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牧畜と気候(気候と飼育される家畜の違い)

牧畜で飼育される家畜には様々な種類があり、それぞれの家畜の生態にあった気候の地域で飼育されています。
このページでは、気候ごとに飼育される家畜について見ていきます。

気候と家畜の分布

過去1万年における牧畜が行われる地域の分布の広がりを示したアニメーション。牧畜が盛んに行われている地域ほど色が濃くなっている。1万年前には中東周辺でしか行われていなかった牧畜が世界中に普及していった。ArchaeoGLOBEプロジェクトに結果に基づいて作られている。出典:Wikimedia Commons, ©Nick-Gauthier, CC BY-SA 4.0, 2024/1/26閲覧

農業や牧畜はその土地の気候に応じて営まれています。
牧畜が行われるパターンには大きく分けて2つあります。

1つは人は住めるが農業が難しい気候(乾燥帯亜寒帯(冷帯)北部・高山)において遊牧を行うケースです。
地域としては、サハラ砂漠~中央アジア、北極圏周辺、ヒマラヤ山脈周辺(チベット高原など)やアンデス山脈などで遊牧が行われてきました。

もう1つは農業が行われる温暖湿潤な気候(熱帯温帯~亜寒帯)で農業と牧畜を組み合わせるパターンです。
一例として、家畜(豚など)のエサとなるジャガイモトウモロコシの栽培適地で家畜を飼育する混合農業があります。
また、農機具を家畜(牛など)に引かせて農作業に使う使役にも使われます。

以下では、気候ごとに牧畜で飼育される代表的な家畜について見ていきます。

乾燥した地域の家畜(遊牧民の家畜)

遊牧の風景(モンゴル北部フブスグル県)。遊牧民は馬を乗りこなしながら家畜を放牧・誘導している。出典:Wikimedia Commons, ©Arabsalam, CC BY-SA 4.0, 2022/10/10閲覧

ステップ気候などの乾燥のため草原が広がる地域では、乾燥に適応したヤギなどの家畜が主に飼育されます。
これらの地域では乾燥のため農耕が難しく、伝統的に遊牧が営まれてきました。
遊牧では、家畜を一種類ずつ別々に飼育されるのではなく、複数の家畜を組み合わせて飼育します。
家畜ごとに飼育目的も異なり、羊やヤギは主に畜産物(ミルクや肉、毛など)を得るために飼育するのに対し、馬は人間が乗馬する使役も重要な役割です。
たとえば、モンゴルでは放牧の際に人間は馬に乗馬して羊などの家畜を誘導します。

湿潤な地域の家畜(農耕民の家畜)

オス牛に農耕器具を引かせて畑を耕している様子(インド南西部・カルナータカ州)。牛は歴史的に農耕や牛車などの使役にも歴史的に使われてきた。現代では多くの国で機械(農業機械や自動車)に置き換えられている。出典:Wikimedia Commons, ©Anand S, CC BY-SA 2.0, 2023/9/9閲覧

温暖湿潤で農業を行える気候では、水牛などが代表的な家畜です。

温帯や亜寒帯(冷帯)では牛や豚が飼育され、インド~東南アジアの熱帯(一部温帯)地域では、水牛が飼育されています。
これらの地域では、農業と牧畜を組み合わせた農業形態が営まれています。

たとえば、ヨーロッパやアメリカ合衆国では、家畜(豚など)のエサとなるジャガイモトウモロコシの栽培適地で家畜も一緒に飼育する混合農業が営まれています。
また、人が手作業で作物の栽培を行っていた時代には、牛や水牛に農機具を引かせて田畑を耕す労働力として活用してきました。
このような使役による家畜の活用は、農業の機械化が進んでいない発展途上国では現在も残っています。

砂漠の家畜

ラクダを引き連れた隊商(キャラバン)(エチオピア北東部・ダナキル砂漠)。道路が未整備な砂漠で荷物を輸送する際には、ラクダの背中に荷物をのせて運搬する。少人数で細い道を通るために何匹ものラクダをひもでつないで一列に並ばせて移動する。出典:Wikimedia Commons, ©Ji-Elle, CC BY-SA 3.0, 2023/11/12閲覧

砂漠のような極端に乾燥した場所では、極端な乾燥に適応したラクダが家畜として飼育されます。
砂漠は水に乏しいため水源のあるオアシスを除いて農耕が難しく、伝統的にラクダの遊牧が営まれてきました。
ステップ気候のように草原が広がる場所では乾燥の度合いが弱いためヤギなども飼育できますが、砂漠ではラクダ以外の牧畜が困難です。
砂漠の遊牧民はラクダから肉や乳を得るためだけではなく、移動の際にはラクダの背中に荷物を載せて運んでいました。
地域としては、サハラ砂漠~中東~イラン~中央アジア~モンゴルの乾燥帯でラクダが飼育されています。

寒冷地の家畜

トナカイにソリを引かせるサーミ人の女性(ノルウェー)。北極圏周辺では冬季の積雪の中の移動手段としてトナカイにソリを引かせている。出典:Wikimedia Commons, ©Kommunikasjonsavdelingen NTFK, CC BY 2.0, 2023/11/30閲覧

北極圏周辺は気温の低さのため農耕が難しく、寒さに適応したトナカイ(カリブー)を家畜とした牧畜が行われています。
地域としては、スカンジナビア半島北部~シベリア、米国アラスカ州~カナダ北部でトナカイが飼育されています。
これらの地域では寒さのため他の家畜を飼育することが困難です。
そのため、北極圏周辺の先住民はトナカイを飼育してその肉や乳、毛皮などを活用して暮らしてきました。

高山の家畜

アンデス山脈で飼育されている家畜であるリャマ(ラマ)とアルパカ(ペルー南東部)。リャマとアルパカはいずれもアンデス山脈原産の家畜であり、標高が高く農業が難しい地域で飼育されている。出典:Wikimedia Commons, ©Tobias Deml, CC BY-SA 4.0, 2023/11/5閲覧

標高が高い高山では農耕が難しいため、高山の気候に適応した家畜が飼育されています。
南米のアンデス山脈ではリャマ(ラマ)とアルパカが、ヒマラヤ山脈(チベット高原など)ではヤクが飼育されています。
高山気候の分布は隔絶しているため、それぞれの地域で特有の家畜が飼育されてきました。

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参考文献

地理用語研究会編「地理用語集第2版A・B共用」山川出版社(2019)
小宮山 博「モンゴル国における馬からの産物」日本とモンゴル 54(1・2), p34-39 (2020)
混合農業とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2024/1/26閲覧
混合農業 ウィキペディア 2024/1/26閲覧

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