系統地理 農業

豆類(根粒菌との共生・大豆・落花生)

はたんぱく質を多く含む栄養の豊富な食べ物です。
世界中で様々な種類の豆が栽培されています。
このページでは、豆類について解説した上で豆類の中でも作物として重要な大豆と落花生についてまとめます。

豆とは

複数の乾燥した豆。次の豆を混合したものである;Anasazi beans, pinto beans, black beans, black eyed peas, great northern, baby Lima, green split pea, yellow split pea, small reds, bolita beans, and cranberry. 出典:Wikimedia Commons, ©QuimGil, CC BY-SA 3.0, 2023/4/3閲覧

とはマメ科植物の種子のうち食べられるものの総称です。
マメ科植物は穀物と比べて必要な水の量が少なく乾燥に強く、広範囲で様々なマメが栽培されています。
特に穀物の栽培が難しい乾燥帯亜寒帯(冷帯)で栽培が盛んです。

根粒菌との共生

マメ科植物と根粒菌の共生の概念図。根粒菌はマメ科植物の根に侵入して根粒とよばれるコブ状の構造を形成する。根粒菌は空気中の窒素からアンモニアを生成し、植物に供給する。植物からは光合成によって作られた栄養分(主にリンゴ酸やコハク酸などの有機酸)を受け取る共生関係にある。出典を加工して作成。出典:Wikimedia Commons, ©Nefronus, CC BY-SA 4.0, 2023/4/6閲覧

マメ科植物の根には根粒菌(こんりゅうきん)が共生しています。

根粒菌は空気中の窒素をアンモニアへ変換する窒素固定を行います。
植物は空気中の窒素を栄養として利用できませんが、アンモニアは体内に取り込むことができます。
そのため、根粒菌が共生することでマメ科植物は空気中の窒素を栄養として使うことができます(その代わりに光合成によって作られた栄養分を根粒菌に分け与えます)。
根粒菌が共生している植物が枯れると窒素は土壌中に放出され、他の植物が利用できる状態になります。

以上のような性質を利用して、他の作物を栽培して窒素が減少した畑にマメ科植物を栽培することで土壌中の窒素量を回復させることできます。
18世紀にイギリスで普及したノーフォーク農法では、マメ科のクローバー輪作に組み入れています。
現代でも化学肥料を用いない有機農業では、マメ科植物を組み入れた輪作を行うことで連作障害を防ぎ、収穫量を維持しています。

豆類

豆類は様々な気候で生育できて栄養を多く含むことから、古くから人類に食料として栽培されてきました。

豆は穀物と同様に炭水化物を多く含む一方、穀物にはあまり含まれていないたんぱく質を多く含みます。
油脂を多く含むため油をとるために利用されるものあります(油料作物)。

中でも東アジア原産のダイズ(大豆)は大豆油や飼料用としての需要があり、現在では小麦と並ぶ重要な貿易品目になっています。
ラッカセイ(落花生)は栄養価が高くそのまま食用されるほか、ピーナッツオイルやピーナッツバターとしての用途もあります。

以下では大豆と落花生について取り上げます。

ダイズ(大豆)

大豆。収穫したダイズの鞘の中に収まった種子(豆)を取り出して食用とする。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2023/4/9閲覧

ダイズ(大豆)は東アジアで古くから食用として栽培されてきた作物です。
そのまま食べると消化に悪いため豆腐や発酵食品(味噌、醤油)などの形で食べられてきました。
20世紀に入ると用途や栽培地域が広がり、大豆油製造用や飼料用として南北アメリカ大陸で大量に栽培されるようになりました。

ダイズ(大豆)の栽培や用途、貿易については次のページでまとめています。

参考ダイズ(大豆)の栽培

続きを見る

ラッカセイ(落花生)

地中から掘り出したラッカセイ(落花生)の果実(豆果)(米国南部・サウスカロライナ州東部)。鞘の中に種子(ピーナッツ)が入っている。ラッカセイは花が咲いたあとに地面に向かって伸長し、地中で実をつける。出典:Wikimedia Commons, ©Pollinator, CC BY-SA 3.0, 2023/4/9閲覧

ラッカセイ(落花生)南米原産の作物です。
花が咲いたあとに地面に向かって伸長し、地中で実をつけるため「落花生」とよばれています。
鞘のなかに入っている種子(豆)は食べることができ、ピーナッツとよばれています。

用途としては、そのまま調理して食用とされるほか、ピーナッツバターなどに加工されます。
大豆同様に油を多く含むため油を絞り出してピーナッツオイルが作られます。

ラッカセイは熱帯から温帯までの幅広い地域で栽培されます。
生産量上位は中国やインド、米国などの人口が多い国に加え、ナイジェリアやスーダンなどのアフリカ諸国が続きます。

ピーナッツバター。ラッカセイの種子(ピーナッツ)をすりつぶしてペースト状にしたものである。米ケロッグ社の共同創業者であるジョン・ハーヴェイ・ケロッグ博士(John Harvey Kellogg, 1852-1943)が開発した。出典:Wikimedia Commons, ©PiccoloNamek at English Wikipedia, CC BY-SA 3.0, 2023/4/9閲覧

 

関連記事

参考ダイズ(大豆)の栽培

続きを見る

参考油料作物(ナタネ・ヒマワリ・ゴマ他)

続きを見る

参考品種改良と遺伝子組換え作物(緑の革命と高収量品種)

続きを見る

参考混合農業(二圃式/三圃式農業から自給的/商業的混合農業への発展)

続きを見る

参考文献

 ウィキペディア 2023/4/9閲覧
豆(まめ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2023/4/3閲覧
根粒菌 ウィキペディア 2023/4/6閲覧
Root nodule, Wikipedia 2023/4/6閲覧
ダイズ ウィキペディア 2023/4/9閲覧
ダイズ(だいず)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2023/4/9閲覧
植物油 ウィキペディア 2023/4/9閲覧
ラッカセイ ウィキペディア 2023/4/6閲覧
Peanut, Wikipedia 2023/4/6閲覧
ラッカセイ(らっかせい)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2023/4/6閲覧
ピーナッツバター ウィキペディア 2023/4/9閲覧

-系統地理, 農業
-, ,