気候 系統地理

海流とは(成因・風・暖流と寒流・大循環)

地表の7割を占める海洋は、一定方向に流れる海流をつくりながら循環しています。
海流は低緯度地域の暖かい海水を高緯度地域に運んだり、反対に高緯度地域の冷たい海水を低緯度地域に運ぶことで、地球上で熱交換の役割を果たし、沿岸の気候に大きな影響を与えます。
このページでは、海流の種類と気候への影響、地球上の大循環について解説します。

海流とは

北大西洋の暖流。アメリカ合衆国東海岸を北上する暖流であるメキシコ湾流は、暖かい海水を高緯度側に運ぶ。メキシコ湾流は北大西洋海流、ノルウェー海流につながり、北西ヨーロッパに暖かい海水をもたらし、高緯度にもかかわらず温暖で湿潤な気候(西岸海洋性気候)を作り出す。出典:Wikimedia Commons, ©(作者不詳), CC BY-SA 3.0, 2026/6/25閲覧

海流は、海洋において海水が一定方向に帯状に動く流れです。
海水はその時々の一瞬では様々な方向に動いていますが、長い時間を平均すると同じ方向に動くことが知られています。
河川とは異なり、時期によって水が流れる方向が変わることがあります。

一定方向に動く海流の成因としては、卓越風(ある期間に一定方向に吹きやすい風)や海水の塩分濃度の差(密度差)などがあり、時には川のように速い流れとなることもあります。
海流は一方向に動いて終わりではなく、非常に大きなスケール(規模)で大洋を循環しており、非常に長い時間をかけて同じ場所に戻ってきます。
海水面付近を流れる表層流と深海を流れる深層流はつながっており、両者を合わせて地球規模で大きな循環を形成しています。

海流の成因

補流の模式図。補流は、他の海流による海水の動きを補うように動く海流である。この模式図では、卓越風に押されて吹送流が海洋の西端に向かって動いた時の状態を示している。海洋西端に海水が蓄積して海面が盛り上がり、海水が失われた海洋東端では海洋深層から海水が湧き上がる湧昇流が発生する。このような海水の偏りを元に戻そうとする形で、2つの吹送流の間を逆方向に向かって動く海流が補流である。

海流が発生する原因としては、卓越風(ある期間に一定方向に吹きやすい風)や地球の自転(コリオリの力)、塩分濃度の差(密度差)などがあります。
この中でも卓越風は大洋を循環する表層流の主要な成因です。
卓越風に押されて一定方向に流れる海流を吹送流と呼び、海水の密度差に起因する海流を密度流と呼びます。
また、このような海流によって特定の場所に海水が集まったり少なくなるため、それを補うように流れる海流を補流と呼びます。

これらの海流の成因別分類については、次のページで詳しく解説しています。

参考海流の成因別分類(吹送流・補流・傾斜流・密度流)

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風と海流(吹送流)

吹送流の模式図。吹送流は、海水面で風に引っ張られる形で一定方向に動く海流である。海洋表面は大気に接しており、大気が一定方向に動くと境界で摩擦が発生して引っ張られる形で海水も大気と同じ方向に動く。このため、卓越風(ある期間に一定方向に吹きやすい風)が発生する場所では、卓越風に引っ張られる形で同じ方向に海流が生じる。吹送流は海水面に近い表層で発生し(表層流)、海水面に近いほど海流が強くなり、深い場所では動きが弱くなる。

長期間にわたって海水面近くを同じ方向に風が吹くと、大気と海水面の摩擦により、海水が大気の流れ(風)に引っ張られて一定方向に動きます。
このような風によって引き起こされる吹送流は、海水面付近の海流(表層流)に大きな影響を与えます。
大洋レベルの海洋の大循環を構成するような大規模な吹送流は、卓越風(ある期間に一定方向に吹きやすい風)によって引き起こされます。
大規模な吹送流の原動力となる卓越風としては、年間通して同じ方向に吹く恒常風と季節によって風向きが変わる季節風(モンスーン)があります。
特に恒常風は、年間通して安定して海流を引き起こすため、海洋の大循環の原動力となります。

参考海洋の大循環(世界の海流)

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卓越風と海流

インドにおけるモンスーン(季節風)の風向き。冬は北東からの風(黄緑)が吹き、夏は南西からの風(赤色)が吹く。出典を加工して作成。出典:Wikimedia Commons, by Saravask based on work ©Planemad and Nichalp, CC BY-SA 3.0, 2026/1/24閲覧

ここでは、季節風(モンスーン)の影響を受けて季節によって風向きが変わる海流について解説します。
インド洋北部では、季節により風向きが変わる季節風(モンスーン)の風向きに合わせて海流の方向も季節によって変化します。

インド周辺では季節により卓越風(ある期間に一定方向に吹きやすい風)の風向きが逆転します。
この原因としては、インド周辺では北側に陸地(ユーラシア大陸)、南側に海洋(インド洋)が広がるため、陸地と海洋の熱容量(物質の温度変化しやすさ)の差が顕著に見られることが挙げられます。
陸地は熱容量が小さいので暖まりやすく冷めやすいのに対し、海洋は熱容量が大きいので暖まりにくく冷めにくいです。
このため、夏季には陸側が暖められて高温になり上昇気流が発生し、高気圧の海側から低気圧の陸側に向かって南西季節風(海風)が吹きます。
反対に冬季には、陸側が冷やされて低温になり下降気流が発生し、高気圧の陸側から低気圧の海側に向かって北東季節風(陸風)が吹きます。

以上のような季節風の風向きは、海流の流れにも影響をおよぼします。
夏季には、陸側が高温となるため南西季節風(海風)が優勢であり、海流もそれに合わせて時計回り(インド周辺では東向き)に流れます。
反対に冬季には陸側が低温となるため北東季節風(陸風)が優勢であり、それに合わせて海流も反時計回り(インド周辺では西向き)に流れます。
ちなみに、この地域は恒常風である北東貿易風が吹く緯度帯ですが、実際には季節風(モンスーン)の影響が大きく、貿易風の影響が季節風に上書きされるような季節変動となります。
以上のように、インド洋は北部で半閉鎖的な構造となっているため、海流も季節風の影響を受けて季節ごとに逆転します。

一方、同じインド洋であっても南半球側では海陸風の原因となる大陸が存在しないため、年間通して安定して反時計回りの海流の循環が見られます。

海流と熱交換・気候

海洋性気候(左)と大陸性気候(右)の風景の違い。左は海岸近くまで森林が見られる年中温暖なタモン湾のリゾートビーチ(米領グアム島)の写真であり、右は大陸内陸部に位置して非常に乾燥したSaigachiy保護区(ウズベキスタン北西部)の写真である。沿岸部や離島など海洋に接している地域では、水蒸気の供給源であり熱容量も大きい海洋の影響で、安定した降水に恵まれ、昼夜や季節による気温差(日較差や年較差)が小さく安定した気候となる。一方、海洋から離れた大陸内陸部では、降水が限られて乾燥し、昼夜や季節による気温差(日較差や年較差)が大きくなりやすい。出典:(左)Wikimedia Commons, ©Luke Ma from Taipei, Taiwan ROC, CC BY 2.0, 2026/7/9閲覧 (右)Wikimedia Commons, ©Xurmet Jalimbetov, CC BY-SA 4.0, 2026/7/9閲覧

海流は地球上の別の地域に熱を運ぶ働きがあるため、海流が流れる向きによって沿岸部や離島の気候に影響を及ぼします。
海水は陸地や空気よりも熱容量が大きい(物質の温度変化に大きなエネルギーが必要)ため、温度が変化しづらく、周囲を温めたり冷やしたりしながらゆっくりと温度変化していきます。
海水は低緯度地域と高緯度地域を移動しながら循環しているため、低緯度側で温められた海水を高緯度側に運んで周囲を温めたり、逆に高緯度側で冷やされた海水を低緯度側に運んで周囲を冷やします。
このような海流の働きを熱交換と呼び、地球上の気候を穏やかにして緯度による気温変化を緩和する働きがあります。

暖流・寒流

世界の海流(表層流)の流れ。赤色は暖流、青色は寒流を表す。海洋の比較的浅い場所を流れる表層流は、地球上を循環している。表層流は年間通して同じ方向に吹く恒常風(貿易風や偏西風)に海水の表層が押されて一定方向に流れることで発生し、大陸を避けるように移動して再び同じ場所に戻るように循環している。出典を加工して作成。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2026/6/14閲覧

海流には、赤道に近く暖かい低緯度地域から寒冷な高緯度地域に向けて流れる暖流と、極に近く寒冷な高緯度地域から温暖な低緯度地域に流れる寒流があります。

暖流は、暖かい低緯度地域で温められた海水なので、周囲の空気を暖めながら自身は冷めていく海流です。
暖流は周囲よりも温かいため上昇気流が発生し、暖流の沿岸では暖かく雨の多い温暖湿潤な気候になります。

反対に寒流は、寒い高緯度地域で冷やされた海水なので、周囲の空気を冷やしながら自身は暖められる海流です。
寒流は海水面の空気を冷ますため雨雲ができづらくなり、沿岸は寒くて雨が少ない冷涼で乾燥した気候になります。

海流がもたらす気候の詳細(海洋性気候と大陸性気候、西岸気候と東岸気候)については、次のページで解説しています。

参考海洋と気候(海洋性気候と大陸性気候・西岸気候と東岸気候)

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海洋の大循環

海流は、風や地形、塩分濃度などの影響を受けて一定方向に進み、長い年月をかけて同じ場所に戻ります。
このような海流による循環は、海水面付近でも深海でも見ることができます。
海水面付近の海流(表層流)は、主に風の影響を受けて発生するため、表層流の循環を風成循環と呼びます。
これに対して、深海の海流(深層流)は、主に海水の密度差(主に塩分濃度の差)に起因して発生する海流であり、深層流が関わる循環を熱塩循環と呼びます。
海流は地球上の広い範囲を移動し、低緯度地域と高緯度地域を移動しながら表層流として循環したり、海水面近くの表層と太陽光が届かない深層の間を行き来する循環も見られます。

表層流と風成循環

太平洋の海流。暖流を赤色、寒流を青色で表記している。赤道付近には貿易風を原動力とする西向きの赤道海流が北半球と南半球に存在し、その間を赤道反流が逆向きに流れる。赤道海流は大洋の西端で陸地(大陸東岸)に阻まれて高緯度側に移動して暖流となる。中緯度に到達すると偏西風の影響で東向きの海流となり(北太平洋海流と南太平洋海流)、大洋の東端で陸地(大陸西岸)に阻まれて南北に移動する。出典を加工して作成。出典:Wikimedia Commons, ©Chtototakoe, CC BY-SA 3.0, 2026/6/14閲覧

大洋で海水面付近のごく浅い場所の海流を表層流と呼びます。
表層流は、太陽光が届く程度の浅い場所の海水の動きであり、大気と接していることから風の影響を受けます。
表層流は長期間にわたって同じ方向に吹く風である卓越風(主に年間通して同じ方向に吹く恒常風)の影響を受けます。
赤道からやや離れた低緯度地域では貿易風、日本のような中緯度地域では偏西風に押されて大気と海水の境界面の摩擦により引っ張られ、風と同じ方向に向かう海流が発生します。
卓越風の影響で海水が一定方向に流されると、玉突きで卓越風が無い場所でも海流が発生します。
この結果、地球上では低緯度地域と高緯度地域の間を移動しながら元の場所に戻る海流の循環が形成されます。
この循環を構成する海流は、卓越風(恒常風)によって進む方向が決まるため、風成循環と呼ばれます。

参考海洋の大循環(世界の海流)

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深層流と熱塩循環

世界の表層流と深層流の循環。赤色が表層流、青色が深層流であり、色が変わる場所では沈降や湧昇による海水の上下移動がある。海洋は風や地形、塩分濃度などの影響を受けながら絶えず循環している。海水面付近の浅い領域の海流を表層流と呼び、地表の風の影響を受けず、太陽光も届かない深い海域を流れる海流を深層流と呼ぶ。表層流と深層流は地球規模で循環しており、表層流が沈降して深層流になったり、深層流が湧昇して表層流となる場所も存在する。出典を加工して作成。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2026/6/14閲覧

表層流に対し、大洋で海水面から離れた深い場所の海流を深層流と呼びます。
おおむね水深数百mより深い場所であり、表層流と同様に地球規模で海流による循環が見られます。
表層流が卓越風の影響を受けて海流の向きが決まるのに対し、深層流は水温と密度(塩分濃度)の違いにより流れる方向が決まるため、熱塩循環と呼ばれます。
表層流と深層流は別々に流れており、同じ場所で海水面付近と深海で海流の向きが違うこともあります。

熱塩循環による海流が発生する原因は、海水の密度変化によって説明できます。
高緯度地域では低温や海氷ができるために海水の密度が高くなり、濃度が高く重い海水が表層から深層に向かって沈んでいきます(密度流)。
このとき大洋の海水全体が押されます。
押された海水は圧力を逃がすために、水温が高く海水の密度が低い低緯度地域で深層から表層に向かって上昇流が発生します。
このため、深層では高緯度地域から低緯度地域に向けて海水が流れ(深層流)、表層では低緯度地域から高緯度地域に向けて流れます(表層流)。
このような熱塩循環で海水の沈降や上昇がおきる場所は、緯度だけではなく、海水の流入などによる塩分濃度変化なども影響します。

参考文献

地理用語研究会編「地理用語集」山川出版社(2024)
海流(カイリュウ)とは? コトバンク デジタル大辞泉、日本大百科全書(ニッポニカ)、改訂新版 世界大百科事典 2026/6/30閲覧
海洋の循環 気象庁 2026/6/17閲覧
吹送流(スイソウリュウ)とは? コトバンク 百科事典マイペディア 2026/7/1閲覧
吹走流(すいそうりゅう)とは?  コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2026/7/1閲覧
密度流(ミツドリュウ)とは? コトバンク デジタル大辞泉、日本大百科全書(ニッポニカ)、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2026/7/1閲覧
補流(ホリュウ)とは? コトバンク デジタル大辞泉、精選版 日本国語大辞典 2026/7/1閲覧
季節風海流(きせつふうかいりゅう)とは? コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2026/8/10閲覧
Indian Ocean Currents, Comprehensive UPSC Notes – Topicwise for Prelims, Mains and Optional 2026/8/10閲覧
海洋大循環(カイヨウダイジュンカン)とは? コトバンク デジタル大辞泉、日本大百科全書(ニッポニカ)、改訂新版 世界大百科事典 2026/6/14閲覧
海洋大循環とは?わかりやすい概要とメカニズム、観測方法 Beyond Our Planet NTT R&D Website 2026/8/10閲覧
深層流(シンソウリュウ)とは? コトバンク デジタル大辞泉、日本大百科全書(ニッポニカ)、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2026/6/15閲覧
海流はどうしておきるの | 海の自然のなるほど 公益財団法人 日本海事広報協会 2026/6/15閲覧
深層循環の変動について 気象庁 2026/6/15閲覧

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