漁業自体は世界各地で行われていますが、その漁獲量は海域ごとに大きく異なります。
このページでは、世界の漁場の中でも好漁場の条件(光と栄養塩の存在)を満たし、伝統的に漁業が盛んな漁場(太平洋北西部漁場・大西洋北東部漁場・大西洋北西部漁場・太平洋南東部漁場)について解説します。
世界の主要な漁場

上図は世界の海洋をいくつかのブロックに分割し、海域ごとの漁獲量の割合を示したものです。
海域ごとに漁獲量や獲れる魚の種類に違いがあり、魚が多く集まる場所には人々が集まり漁を行う漁場が形成されます。
漁場は漁業を行う水域であり、漁場ごとに漁獲量や魚の種類は大きく変わります。
漁獲量が多く水産資源が豊富な漁場では、水生生物のエサとなる植物プランクトンが多数生息し、植物プランクトンの増殖に必要な光と栄養塩類も豊富に存在します。
太陽光は水深が浅い場所にしか届かず、栄養塩は海底まで沈むため、好漁場を形成する条件となる光と栄養塩類が両立する場所は限られています。
このような条件を満たす場所としては、海底が浅い大陸棚や浅堆(バンク)、暖流と寒流がぶつかる潮境(潮目)、海底から湧昇流が上がる場所などがあります。
世界の漁場の中でも歴史が長く、現在でも漁獲量が多い海域を世界三大(四大)漁場と呼びます。
世界三大漁場は、北西太平洋(日本近海)、北東大西洋(北海のドッガーバンク周辺)、北西大西洋(カナダのニューファンドランド島沖のグランドバンク周辺)の3か所であり、これに南東太平洋(南米のペルー沖)を加えたものを世界四大漁場と呼びます。
以下では、これらの漁場について解説します。
太平洋北西部漁場

太平洋北西部漁場(北西太平洋漁場)は、日本近海を中心とした漁場で、世界三大漁場の一つです。
地理的には、日本の太平洋岸を中心にオホーツク海から日本海、黄海、東シナ海にかけて広がります。
この海域には太平洋と日本海に潮境(潮目)が存在し、黄海~東シナ海には大陸棚が広がるります。
ロシア極東地方のアムール川は、広大な亜寒帯林(冷帯林)のタイガの中を流れるため、タイガから流れ出た豊富な栄養塩を海に運びます。
このように日本近海には栄養塩が豊富な海域が多く、植物プランクトンが増殖するためエサが豊富で魚も数多く集まる好漁場を形成しています。
太平洋北西部漁場は漁獲量も世界一の漁場であり、魚の種類も豊富です。
北部ではサケ(鮭)、マス(鱒)、スケトウダラ、カニ(蟹)の漁獲量が多く、南部ではイワシ(鰯)、サバ(鯖)、カツオ(鰹)、マグロ(鮪)などが多いです。
大西洋北東部漁場

大西洋北東部漁場(北東大西洋漁場)は、北西ヨーロッパ近海を中心とした漁場で、世界三大漁場の一つです。
地理的には、アイルランド・イギリス周辺からスカンジナビア半島にかけて広がる大陸棚の海域と、アイスランド島周辺の潮境(潮目)が主な漁場です。
この海域では、北西ヨーロッパ沿岸には暖流であるノルウェー海流が北上し、グリーンランドの東側では寒流である東グリーンランド海流が南下します。
このため、間の海域(アイスランド島周辺)では、暖流と寒流から流れ込んだ海水が潮境(潮目)を形成し、一帯は好漁場となります。
北西ヨーロッパ沿岸の大陸棚の中でも、北海(イギリスとスカンジナビア半島の間)に位置するドッガーバンクやグレートフィッシャーバンクでは、浅堆が発達して好漁場として知られています。
この漁場は、近隣にヨーロッパという人口が多い大消費地を抱えるため古くから開発されてきた漁場です。
この漁場の主な出漁国は、近隣に位置するイギリスやアイスランド、ノルウェー、デンマーク、スペインなどです。
漁獲される主な魚としては、ニシン(鰊)やタラ(鱈)、カレイ(鰈)、サバ(鯖)などです。
参考

タラ戦争
タラは大西洋北東部漁場の代表的な漁獲対象であり、1950年代から1970年代にかけて、イギリスとアイスランドの間で漁業権をめぐり武力衝突が複数回発生しました。
当時は東西冷戦中であり、冷戦(Cold War)とタラ(Cod)をもじってタラ戦争(Cod War)と呼ばれています。
イギリスとアイスランドは歴史的に漁業権をめぐる争いを繰り返してきましたが、特に蒸気船の実用化以降はイギリスの漁船の漁船がアイスランド周辺に来ることが多くなりました。
タラ戦争の発端はアイスランドの領海拡大です。
1952年にアイスランドが自国の領海を4海里(7.4km)への拡大を宣言し、続けて1958年には領海外の12海里(22km)の範囲内での外国船の操業を制限しました。
これに反発するイギリスは漁船を軍艦に護衛させて漁業を行う事態となり、双方が軍艦を派遣して衝突する事態となりました。
その後もアイスランドは漁業権の拡大を宣言し、そのたびに紛争になりましたが、最終的には1976年にアイスランドに対して沿岸から200海里(370km)の排他的経済水域が認められることとなりました。
現在では、排他的経済水域は国際的にも広く認められ、日本をはじめとする各国が沿岸から200海里以内の排他的経済水域を設定しています。
大西洋北西部漁場

大西洋北西部漁場(北西大西洋漁場)は、北アメリカ大陸北東部沿岸に広がる漁場で、世界三大漁場の一つです。
特にカナダ東部のニューファンドランド島近海が好漁場として知られています。
この海域は、米国東海岸を北上する暖流のメキシコ湾流と北極海から南下してきた寒流のラブラドル海流がぶつかる潮境(潮目)です。
ニューファンドランド島の南東沖には大陸棚が広がり、潮境であることも相まって好漁場として知られています。
中でも、大陸棚中の浅堆であるグランドバンクが有名です。
この漁場の主な出漁国は、沿岸国であるアメリカ合衆国やカナダです。
漁獲される主な魚としては、タラ(鱈)やニシン(鰊)、サケ(鮭)などです。
この海域では、20世紀後半に漁法や魚群探知の技術革新により漁獲量が増大し、タラの乱獲につながりました。
この結果、1992年にタラの漁獲量が激減し、その後は10年間にわたり禁漁期間を設けましたが、現在でもタラの資源量は以前の10%程度までしか回復していません。
現在では、カナダ政府が漁獲枠を設定・管理した上で、タラの漁業が再開されています。
太平洋南東部漁場

太平洋南東部漁場(南東大西洋漁場)は、南アメリカ大陸北西岸に広がる漁場です。
南アメリカ大陸西海岸を北上してきた寒流のペルー海流(フンボルト海流)は、チリ・ペルー沿岸で南東貿易風に押されて西に進んで南赤道海流となり、そのまま太平洋を横断します。
南東貿易風が強く吹くと、海水を西に動かす力も強くなり、空いた隙間に深海からの湧昇流が上がってきます。
湧昇流は海底に積み上がった栄養塩(窒素やリンなど)を運ぶため、貿易風が強いほど植物プランクトンが増殖し、魚も多く集まります。
このため、チリ・ペルー沿岸では好漁場が広がり、アンチョビ(カタクチイワシ)を中心とした漁業が盛んです。
この漁場の主な出漁国は、好漁場が広がるペルーやチリです。
漁獲される主な魚としては、アンチョビ(カタクチイワシ)などです。
この海域では、南赤道海流が海水を西に運び、栄養塩をもたらす湧昇流が発生することが好漁場の鍵となります。
このため、エルニーニョ現象が発生して貿易風が弱まると、南赤道海流が弱まり湧昇流も上がって来れなくなります。
この結果、栄養塩が供給されずに植物プランクトンが減少し、アンチョビの漁獲量も減少します。

参考文献
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湧昇 環境用語集 EICネット 一般財団法人環境イノベーション情報機構 2026/9/2閲覧