタブリア山脈(カンタブリカ山脈)東部(バスク山脈)の山上から見たフェーン雲(スペイン北部・バスク州)。カンタブリア山脈は、スペイン北部を大西洋の海岸線に沿って東西にのびる山脈である。左側が北の大西洋(ビスケー湾)側であり、右側が南で内陸の高原(メセタ)側である。北側の大西洋から吹く湿った空気が山の斜面を上る過程で結露するため、山脈の左側雲ができている。一方で左から右へ山を乗り越える過程で地形性降雨により水分を失うため、右側では雲が無い青空となっている。出典:Wikimedia Commons, ©Iñaki LLM, CC BY-SA 4.0, 2026/2/22閲覧

フェーンは山脈を越えてきた風が低地に吹き下ろす高温・乾燥した局地風(地方風)です。
山脈を越えた風が低地へ吹き下ろす過程で標高が下がるため、気圧が上がって空気が圧縮(断熱圧縮)し、気温が上昇します。
山脈を越えるフェーンが吹くことで、風下側の低地は局地的に気温が上昇するフェーン現象が発生します。
偏西風などの恒常風により年間通して風向きが同じ場所では年間通してフェーン現象が発生し、風上では雨が多く湿潤風下側では高温乾燥した気候になります。

フェーン現象は世界各地で発生する現象であり、日本でも見られます。
冬から春先にかけてのフェーン現象は、季節外れの高温により積雪が溶けるため、日本海側の山間部を中心に雪崩が発生します。

夏から秋にかけてのフェーン現象では、各地で40℃を越える異常な高温をもたらすこともあります。
たとえば、群馬県南東部(高崎・伊勢崎など)から埼玉県北西部(熊谷など)にかけての地域では、夏季に記録的な猛暑をたびたび記録します(例:日本観測史上最高気温41.8℃、群馬県伊勢崎市、2025/8/5)。
この地域はフェーン現象が発生しやすく、海から遠く海風による冷却効果も乏しいこともあり、日本の中でも特に気温が高くなりやすい場所です。

参考

アルプス山脈で見られるフェーン雲(オーストリア南部・ケルンテン州)。山の向こう側では山の斜面を上る際に結露した空気が雲を作っているのに対し、山を乗り越るまでに水分を失い乾燥している手前側では雲が見られない。フェーンはアルプス山脈を越える南風の局地風(地方風)であり、フェーン現象により高温乾燥した空気は気温上昇をもたらし、冬から春先にかけて雪解けをもたらす。フェーンは元々アルプス山脈を越えるフェーンを指す用語であったが、現在では一般用語化している。このため、アルプス山脈のフェーンを「アルプスフェーン」と呼ぶようになった。出典:Wikimedia Commons, ©Johann Jaritz, CC BY-SA 3.0, 2026/2/22閲覧

アルプスフェーン
アルプスフェーンは、アルプス山脈の北側の山麓(スイスやオーストリアなど)に吹き下ろす高温・乾燥した南風です。
南からアルプス山脈を乗り越えて北側に吹き下ろす際にフェーン現象が発生し、気温が上昇します。
冬から春先にかけて吹くため、アルプス北麓の地域に雪解けをもたらす風として知られています。

フェーンという用語は、元々は局地風(地方風)であるアルプスフェーンを指すものでしたが、一般用語化して世界各地で同様のしくみで発生する高温・乾燥した滑降風(かっこうふう、山を滑り降りるように吹く風)を指す言葉になりました。

フェーンのしくみ

地形性降雨とフェーンの模式図。左側から冷たく湿った風が山を越える際に地形性降雨がおきて水蒸気を失い、山の風下側では暖かく乾いた風(フェーン)が吹く。フェーンを発生させる風は風上側の山を上る風だけとは限らず、上空を流れる冷たく乾燥した空気が山を駆け降りる場合もある(ドライフェーン)。出典を加工して作成。出典:Wikimedia Commons, ©Depunity, CC BY-SA 4.0, 2026/2/12閲覧

フェーンは山脈を越えて吹き下ろす風であり、そのしくみは風上側での地形性降雨と密接に関わっています。

海から山脈に向かって冷たく湿った風が吹くと、山の斜面を上りながら気温が低下していきます。
気温が低下する理由は、標高が上がるにしたがって気圧が下がって空気が膨張(断熱膨張)し、膨張によって熱エネルギーが分散(=外部に仕事をして内部エネルギーが減少)するためです。
気温が低下するほど空気中の飽和水蒸気量(空気中に含むことができる水蒸気量)が低下していき、山の上の方では水蒸気が結露(凝結)して雲が形成されます。
結露は水蒸気が液体の水に状態変化する凝縮なので、状態変化に伴い熱が放出されて周囲の空気を温めます。
山脈の風下側で雨を降らせきって乾燥した空気は、山脈を越えて低地へ向けて吹き下ろしながら気温が上昇します。
この時の山脈から低地へ吹き下ろす風をフェーンと呼び、フェーンが吹くことによる局所的な気温上昇がフェーン現象です。
標高が下がるにしたがって気圧が上がって空気が圧縮(断熱圧縮)し、圧縮によって熱エネルギーが密集(=外部から仕事をされて内部エネルギーが増加)するためです。

フェーンの特徴としては、山脈を越える前よりも高温の風になっている点です。
一見すると温度変化は標高の上下のみに影響されるように見えますが、実際には標高0mから山脈を越えて反対側の標高0mの場所へ吹くフェーンは、山脈を越える前の0mの場所より気温が高くなります。
この原因は、山脈を越える過程で空気中の水蒸気が結露(凝結)し、その際に熱が放出されて空気が暖められるためです。
このため、山脈を駆け上がる風は100mあたり0.5℃温度低下するのに対し、山脈を越えた後に駆け降りる風は100mあたり1.0℃もの温度上昇を伴います。
理論的には、標高0mの海岸から標高1,000mの山脈を越える風は、風下側の海岸では4-5℃も温度上昇しています。
この温度低下・上昇幅のアンバランスさにより、フェーンは山脈の風下側に高温の空気をもたらします。

参考

地形性降雨を伴わないフェーン
フェーンの中には、山脈の風上側での地形性降雨を伴わないフェーンもあります。
上空を流れる冷たく乾燥した空気が、山脈を越えて吹き下ろすフェーンです。
このように地形性降雨を伴わないことからドライフェーンと呼び、地形性降雨を伴うフェーンをウェットフェーンと呼んで対比します。
ドライフェーンは上空の空気がそのまま山を滑り降りる風であり、上空の空気が100mあたり1.0℃温度上昇します。
気温の上昇率はウェットフェーンと同様です。

ドライフェーンとウェットフェーンでは原理が異なるため、それぞれ発生しやすい地域も異なります。
たとえば、東北地方でやませが吹くと、太平洋側からの湿った冷風が奥羽山脈を越えて日本海側でウェットフェーンが吹きます。
一方、夏に本州付近で北西風が吹くと、本州の太平洋側でドライフェーンが発生し、夏の記録的な暑さの一因になります。

参考文献

エスパーニャ・ベルデ ウィキペディア 2025/2/22閲覧
フェーン(ふぇーん)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、改訂新版 世界大百科事典、百科事典マイペディア、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、最新 地学事典 2026/2/22閲覧
Foehn wind, Wikipedia 2025/2/22閲覧
フェーン現象(フェーンゲンショウ)とは? 共同通信ニュース用語解説、精選版 日本国語大辞典、パラグライダー用語辞典 2026/2/22閲覧
ヒートアイランド現象の「知識・解説」 気象庁 2026/2/22閲覧
どうして最高気温になったの?  上毛新聞電子版 2026/2/22閲覧
暑い日は熱中症に注意! 熊谷地方気象台 気象庁 2026/2/22閲覧
地理用語研究会編「地理用語集」山川出版社(2024)
Alpine föhn, Wikipedia 2025/2/22閲覧
フェーン現象は2種類 起こりやすい地域や季節は?災害級の高温をもたらすことも tenki.jp 日本気象協会 2026/2/22閲覧

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