地形 系統地理

火山噴出物と火山地形(火山からの噴出物とそれらがつくる地形)

火山活動は地形をつくる原動力(内的営力)です。
火山が噴火すると、地中で高温・高圧になって岩石が融解したマグマが地表に噴出し、これらが降り積もることによって火山地形ができます。

火山から噴出する物質(火山噴出物)も様々なものがあるため、火山噴出物の性質に応じた地形が形成されます。
ここでは、火山噴出物火山地形について順番に見ていきます。

火山噴出物(火山ガス・溶岩・火山砕屑物)

火山の噴火時に地上にでてきたものを総称して火山噴出物といいます。
火山噴出物には、気体(火山ガス)、液体(溶岩)、固体(火山砕屑物)のものがあります。
それぞれについて順番にみていきます。

火山ガス

登別温泉の爆裂火口から噴出する火山ガス(北海道登別市)。火山ガスの成分の影響で火口周囲は赤茶色になっており、爆裂火口の周囲は地獄谷とよばれている。出典:Wikimedia Commons, ©メルビル, CC BY-SA 3.0, 2021/1/9閲覧

火山噴出物のうち、気体のものは火山ガスとよばれます。
火山ガスの成分は9割以上が水蒸気ですが、硫化水素(H2S)や亜硫酸ガス(SO2, 二酸化硫黄)などの有毒成分も一部含みます。

硫黄は重い原子なので、硫化水素や亜硫酸ガスは空気より重い物質です。
そのため凹地にたまりやすく、火山の火口にできる凹地であるカルデラには目に見えない有毒ガスがたまっていることもあり、カルデラ内部に動物の死骸が残されていることがあります。

上の写真は登別温泉(北海道)の地獄谷です。
火山ガスに含まれる成分により地面が赤茶色に変色しています。
火山ガスは腐食性成分を含むので、火口周囲に草木が生えない場所が広がります。

溶岩

パホイホイ溶岩が10 mもの高さでアーチを描くように噴出している(米ハワイ州)。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2021/1/9閲覧

液体の火山噴出物を溶岩といいます。
冷えて固まった後に残る固体も同じく溶岩といいます。

溶岩が流れるさまを溶岩流といい、溶岩流が固まった後もやはり溶岩流といいます。

溶岩は含まれている物質の組成や温度によって粘性(ねばり気)が異なります。
ケイ酸(SiO2, 二酸化ケイ素)含有率が少なかったり温度が低いと粘性が大きくなり、溶岩は火口からあまり動かずに固まります。

火山砕屑物

ピナツボ山由来の火山砕屑物が堆積した地層(フィリピン)。出典:Wikimedia Commons, ©Sindre Helvik, CC BY 3.0, 2021/1/9閲覧

火山噴出物のうち固体のものを火山砕屑物(かざんさいせつぶつ、火砕物)といいます。

火山灰火山弾軽石など様々な物質が噴火によって噴出し、火山周囲に降り積もります。
噴火の際には様々な大きさの火山砕屑物が噴出しますが、重さによって届く範囲が異なります。
重量の重い礫(れき)は火口近くに堆積し、比較的軽い軽石や火山灰は遠くまで到達して堆積します。
火山砕屑物には、火山ガスと一緒に空から降り積もる降下火砕物と斜面を下って堆積する火砕流があります。

溶岩流は液体のみであるのに対し、火砕流固体の火山砕屑物や気体の火山ガスが流れるという違いがあります。
また、火山活動により山の一部が崩壊して、土砂が流れ落ちる土石流もあります。

火山地形(楯状火山・溶岩台地・カルデラなど)

火山の形は噴火の回数や溶岩の粘性によって形が変わります。
以下では、代表的な火山地形として、楯状火山、溶岩台地、溶岩円頂丘、成層火山、カルデラについて紹介します。

楯状火山

楯状火山マウナ・ロア(米ハワイ州・ハワイ島)。マウナ・ロアが噴出する溶岩は粘度が低いため遠くまで流れ、傾斜が緩やかで平べったい山の形を形成する。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2021/1/9閲覧

溶岩の粘性が小さい火山では、溶岩が遠くまで流れていくため、傾斜の緩やかな平べったい火山になります。

溶岩が薄く広く流れて固まったため、盾のような形で盛り上がっている火山を楯状火山といいます。
楯状火山の例として、ハワイ島のマウナ・ロアマウナ・ケアがあります。
どちらも粘性が低く流動性が高い玄武岩質の溶岩が堆積した楯状火山です。

溶岩台地

ランギボ砂漠の溶岩台地(ニュージーランド・北島)。ニュージーランド北島内陸部に位置するランギボ砂漠では、年間1,500-2,000mm程度の降水量があるにも関わらず、火山噴出物が堆積した土壌のため砂漠のように植生が乏しいエリアが広がる。出典:Wikimedia Commons, ©James Dignan, CC BY-SA 3.0, 2021/1/9閲覧

多数の地面の割れ目から噴火してできた溶岩流が元にあった地形をうめつくし、その上に溶岩が積み重なってできた台地を溶岩台地といいます。
楯状火山火口が1か所に集まって火山を作っているのに対し、溶岩台地複数の火口、あるいは多数の大地の割れ目から噴火してできたものです。

溶岩台地の例としては、デカン高原(インド中部~南部)とコロンビア川台地(米国北西部・ワシントン州など)が有名です。

溶岩円頂丘

溶岩円頂丘の典型例である昭和新山(北海道壮瞥町)。デイサイト質の粘性が高い溶岩により溶岩円頂丘が形成されている。出典:Wikimedia Commons, ©Mugu-shisai, CC BY-SA 3.0, 2021/1/9閲覧

溶岩の粘性が高いと流動性が低くなり、火口からほとんど流れずに堆積します。
このようにしてできた地形を溶岩円頂丘(溶岩ドーム)といいます。
溶岩円頂丘はドーム型の形をしていて、上空からは円形、地上からは円墳のように盛り上がったように見えます。

成層火山

静岡県富士市から望む富士山(表富士)。富士山は複数の噴火による溶岩や火山砕屑物が積み重なったできた成層火山である。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2022/10/30閲覧

ほぼ同一の火口からの度重なる噴火により、溶岩流と火山砕屑物が交互に何重にも積み重なり、円錐状の形をした火山を成層火山といいます。
成層火山は麓は傾斜がゆるやかで、頂上に向かうにしたがって傾斜が急になります。

有名な成層火山が富士山です。
成層火山は数が多いので富士山と似たような形状の山が日本国内に多数あり、〇〇富士とよばれています。
たとえば、同じく成層火山の羊蹄山(ようていざん、北海道・後志地方)は蝦夷富士(えぞふじ)とも称されています。

参考

富士山は世界遺産に登録されていますが、自然遺産ではなく文化遺産として登録されています。その理由は、富士山のような成層火山は世界中にたくさんあり、植生が乏しいこともあって自然遺産としての登録が難しいからです。日本では人気があり、たくさんの人が富士山に登るため、ごみなどの環境問題も影響したようです。

そのため、富士山は山岳信仰や芸術との関連を前面に押して文化遺産として登録することになりました(2013年登録)。

カルデラ

キラウエア火山のカルデラ(米ハワイ州・ハワイ島)。中心の円弧がハレマウマウ火口。この写真の撮影後、2018年の噴火で大きく陥没し、現在では火口の形が変わっている。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2021/1/9閲覧

カルデラは火山の火口に存在する中央が陥没した凹地です。

火口とカルデラは凹地の直径で区別され、おおよそ1-2 km未満のものを火口、それ以上のものをカルデラといいます。

カルデラは中央部が陥没して外周に円を描くように外輪山に取り囲まれます。
全方位が凹地になっている場合は雨水が排出されずに凹地にたまるのでカルデラ湖になります。
カルデラ湖の例としては、摩周湖(北海道)、支笏湖(北海道)、十和田湖(青森・秋田)、田沢湖(秋田)、池田湖(鹿児島)などがあります。

上の写真のキラウエア火山(ハワイ)も全方位が凹地ですが、水がたまらず凹地の底が見えています。
キラウエア火山のように火山活動が活発な場合は、水がたまる前に高温で全て蒸発するためカルデラ湖になりません。

カルデラの中には、山体崩壊により山の一部が崩れたため、馬のひづめのような形の馬蹄型(U字型)の形をしたものもあります(下の写真のセント・へレンズ山(米ワシントン州))。

セント・へレンズ山(米ワシントン州)のカルデラ。1980年の噴火により山体崩壊をおこし、カルデラが馬蹄型(U字型)になっている。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2021/1/9閲覧

参考文献

火山とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/1/9閲覧
火砕流とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/1/9閲覧
溶岩台地とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/1/9閲覧
溶岩円頂丘 ウィキペディア 2021/1/9閲覧
成層火山とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/1/9閲覧
富士山-信仰の対象と芸術の源泉 ウィキペディア 2021/1/9閲覧
カルデラ コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/1/9閲覧
2.火山の活動による地形 国土地理院 2021/1/9閲覧
カルデラ湖とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2021/1/31閲覧

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