このページでは、イモ類(ジャガイモ・キャッサバ・タロイモ・ヤムイモ・サツマイモ)についてまとめます。
イモ類は炭水化物が多く含まれているため、穀物の代わりに人間の主食として利用される地域もあります。
個別の作物の詳細については以下のリンク先をご覧ください。
【イモ類:ジャガイモ・キャッサバ/タロイモ/ヤムイモ】
芋(イモ)とは
芋(イモ)とは地中で植物の根や茎(くき)の一部が養分(デンプン)を蓄えてふくらんだ部位を指します。
イモは植物の種類の分類ではありません。
〇〇イモとよばれている植物は、あくまでその植物の芋という部位が人間の食用に適していることから名づけられたものに過ぎません。
ジャガイモはナス目ナス科の植物であるのに対し、ヤムイモはヤマノイモ目ヤマノイモ科といったように植物としては遠く離れた種がイモ類に含まれています。
加えて、同じ芋でも植物によって可食部や形状も異なります。
ジャガイモの可食部は地中に埋まった茎の一部がふくらんで塊状になったもの(塊茎)であるのに対し、サツマイモでは細長い根がふくらんだ部位(塊根)を食べます。
このことからも、「イモ」はあくまで人間の栽培・食用の都合で作られた言葉であることがわかります。
イモ類
イモ類は穀物と同様に動物のエネルギー源となる炭水化物(デンプン)を多く含むため、人間の主食としても利用されます。
穀物と比較すると水分が多くて保存期間が短く、重量あたりのカロリーも低いため主食にするためには穀物よりもたくさん食べる必要があります。
一方でイモ類は穀物の栽培が難しい環境(熱帯のラトソル土壌など)でも栽培できるため、穀物の栽培が難しい地域(アジア・アフリカ・オセアニアの熱帯など)でイモ類は主食として利用されています。
特に発展途上国にとっては重要な作物であり、イモ類は10億人の人々の主食であり、サブサハラ・アフリカ(サハラ砂漠以南のアフリカ)では食べ物の40%がイモ類です。
以下では、イモ類の中でも世界的に広く食べられているジャガイモに加え、主食として利用されるキャッサバ、タロイモ、ヤムイモ、日本でも食べられているサツマイモについてふれます。
ジャガイモ
ジャガイモは世界中で広く栽培され、食べられている作物です。
標高が高い寒冷な南米のアンデス山脈原産であり、ヨーロッパのような寒冷な気候のやせた土地でも栽培できるため歴史的に主食として広く食べられてきました。
現在でも食用として世界中で広く利用されています。
ジャガイモの栽培や歴史的な影響については次の記事で取り上げています。
参考ジャガイモの栽培と歴史(アイルランドのジャガイモ飢饉)
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キャッサバ・タロイモ・ヤムイモ
イモ類の中でも現在でも主食として利用されているのがキャッサバ、タロイモ、ヤムイモです。
これらのイモ類は小麦などの穀物の栽培が難しい熱帯地域でも栽培することができる重要な作物です。
タロイモの一種である里芋、ヤムイモの一種である山芋(自然薯)は日本でも根菜として食べられていますが、地域によっては現在でもこれらを主食として利用しています。
たとえば、アフリカのギニア湾沿岸(ナイジェリアやガーナ)では、キャッサバやヤムイモを砕いて湯で練って餅状に成形したフフという食べ物を伝統的に主食としています。
フフにはタロイモやトウモロコシが入れられることもあります。
キャッサバ、タロイモ、ヤムイモについては、次の記事でまとめています。
参考主食として利用されるイモ類(キャッサバ・ヤムイモ・タロイモ)
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サツマイモ
サツマイモは中央アメリカ原産の作物で、他のイモ類同様やせた土地でも育つ作物です。
火山噴出物が堆積するため農業に不向きなシラス台地(鹿児島県)でよく栽培されたことからサツマイモとよばれています。
ジャガイモとサツマイモはいずれも乾燥に強く、水はけの良いやせた土地で栽培できますが、栽培される地域には違いがあります。
ジャガイモは寒冷なヨーロッパや北海道で栽培されるのに対し、サツマイモは温暖な鹿児島や茨城で栽培されます。
そのため、飢饉(ききん)の際に命をつなぐ救荒作物(きゅうこうさくもつ)としては、ヨーロッパではジャガイモが利用されたのに対して日本ではサツマイモが利用されました。
サツマイモの世界の生産量の約半数は中国で栽培され、主に酒の原料として利用されています(2019年)。
しかし、中国では転作が進んで年々生産量が減少し、ナイジェリアやマラウイ、タンザニアなどのアフリカ諸国の割合が増えています。
日本でも1960年代から1970年代にかけて肥料の導入や畑の土壌改良が進んだことで商品価値の高い作物への転作が急激に進み、生産量が急激に減少しました。
サツマイモは英語でSweet potatoとよばれるように甘みが強いため、焼き芋や干し芋のようにそのままの形で食べられます。
また、ジャガイモ同様に焼酎の原料になったり、デンプン採取用として使われたり、春雨や水飴などの原料になります。
参考
サツマイモの普及
サツマイモは日本には中国→琉球(沖縄)→薩摩(鹿児島県西部)経由で17世紀はじめ頃(江戸時代初期)に伝わりました。
1732年に発生した享保の大飢饉(きょうほうのだいききん)の際には、薩摩(鹿児島)ではすでにサツマイモを栽培していたため人々を飢えから救いました。
このことを知った儒学者の青木昆陽(1698-1769)は、将軍徳川吉宗(在1716-1745)にサツマイモの栽培奨励を提案しました。
その結果、江戸幕府がサツマイモの栽培を奨励して全国に普及していきました。
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参考成帯土壌(ラトソル・黒色土・褐色森林土・ポドゾル・ツンドラ土)
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参考文献
芋 ウィキペディア 2023/3/20閲覧
芋(いも)とは? コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2023/3/20閲覧
『タロイモは語る』 東京農業大学「食と農」の博物館 2023/3/26閲覧
主食 ウィキペディア 2023/3/20閲覧
地理用語研究会編「地理用語集第2版A・B共用」山川出版社(2019)
フフ ウィキペディア 2023/4/8閲覧
キャッサバ ウィキペディア 2023/3/26閲覧
タロイモ ウィキペディア 2023/3/26閲覧
ヤム ウィキペディア 2023/3/26閲覧
サツマイモ ウィキペディア 2023/3/26閲覧
サツマイモ(さつまいも)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2023/4/8閲覧
青木昆陽 ウィキペディア 2023/4/8閲覧