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油料作物(ナタネ・ヒマワリ・ゴマ他)

植物の種子の中には油脂を多く含むものがあります。
人類はこのような植物を栽培し、収穫した種子を押しつぶして抽出した油(植物油)を生産してきました。
植物油は食用油(料理用)や石鹸など様々な用途で使われています。
このページでは、このような植物油を生産するために栽培する油料作物について紹介します。

油料作物とは

油料作物(油脂作物、油糧作物)は、油を得る目的で(油脂原料として)栽培される作物です。
「油」の原「料」とするために栽培するので油料作物とよびます。
作物の中でも脂肪分が含まれる割合が高い豆類ヤシ類、あるいは植物の種子などが油脂原料として使われます。

同じ作物でも、食べる目的で栽培する場合は食用作物ですが、油を得る目的で栽培する場合は油料作物です。
たとえば、ダイズ(大豆)トウモロコシオリーブは食用として栽培される品種と油料作物として栽培される品種があります。

一般的に食用にしない作物であっても、ナタネ(菜種)やヒマワリのように油料作物として栽培される作物もあります。

以上のように植物に含まれる脂肪分をしぼり出して精製して作られた油を植物油といいます。
植物油の用途は、食用油(料理用)や工業用原料(化粧品やインクなど)、バイオディーゼル燃料用などがあります。

植物油は原料となる作物によって油脂の成分・比率が異なります。
そのため、植物油ごとに酸化しやすさや温度変化による固まりやすさなどが異なり、それぞれの特性に合わせて用途が使い分けられています。

植物油の原料別生産量

様々な植物油。植物油は原料となる作物によって油脂の成分が異なるため、様々な色や性質の油が存在する。出典:Wikimedia Commons, ©Netojinn, CC BY-SA 4.0, 2023/7/22閲覧

植物油は様々な作物を原料として生産されますが、その生産量は原料ごとに大きく異なります。
次の表は主な植物油の生産量と主要生産国の一覧です。

主な植物油の生産量(2019/20年度)
出典:植物油の道 一般社団法人 日本植物油協会 2023/7/15閲覧

植物油油料作物生産量
(百万トン)
主要生産国
(百万トン)
パーム油アブラヤシ73.9インドネシア (42.4)、マレーシア (19.3)、タイ (2.8)
大豆油ダイズ58.6中国 (16.2)、アメリカ (11.3)、ブラジル (9.5)
菜種油ナタネ24.9カナダ (4.4)、ドイツ (3.7)、中国 (2.8)
ひまわり油ヒワマリ21.5ウクライナ (7.2)、ロシア (6.0)、トルコ (1.2)
綿実油ワタ4.7中国 (1.3)、インド (1.3)、ブラジル (0.5)
コーン油トウモロコシ4.2アメリカ (2.4)、中国 (0.6)、日本 (0.08)
オリーブオイルオリーブ3.5スペイン (1.2)、チュニジア (0.4)、イタリア (0.4)
ヤシ油ココヤシ2.7フィリピン (1.0)、インドネシア (0.7)

生産量が最も多いのはパーム油で主に東南アジア南部(インドネシア・マレーシア)で生産されています。
パーム油は単位面積あたりの植物油の生産量が非常に多いため、生産量が最も多くなっています。
2番目に生産量が多い大豆は食用としても生産されていますが、油料作物としての生産量が多いです。
ナタネは主に植物油の原料として栽培される作物で、菜種油は日本で最も多く利用されている食用油です。
ワタ(綿花)は綿繊維を取るために栽培されますが、繊維を採取した後に残った種子は植物油の原料として使われます。
オリーブ地中海式農業の代表的な作物ですが、世界全体の植物油の生産量という観点で見るとオリーブオイルが占める割合は高くありません。

様々な油料作物

ここからは、主要な油料作物と植物油について簡単にまとめていきます。
植物油の生産量が多い作物の順に紹介します。
アブラヤシ(パーム油)
ダイズ(大豆油)
ナタネ(菜種油)
ヒマワリ(ひまわり油)
ワタ(綿実油)
トウモロコシ(コーン油)
オリーブ(オリーブオイル)
ゴマ(ごま油)

アブラヤシ(パーム油)

1つのアブラヤシの果実から得られる二種類の油。左は果肉から得られる赤く濁ったパーム油であり、右は種子から得られた黄色透明なパーム核油である。出典:Wikimedia Commons, ©T.K. Naliaka, CC BY-SA 4.0, 2023/7/3閲覧

ヤシ熱帯乾燥帯で栽培されている樹木作物です。
ヤシは種類ごとに様々な用途があり、アブラヤシからは油(パーム油)を得ることができます。

パーム油は他の植物油と比べて単位面積あたりで生産できる油の量が多く(1haあたり平均2.8t)、大豆油の約10倍にもなります。
そのため安価に生産することができるパーム油は世界の植物油の生産量の33%を占め、最も多く栽培されている油料作物です。

パーム油はオレンジ色をした常温(25℃)で固体の油です。
常温で固体の油ですが、融点が37℃程度なので口の中で溶けます。
パーム油は東南アジアや西アフリカなどで食用油として料理に使われるほか、石鹸や化粧品などの用途に世界中で幅広く使用されています。

ヤシ類とその代表的な作物(ココヤシ、アブラヤシ、ナツメヤシ)については、次のページでまとめています。

参考ヤシ類(ココヤシ・アブラヤシ・ナツメヤシ)

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大豆(大豆油)

大豆とその加工品。大豆の豆が敷き詰められている上に、スコップに入った大豆粕(左)とビーカーに入った大豆油(右)が置かれている。大豆から絞り出した油が大豆油であり、残った部分が大豆粕である。出典:Wikimedia Commons, ©United Soybean Board, CC BY 2.0, 2023/4/9閲覧

ダイズ(大豆)は中国東北部原産の作物で、現在では米国やブラジル、アルゼンチンなどで企業的農業による大規模栽培・輸出が行われている作物です。
ダイズの種子(豆)は食用としても利用されていますが、油脂を多く含むため圧搾すると(絞りつぶすと)油を取り出すことができます(現在ではヘキサン溶媒に溶かして油を取り出す溶媒抽出法にて採油)。
現在では、世界のダイズの生産量の87%が大豆油への加工用に使われています(2018年)。

大豆油は安価でにおいが少ないため、天ぷら油やサラダ油などの食用油に使われます。
また、水分とうまく混ざり合うためマヨネーズやドレッシングにも使われます。

※大豆の用途についてはこちらを参照

ナタネ(菜種油)

セイヨウアブラナの搾油用品種であるキャノーラ(ナタネ)の畑(フランス東部・ブルゴーニュ地方)。出典:Wikimedia Commons, ©Myrabella, CC BY-SA 4.0, 2023/7/17閲覧

セイヨウアブラナは日本では「菜の花」とよばれる植物であり、種子を原料として油(菜種油)を生産するために栽培される油料作物です。
元々は菜種油を取るために栽培される作物全般をナタネ(菜種)と呼んでいましたが、現在ではセイヨウアブラナの中でも油を取るために品種改良されたキャノーラ品種のことを指してナタネ(菜種)とよびます。

菜種油は食用油として広く使われ、市販のサラダ油やドレッシングや天ぷら油などに使われています。

ナタネの生産量上位はカナダ、インド、中国、フランスです(2019年)。
人口の多いインドと中国での生産量が多いほか、カナダは輸出用のナタネの栽培に力を入れています。
日本では北海道の空知地方などで生産されていますが、菜種油の輸出に力を入れているカナダからも輸入しています。

カナダ産のセイヨウアブラナの種子から作られた菜種油(キャノーラ油)。カナダでは輸出用にセイヨウアブラナが栽培されている。出典:Wikimedia Commons, ©Achilles2019, CC BY-SA 4.0, 2023/7/17閲覧

ヒマワリ(ひまわり油)

油料作物であるヒマワリの畑(ロシア西部・リャザン州)。ウクライナ~ロシアに広がる黒土地帯では、肥沃な黒色土(チェルノーゼム)の土壌を活用してヒマワリをはじめとする作物栽培が盛んである。出典:Wikimedia Commons, ©Максим Шанин, CC BY-SA 4.0, 2024/3/9閲覧

ヒマワリは種子を原料として油(ひまわり油)を得るために栽培される油料作物です。
ヒマワリの種子は食用にされたり、ハムスターや小鳥のエサとしても利用されますが、油料作物としての方が重要です。

比較的乾燥に強い作物であり、ステップ気候の中でも適度に乾燥しているため肥沃な黒色土(黒土)の土壌が広がる地域で栽培されます。
そのため、ヒマワリやひまわり油の生産量上位はチェルノーゼムが広がるウクライナとロシアです。
両国で世界の生産量の53%を占めています(2020年)。

東ヨーロッパで栽培されるひまわり油は地中海沿岸で生産されるオリーブオイルよりも安価であることから、食用油のほかにバイオディーゼル燃料にも使われます。

ひまわり油(左)とヒマワリの花(右)。ヒマワリの種子は油脂を多く含むため、ひまわり油の原料として栽培されている。出典:Wikimedia Commons, ©torange.biz, CC BY 4.0, 2023/7/17閲覧

ワタ(綿実油)

アメリカ産の綿実油。ワタから繊維を採取した後に残る種子を原料として油を得ることができる。出典:Wikimedia Commons, ©Cottonseed Oil, CC BY 2.0, 2023/7/17閲覧

ワタ(綿花)は繊維(綿繊維)を得るために栽培される繊維作物です。
ワタは繊維作物である一方、繊維を採取した後に残る種子を原料として油を生産することができます。
このようにしてワタから生産した油を綿実油(めんじつゆ)といいます。

綿実油は加熱しても比較的酸化しづらいため、スナック菓子などの揚げ物用に使われます。
また、植物油の中では最も高い殺虫力をもつため、果樹の害虫駆除にも使われます。

綿実油の生産量上位は中国とインドであり、これは綿花の生産量上位と同じです。
両国で世界全体の生産量の56%を占めます(2019年)。

トウモロコシ(コーン油)

トウモロコシを原料として作られたコーン油。トウモロコシからコーンスターチ(デンプン)を生産する際に副産物として得られた胚芽を原料として作られる。出典:Wikimedia Commons, ©Basilicofresco, CC BY-SA 3.0, 2023/7/17閲覧

トウモロコシは主に家畜のエサや食品工業用の原料として使われる作物です。
トウモロコシからコーンスターチ(デンプン)を生産する際には、胚芽(はいが、植物の芽になる部分)が取り除かれます。
この胚芽を原料として作られた油をコーン油といいます。
コーン油はあくまで食品工業の過程でできる副産物であるため、トウモロコシの生産量の割にはコーン油の生産量はそこまで多くありません。

コーン油は貯蔵安定性が高いため、家庭用のサラダ油や食品工業用としてマーガリンやスナック菓子に使われます。
工業用としては、塗料やインク、金属表面のさびを防ぐ防錆剤(ぼうせいざい)などに使われます。
また、コーンスターチ製造の副生成物を原料として安価に生産できるため、バイオ燃料にも使われます。

※トウモロコシの用途についてはこちらを参照

オリーブ(オリーブオイル)

ボトルに入ったオリーブ・オイル(中央)とオリーブ。オリーブは地中海沿岸の代表的な作物であり、地中海沿岸ではオリーブオイルが料理に広く使われている。出典:Wikimedia Commons, ©Poyraz 72, CC BY-SA 4.0, 2023/7/17閲覧

オリーブ地中海沿岸で栽培される油料作物です。
オリーブは夏に乾燥するため作物栽培が難しい地中海性気候(Cs)によく適応した作物であるため、地中海沿岸ではオリーブが広く栽培されています。

オリーブを圧搾して(押しつぶして)作られる油をオリーブオイルといいます。
オリーブオイルの特徴としては、油を抽出する際に加熱する必要がない点です。
果汁を放置しておくだけで油が分離して表面に集まります。
一方で、パーム油の場合は常温で固体であるため加熱をする必要があり、ごま油の場合も種子を砕いて焙煎する必要があります。

オリーブオイルは地中海沿岸で歴史的に利用されてきました。
イタリア料理などの地中海沿岸の料理では、ドレッシングとして料理によく使われています。
食用以外にも、燃料用や石鹸、医薬品、化粧品などの様々な用途で使われてきました。

ゴマ(ごま油)

畑で開花したゴマ(埼玉県中西部・日高市の巾着田)。ゴマの種子は油を多く含むため、ごま油の原料や食用として栽培される。出典:Wikimedia Commons, ©京浜にけ, CC BY-SA 3.0, 2023/7/18閲覧
ボトルに詰められたごま油。ゴマの種子は油を多く含むため、油を抽出して食用油として利用されている。出典:Wikimedia Commons, ©ILUAMUTHU, CC BY-SA 4.0, 2023/7/18閲覧

ゴマはアフリカ原産(栽培種はインド原産)の作物です。
主に種子を収穫し、そのまま食用にしたり、種子から油(ごま油)を生産します。

ごま油は古くから利用されてきた植物油の一つであり、独特の香りが特徴的な油です。
中華料理ではごま油は香りづけに利用されています。

ゴマの生産量上位は、スーダン、ミャンマー、タンザニア、インドです(2020年)。
ゴマは高温や乾燥に強く寒さに弱いため、熱帯~乾燥帯の国が生産量上位になっています。

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参考工芸作物(嗜好作物・油料作物・繊維作物等)

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参考ダイズ(大豆)の栽培

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参考トウモロコシの栽培(品種・用途)

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参考ヤシ類(ココヤシ・アブラヤシ・ナツメヤシ)

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参考文献

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