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農作物の分類(自給作物と商品作物・食用作物と飼料作物と工芸作物)

このページでは、農作物を分類する用語(商品作物や飼料作物など)についてまとめます。
これらの用語は農業地理分野の内容を説明する際に出てくる用語であり、説明を正しく理解するためには用語の意味を理解する必要があります。

畜産物の分類については、次のページでまとめています。

参考家畜の畜産物の分類(肉・乳・毛皮・使役など)

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自給作物と商品作物

販売される様々な農産物(アルメニア北西部・ギュムリ)。市場で販売する目的で栽培する作物を商品作物(換金作物)という。それに対して主に自家消費目的で栽培する作物を自給作物という。出典:Wikimedia Commons, ©Marcin Konsek, CC BY-SA 4.0, 2023/8/26閲覧

自給作物商品作物は、作物の栽培目的による分類です。
自給作物は自家消費目的で栽培する作物であるのに対し、商品作物は販売目的で栽培する作物のことです。
同じ作物でもその栽培目的によって自給作物になったり商品作物になったりします。

自給作物は原始的な農業形態にみられ、アジアやアフリカの焼畑農業粗放的定住農業などでみられます。
自給作物を栽培するということは自給自足に近い生活形態であり、必然的に炭水化物を摂取するための穀物イモ類が自給作物の中心になります。

商品作物は市場で販売する前提で栽培する作物であり、換金作物ともよばれます。
先進国においては多くの場合、ホイットルセーの農業地域区分に関係なく穀物やイモ類も販売目的の栽培なので商品作物です。
しかし一般的に商品作物と言った場合、嗜好品(しこうひん、コーヒーなど)や花卉類(かきるい、観賞用のお花)などの付加価値の高い(=高値で売れる)工芸作物を指すことが多いです。
工芸作物については次の項目で説明します。

食用作物・飼料作物・工芸作物

地中海周辺で食べられる様々な食材。食卓に並ぶ食べ物には、穀物や果物、野菜のような食用作物だけではなく、オリーブオイルや砂糖のような工芸作物を原料とする調味料もある。出典:Wikimedia Commons, ©G.steph.rocket, CC BY-SA 4.0, 2023/8/29閲覧

食用作物・飼料作物・工芸作物は用途に基づく作物の分類です。
同じ作物でも収穫した作物の利用法が異なる場合は違う分類になります。

分類 作物の用途
食用作物 人間の食用 穀物イモ類豆類果物
飼料作物 家畜のエサ 牧草、トウモロコシ
工芸作物 工業原料 サトウキビワタ(綿花)

食用作物

農業によって得られた様々な野菜や果物(食用作物)。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2023/4/29閲覧

食用作物は人間が食用にする目的で栽培する作物です。
たとえ食用にする作物であっても、工場で原料を精製する過程を経て食べられる場合は工芸作物に分類されます(例: サトウキビコーヒー)。

用途に基づく分類なので、同じ作物でもある地域では食用作物として栽培されるのに対し、別の地域では飼料作物として栽培される場合もあります。

世界中で栽培される食用作物としては、穀物イモ類豆類果物、野菜などがあります。

参考食用作物(穀物・イモ類・豆類・果樹)

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飼料作物

収穫してロール状にまとめられた牧草(米国北西部・モンタナ州)。この牧草は主に牛に与えるアルファルファ(ムラサキウマゴヤシ)という牧草である。出典:Wikimedia Commons, ©Gary D Robson, CC BY-SA 3.0, 2023/8/20閲覧

飼料作物は、家畜のエサとして使用する目的で栽培される作物です。

人間が食べる場合には食用作物に分類されるトウモロコシや大豆でも、家畜のエサ用として栽培される場合は飼料作物になります。
一部の穀物やイモ類は飼料作物として利用されるのに対し、単価の高い野菜や果物が飼料作物として利用されることは多くありません。

飼料作物としてのみ栽培される作物としては、クローバーやアルファルファ(ムラサキウマゴヤシ)などの牧草が該当します。

工芸作物

紅茶とチョコレートケーキ。いずれも嗜好品であり、味や香りを楽しんだり、一緒にいる人々と談笑するお供として摂取する。このような嗜好品の原料として栽培される作物を嗜好作物という。出典:Wikimedia Commons, ©Nicubunu, CC BY-SA 3.0, 2023/6/10閲覧

工芸作物は工業原料として栽培される作物です。

最終的に人間が食べる場合でも、工場で加工・製造しないと利用できない作物は工芸作物に分類されます。
たとえば、サトウキビコーヒーは最終的に人の口に入りますが、そのためには工場での加工が必要なので工芸作物です。
工芸作物は品質が重視されるため、限られた栽培適地で栽培される単価の高い作物です。
栽培地が限られる一方で世界中で需要があるため、国際的に取引される重要な商品作物です。

参考工芸作物(嗜好作物・油脂作物・繊維作物等)

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参考文献

地理用語研究会編「地理用語集第2版A・B共用」山川出版社(2019)
Subsistence agriculture Wikipedia 2022/11/6閲覧
工芸作物(こうげいさくもつ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2022/11/6閲覧
穀物 ウィキペディア 2023/1/23閲覧
主食 ウィキペディア 2023/1/24閲覧
Staple food, Wikipedia 2023/4/3閲覧
農作物には工芸作物というものがあると聞きました。工芸作物とはどのようなものを言うのですか? 農林水産省 2023/4/29閲覧
工芸作物 ウィキペディア 2023/4/29閲覧
工芸作物 農業技術事典 ルーラル電子図書館 2023/4/29閲覧

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