被圧地下水は不透水層に挟まれた地下水であり、地中の深い位置存在するものの水質や水量が年間通して安定している地下水です。
ここでは、被圧地下水に加えて関連する化石水や自噴井、鑽井についてもあわせて解説します。
地下水自体や自由地下水(地表の浅い位置にある地下水)については、次のページについて解説しています。
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参考地下水とその構造・分類(自由地下水と被圧地下水・宙水)
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被圧地下水とは

被圧地下水は、上下を不透水層に挟まれた帯水層(透水層)に溜まった地下水です。
上下を不透水層に阻まれているため水が自由に移動できず、水圧がかかった状態で地中に存在するため、「被圧」地下水と呼びます。
このため、井戸を作るために掘削すると圧力によって水面が高くなります。
盆地(鑽井盆地)など地形的な条件によっては、掘削時に地表に水が噴出することもあります(自噴井)。
被圧地下水を入手するために掘削した井戸を深井戸(掘り抜き井戸)と呼びます。
深井戸を掘削する際には不透水層の硬い岩盤を貫通する必要があり、自由地下水を取水する浅井戸と比べて技術的難易度が高く、コスト面でも割高になります。
一方、地表との間に不透水層が存在し、地表から遮断されているため外部からの汚染の影響を受けづらく、水質や水量が安定しています。
このため、工業用水や灌漑用の農業用水として利用されています。
参考

上総掘りによる深井戸(掘り抜き井戸)の掘削
上総掘りは、明治時代に千葉県君津市(旧上総国)で発明されて全国に普及した深井戸(掘り抜き井戸)の掘削技術です。
被圧地下水はの地中の深い位置(8m以上)に存在するため、深井戸の掘削は技術的に難易度が高いです。
このため、日本での深井戸の掘削は江戸時代になってからです。
しかし、人間が手作業で井戸を掘るのは崩落の危険性が高く、掘り進められる深さも30-50m程度が限界です。
そこで、竹や鉄管などの簡単な道具を使って人力で50m以上掘削できるよう開発されたのが上総掘りです。
上総掘りでは、上の画像のようにやぐらを組んで車を仕掛け、重力で鉄管を落とし、人力で車を回して竹の張力を利用して引き上げることを繰り返して掘り進めます。
日本では、第二次世界大戦後に人力から機械式の掘削に置き換えられましたが、現在でもアフリカなどの開発途上国で活用されています。
化石水

化石水は、地層中に閉じ込められ、現在の地球上の水循環から取り残された地下水です。
水を通さない地層が堆積する際にそのまま閉じ込められて形成されます。
現在、砂漠が広がっている場所であっても、過去に雨が多い気候だった時期に涵養(貯水)された水が化石水となって残っている場所もあります。
このため、地表の水資源が乏しい乾燥帯では、貴重な水源として利用されている化石水も多いです。
代表的な化石水として、アメリカ合衆国中西部のグレートプレーンズに広がるオガララ帯水層があります。
グレートプレーンズの地表は乾燥した地域で、年降水量が農業(畑作)の限界となる500mm前後しかないため、農業には不向きでした。
そこで、オガララ帯水層の地下水をくみ上げて農業に利用することで、グレートプレーンズ一帯は世界有数の穀倉地帯となりました。
一方で、一度使えば失われる地下水を大量に消費しており、地表が乾燥した気候ゆえに地下水が自然によって涵養(補充)される速度も緩やか(地下水位にして年間2-3cm)なので、帯水層の貯水量減少が危惧されています。
表 化石水の例
| 帯水層の名称 | 地域 | 備考 |
| オガララ帯水層 | グレートプレーンズ(米国中西部) | センターピボット方式による大規模な灌漑農業(企業的農業) |
| ヌビア帯水層 | サハラ砂漠(エジプト、リビア、チャド、スーダン) | サハラ砂漠のオアシスの水源。リビアでは化石水を沿岸部へ導水して灌漑農業を実施(リビア大人工河川計画)。 |
| --- | サウジアラビア(アラビア半島) | 地下水による灌漑農業を実施していたが、地下水位の低下により停止。 |
自噴井と鑽井

自噴井(鑽井)は、地下水が自然に地表に噴出する井戸のことです。
上図のように、盆地から周囲の高台にかけて地表面に沿うように地層が広がる場所では、帯水層(透水層)の一部が盆地底部よりも高い場所にあります。
このように帯水層が傾斜して分布している場合、地面が低い場所では地下水が強い圧力にさらされ、自然に地表に噴出する自噴井が見られます。
具体例な地形としては、扇状地の扇端、火山の山麓、盆地の中心部などで自噴井が見られます。

鑽井盆地
鑽井盆地は、帯水層が地表に沿って傾斜して分布しているため盆地底部に多数の自噴井(鑽井)が見られる盆地です。
鑽井盆地の例として、世界最大の鑽井盆地であるグレートアーテジアン盆地(大鑽井盆地、オーストラリア東部)があります。
グレートアーテジアン盆地は、オーストラリア内陸部の乾燥した地域に広がる鑽井盆地です。
この地域では自噴井は貴重な水資源ですが、自噴井の塩分濃度が高く農業には不向きなので、塩分耐性が高いヒツジ(羊)などの牧畜が行われています。

参考文献
地理用語研究会編「地理用語集」山川出版社(2024)
被圧地下水(ヒアツチカスイ)とは? コトバンク デジタル大辞泉、精選版 日本国語大辞典、日本大百科全書(ニッポニカ)、最新 地学事典 2026/5/16閲覧
不圧地下水(ふあつちかすい)とは? コトバンク 最新 地学事典 2026/5/15閲覧
井戸の種類について | 浅井戸と深井戸の違い コラム 水道修理ネクスト@広島 合同会社ニューネクストスタイル 2021/1/31閲覧
世田谷区内の宙水について 東京都世田谷区 2026/5/16閲覧
宙水(チュウミズ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、改訂新版、最新 地学事典、百科事典マイペディア、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2026/5/16閲覧
高源院 (世田谷区) ウィキペディア 2026/5/16閲覧
地下水の種類を詳しく紹介!地下水の定義や仕組みなどの基礎知識も ゼオライト株式会社 2026/5/16閲覧
掘抜き井戸(ほりぬきいど)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、最新 地学事典、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2026/5/16閲覧
上総掘りの技術 千葉県 2026/5/16閲覧
上総掘り|AGRIFUTURE みのりみのるプロジェクト 全国農業協同組合連合会(全農) 2026/5/16閲覧
上総掘り(カズサボリ)とは? コトバンク デジタル大辞泉、精選版 日本国語大辞典、日本大百科全書(ニッポニカ)、改訂新版 世界大百科事典、最新 地学事典 2026/5/16閲覧
上総掘り(かずさぼり)用具 千葉県君津市 2026/5/16閲覧
マサイ族の集落で「上総掘り」による持続可能な開発を実施 一般財団法人 日本水土総合研究所 2026/5/16閲覧
Ogallala Aquifer, Wikipedia 2026/4/20閲覧
Fossil water, Wikipedia 2026/4/18閲覧
グレートプレーンズとは? コトバンク 改訂新版 世界大百科事典、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2026/4/25閲覧
新藤静夫の地下水四方山話 地盤環境エンジニアリング株式会社 2026/4/20閲覧
Great Man-Made River, Wikipedia 2026/4/20閲覧
西条市の名水 うちぬき 愛媛県西条市 2026/5/17閲覧
自噴井(ジフンセイ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2026/5/17閲覧
掘抜き井戸 別府温泉事典 別府温泉地球博物館 2026/5/17閲覧
鑽井盆地(サンセイボンチ)とは? コトバンク デジタル大辞泉、日本大百科全書(ニッポニカ) 2026/5/20閲覧
大鑽井盆地(ダイサンセイボンチ)とは? コトバンク 改訂新版 世界大百科事典、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、日本大百科全書(ニッポニカ) 2026/5/20閲覧
