地中海式農業では、夏に乾燥する気候に合わせた様々な樹木作物が栽培されます。
ここでは、地中海式農業で栽培される作物について紹介します。
地中海性気候(Cs)と地中海式農業の関係については、こちらのページでまとめています。
地中海式農業の作物
ここでは、地中海式農業で栽培される代表的な作物について紹介します。
地中海性気候(Cs)の地域では、作物が生育するはずの夏に乾燥する気候のため、乾燥に強い作物しか栽培することができません。
そのため、地中海性気候に適応した作物が広く栽培されています。
地中海式農業で栽培される作物は、乾燥に強い樹木作物が特徴的です。
オリーブやコルクガシ、ゲッケイジュ(月桂樹、香辛料ローリエの原料)などの樹木作物は、作物として栽培されるだけではなく地中海沿岸の硬葉樹林の代表的な構成樹でもあります。
他にも、オレンジやレモン、イチジクなどの果樹作物がよく栽培されています。
同じ地中海式農業でも、地中海沿岸と新大陸(米国西海岸、チリ南部、オーストラリア南西部)では栽培される作物の傾向が違います。
オリーブやコルクガシは全世界の生産量の大半を地中海沿岸が占めます。
一方、新大陸では適地適作の企業的農業により、オレンジやブドウのような果樹作物の大規模栽培が行われています。
また、地中海沿岸では二圃式農業による冬の小麦の栽培と羊やヤギの移牧(夏冬で放牧地を行き来)を組み合わた半農半牧の農業形態が伝統的に行われてきました。
一方、新大陸では適地適作による地域単位の分業が進んでいるので、地中海性気候の地域では小麦の栽培や家畜の飼育はあまり行われていません。
以下では、地中海式農業の代表的な作物であるオリーブ、コルクガシ、果樹作物について順に紹介します。
地中海性気候と地中海式農業の関係については、次のページで解説しています。
参考地中海性気候(Cs)と地中海式農業
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オリーブ
オリーブは硬葉樹林の代表的な樹木である一方、地中海周辺で栽培される樹木作物でもあります。
オリーブの実はそのまま食べること(テーブルオリーブ、約20%)もありますが、主にオリーブオイルの原料(油脂作物、約80%)になります。
夏に乾燥するため栽培できる作物が限られる地中海性沿岸では重要な作物です。
そのため、イタリア料理などの地中海沿岸地域ではオリーブオイルが多用されます。
オリーブの栽培地域と地中海性気候(Cs)の地域の分布はよく一致しているため、気候と農業の対応関係がはっきりと見える作物です。
これは、地中海性気候以外の温帯地域でも栽培されるブドウなどとは対照的です。
オリーブの生産量上位の国と世界全体に占める割合(カッコ内)は、スペイン(31.4%)、ギリシャ(13.0%)、イタリア(12.3%)、トルコ(10.1%)です(2017年)。
生産量の大半が地中海沿岸諸国であるのが特徴です。
コルクガシ
コルクガシは地中海沿岸(西部)で生育する樹木作物です。
コルクガシの木から剥ぎ取った樹皮は弾力性があるため、瓶詰めしたワインボトルを密閉するための栓(コルク)として使われます。
また、樹皮の保温性を活かして建物の断熱材としても利用されることもあります。
弾力性があるため緩衝材や密閉材として歴史的に重要な役割を果たしていましたが、自由に成形できる天然ゴムの登場により取って代わられるようになりました。
現在では、ワインボトルの栓としての使用がコルクの収入の多くを占めます。
コルクの生産量の約半分はポルトガルが占め、次いでスペインやイタリア、アルジェリアなどの地中海沿岸の中でも西側に位置する国々が生産量上位を占めます。
果樹作物
夏に乾燥する地中海性気候の地域では乾燥に強い果樹作物の栽培が盛んです。
代表的な作物として、ブドウ、柑橘類(オレンジやレモン)、イチジクなどがあります。
オリーブの栽培が地中海沿岸に限られる一方、これらの果樹作物は南北アメリカ大陸の地中海性気候(Cs)の地域でも広く栽培されています。
たとえば、チリ南部の地中海性気候の地域はワイン用ブドウの栽培が盛んです。
米国のカリフォルニア州では、ブドウやオレンジ、イチジクなどの気候に合わせた果樹作物が大量に栽培されています(適地適作)。
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参考文献
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データブックオブ・ザ・ワールド2020年版 二宮書店
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チリ|これでバッチリ! ワインの基礎知識 キリンホールディングス株式会社 2023/6/20閲覧
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