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様々な嗜好作物(茶・コーヒー・カカオ・香辛料他)

農産物の中には、単に生命維持のために必要な栄養を取るためではなく、嗜好品(しこうひん)として味や香りを楽しむ目的で消費するものもあります。
このページでは、嗜好品を生産するために栽培される嗜好作物についてまとめます。

嗜好作物とは

ホイップクリームとチョコレートフレークを添えたホットチョコレート。19世紀に固形チョコレートが開発されるまでは、チョコレートは飲み物として利用されていた。出典:Wikimedia Commons, ©Itisdacurlz, CC BY 3.0, 2023/5/28閲覧

生きるための栄養補給に必ずしも必要でないものを嗜好品(しこうひん)といいます。
嗜好品の原料を得る目的で栽培される作物を嗜好作物といいます。
嗜好作物は、快楽あるいは精神的刺激や休養を得るために用いられる作物と定義されてます。

嗜好品の具体例としては、飲料に用いられるお茶コーヒー、菓子に使われるチョコレート、喫煙目的のたばこ、調味料として用いられる香辛料などがあります。
これらを生産するために栽培されるチャノキコーヒーノキカカオコショウタバコなどが嗜好作物です。

嗜好作物の多くは熱帯~亜熱帯(熱帯隣接地域)で栽培されます。
特に需要が大きいものは、熱帯のプランテーションで大規模栽培が行われます。
熱帯のプランテーションで栽培・生産される商品作物としては、茶やコーヒーなどがあります。

様々な嗜好作物

ここからは、個別の嗜好作物について見ていきます。
以下では、茶、コーヒー、カカオ、香辛料、タバコについて順番にまとめます。

茶(チャノキ)

スリランカ中央高原の茶畑(セイロン島内陸部・ヌワラエリヤ近郊)。標高1,900mの高原地帯の水はけのよい斜面に茶畑が広がる。スリランカの茶畑の中で最も標高が高い産地であり、生産された紅茶(セイロンティー)はハイグロウン(高地産)とよばれる。出典:Wikimedia Commons, ©Vyacheslav Argenberg, CC BY 4.0, 2023/5/24閲覧

チャノキの葉を収穫して乾燥させたものです。茶葉を水や湯で煮出して(煎じて)飲みます。
東アジアで伝統的に飲まれていましたが、17世紀以降に欧米でも普及しました。
チャノキは主に熱帯~亜熱帯のプランテーションで栽培されますが、比較的寒さに強いため日本の静岡などでも栽培されます。

茶の種類や栽培については、次のページでまとめています。

参考お茶の種類と栽培(チャノキ・緑茶と紅茶と烏龍茶の違い)

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コーヒー豆(コーヒーノキ)

果実を実らせたコーヒーノキ(ブラジル南東部・ミナスジェライス州)。出典:Wikimedia Commons, ©Fernando Rebelo, CC BY-SA 3.0, 2023/5/24閲覧

コーヒーコーヒーノキの種子(コーヒー豆)を乾燥させたものです。
コーヒー豆を焙煎し、水や湯で抽出して飲用します。

16世紀以降に欧米で普及し、現在では世界中で飲まれています。
一方で生産地は熱帯の高原地帯のプランテーションに限られるため、国際的に広く取引される商品作物の1つです。

コーヒーとコーヒーノキの栽培については、次のページでまとめています。

参考コーヒーの栽培(コーヒーノキ・コーヒーベルト)

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カカオ豆(カカオ)

カカオの木とカカオの果実(米国南部・ワシントンD.C.のアメリカ植物庭園)。手前側にはカカオの果実(カカオポッド)の断面、奥には果実が実ったカカオの木が映る。カカオの種子をカカオ豆とよび、カカオ豆を原料としてチョコレートが作られる。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2023/5/25閲覧

カカオの種子をカカオ豆といい、チョコレートやココアの原料として使われます。

カカオは中南米原産の作物で、現在ではアフリカのギニア湾周辺を中心に赤道周辺の熱帯地域で栽培されている作物です。
欧米を中心に世界中で需要がある一方で産地が限られるため、国際的に広く取引されている商品作物です。

他の植物の日陰で育つ必要があるため、プランテーションのような大規模な単作が難しい作物です。
そのため、茶やコーヒーとは異なり小規模農家によりバナナなどと一緒に栽培されています。

カカオの栽培と利用については次のページでまとめています。

参考カカオの栽培(チョコレート・ココア・カカオベルト)

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香辛料

市場に並ぶ色とりどりの香辛料(モロッコ南部・アガディール中央市場)。香辛料は食材の香り付けや辛味づけなどに用いられる。出典:Wikimedia Commons, ©Bertrand Devouard, CC BY-SA 3.0, 2023/6/10閲覧

香辛料は食材の香りづけや辛味づけなどに利用される植物由来の調味料です。
香辛料は食材の臭みを消したり食欲をそそる香りをつけることができるため肉料理には欠かせません。
しかし、香辛料には熱帯や亜熱帯など限られた地域でしか栽培されていない作物が多いです。
そこで、15世紀末以降の大航海時代にはヨーロッパの人々がアジアに拠点を築き、コショウなどの香辛料の交易を行いました。

香辛料については次のページでまとめています。

参考香辛料(コショウ・ナツメグ・クローブ)

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タバコ

タバコの栽培(米国北東部・ペンシルベニア州)。出典:Wikimedia Commons, ©Derek Ramsey / derekramsey.com, CC BY-SA 4.0, 2023/6/10閲覧

タバコ中南米の熱帯地域原産の作物で、喫煙目的で栽培される工芸作物です。
中南米では儀式用として古くから利用されてきましたが、大航海時代の16世紀にヨーロッパ人によって持ち帰られて利用されるようになりました。

作物としてのタバコの中で製品原料として使用するのは葉の部分です。
これを葉たばこといいます。
収穫したタバコの葉(葉たばこ)は乾燥後に1年以上熟成させます。
その後、製品用にブレンドし、切り刻んだ葉たばこを紙で巻いて製品(紙巻きたばこ)ができあがります。

葉たばこの生産量上位は中国、ブラジル、インド、米国です。
ブラジル、トルコ、キューバでは重要な輸出品になっています。
世界全体の生産量は1998年をピークに頭打ちになっています。

たばこの喫煙は依存性が強く、本人や周りにいる人々の健康被害につながるため、先進国ではたばこの消費量は減少傾向です。
その一方で、経済発展や人口増が続くアフリカなどたばこの消費量が伸びている地域もあります。

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参考文献

西山 喜一「嗜好料作物の需給動向について」熱帯農業 39(4) 264-270 (1995)
嗜好作物(しこうさくもつ)とは? コトバンク 百科事典マイペディア 2023/5/21閲覧
嗜好料作物(しこうりょうさくもつ)とは? コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典  2023/5/21閲覧
地理用語研究会編「地理用語集第2版A・B共用」山川出版社(2019)
工芸作物 ウィキペディア 2023/5/21閲覧
農作物には工芸作物というものがあると聞きました。工芸作物とはどのようなものを言うのですか? 農林水産省 2023/4/29閲覧
タバコ ウィキペディア 2023/6/10閲覧
History of tobacco, Wikipedia 2023/6/10閲覧
たばこの基礎知識 JT(日本たばこ産業株式会社) 2023/6/10閲覧
国別煙草消費概況 ウィキペディア 2023/6/10閲覧

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