三大穀物の一つである米はアジアを中心に生産され、人間の主食として利用されます。
このページでは、品種や栽培方法、生産量や輸出量など米(稲)に関する内容についてまとめています。
穀物全体や他の作物の詳細については以下のリンク先をご覧ください。
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目次
イネ(稲)と米の違い
はじめにイネ(稲)と米の違いについて説明します。
イネ(稲)はイネ科の植物であるのに対し、米は稲から収穫できる食材(穀物)です。
人類は穀物である米を得るために稲を栽培します。
稲は多くの場合漢字で「稲」と表記されますが、この項目では植物としての稲を「イネ」、作物としての稲を「稲」と表記して区別します。
これは、生物の名前をカタカナで表記する慣例にならっています。
イネの穂先に実った果実を収穫したものが籾(もみ)です。
籾の外側は籾殻(もみがら)とよばれる外殻に覆われており、この籾殻を取り除いた中身が玄米です。
玄米の外側を覆う糠(ぬか)や胚芽(はいが、畑にまくと芽になって育つ部分)を除いたものが白米です。
白米を得るために籾や糠などを取り除く作業を精米といいます。
食用には精米された白米を食べるのに対し、翌年の春にまく種籾(たねもみ)として残す場合は籾に覆われた状態で保存します。
実際に発芽して育つのは胚芽ですが、籾は胚芽を寒さや乾燥から保護する役割があります。
稲の特徴
稲は三大穀物の1つである米を得るために栽培される作物です。
この項目では稲の原産地、品種、栽培条件について順番に見ていきます。
稲の原産地
稲の原産地は長江流域(中国南部・湖南省)であると考えられます。
稲は原産地から世界各地に伝わり、特にモンスーンアジア(東~東南~南アジア)では主食用として広く栽培されています。
稲の原産地と伝播の地図と詳細説明については、以下のリンク先をご覧ください。
「栽培イネの原産地と伝播経路」©Shogakukan
出典:イネとは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2022/11/14閲覧
※稲の原産地は現在では長江流域と考えられていますが、かつては雲南省(中国西南部)~アッサム(インド北東部)発祥と考えられていたため、上図では旧説にのっとって描かれています。
稲の品種
米を生産するために栽培されている稲には大きく分けてジャポニカ種とインディカ種の2種類が存在します。
この項目では両品種について順に紹介します。
ジャポニカ種
ジャポニカ種は日本や朝鮮半島、中国などの温帯地域栽培される稲の品種です。
インディカ種よりも寒さに強く、中緯度地域で栽培されます。
単位面積あたりの収穫量が多い代わりに栽培に手間がかかり、病虫害になりやすいという特徴があります。
ジャポニカ種の稲から収穫されるお米は丸く短い粒であり、日本人が普段食べているお米です。
炊くと水分を多く含んでふっくらし、弾力と粘り気があります。
インディカ種
インディカ種は東南アジアやインドなどの熱帯~温帯の南部の低緯度地域で栽培される稲の品種です。
インディカ種の稲から収穫されるお米は日本では俗にタイ米や南京米とよばれます。
日本ではなじみの薄いインディカ種ですが、世界の米の生産量の8割を占めるため世界的には米といえばインディカ種の方が主流です。
インディカ種のお米は細長い形状で炊いても粘り気が少ないお米です。
調理としてはピラフやチャーハンのように他の食材と混ぜ合わせたり、カレーやガパオライスのように濃い味付けの料理と一緒に食べます。
稲の栽培条件と等降水量線
稲には様々な品種・栽培方法がありますが、いずれも気温が高く雨が多く降る必要があります。
一般に稲を栽培するためには18℃以上の気温と1,000mm以上の年降水量が必要になります。
中国やインドでは年降水量おおよそ1,000mmが歴史的な米の栽培の限界線となっています。
以下では、中国とインドの等降水量線について順番に見ていきます。
秦嶺―淮河線(チンリン―ホワイ川線)
中国では、年降水量800-1,000mmの等降水量線を結んだ線が中部の秦嶺(しんれい)山脈と淮河(わいが)を結んだ線とおおむね一致します。
この秦嶺―淮河線(チンリン―ホワイ川線)は中国において南の温暖な稲作地域(華南)と北の寒冷な小麦栽培地域(華北)の境界であり、気候や生活習慣が大きく異なります。
参考
故事成語「南船北馬」
南船北馬は各地を絶え間なく行ったり来たり旅をすることを意味する言葉です。
この言葉の由来は、中国において南部は降水量が多いため河川や運河が発達て船を使った移動が盛んであるのに対し、北部は河川が少なく乾燥しているため馬を使った移動が活発であるという歴史的な背景があります。
上の地図を見ても赤線より南側は地図上に河川や湖が多く記載されているのに対して北側は少ないです。
温暖で水が豊富なことは稲作に有利な条件であり、華南では稲作が盛んです。
一方、寒冷で乾燥している華北では稲作が難しいため小麦の栽培が行われます。
このように気候は農業に影響し、人々の生活習慣の違いをつくり出します。
インドの等降水量線
上の地図はインドの年間降水量の地図です。
赤線が年間降水量1,000mmの境界線です。
インド東部では季節風(モンスーン)の影響を受けるため夏(6-9月)に南西からの季節風が吹き込みます。
そのため、季節風が直接吹き込む南西部の沿岸や季節風が回り込んで吹き込む東部では降水量が多くなります。
インド東部ではこのような豊富な降水を利用した稲作が盛んです。
一方、年間降水量1,000mmを下回る北部や西部では稲よりも乾燥・寒冷に強い小麦が栽培されています。
稲の栽培方法
稲は元々湿地に生える植物ですが、畑で栽培することもできます。
ここでは水田に水を張って栽培する水稲(すいとう)と畑で栽培する陸稲(りくとう)について説明します。
水稲
水田で栽培される稲を水稲(すいとう)といいます。
稲は湿地に生える水生植物なので灌漑(かんがい)により田んぼに水を張って栽培することが一般的です。
日本では栽培される稲の99%が水稲です。
水稲の特徴は連作障害に強いことです。
外部から供給される水を通して栄養分が田んぼに運ばれるため、畑で栽培される小麦とは異なり連作障害がおきづらくなります。
そのため、毎年同じ場所で繰り返し稲を栽培することができる上に、単位面積あたりの収穫量も畑で栽培する陸稲よりも多くなります。
棚田
棚田(たなだ)は階段耕作の一種であり、傾斜地で水稲栽培を行うために階段状に造成した水田です。
水稲栽培では田んぼに水を貯める必要があるため急傾斜地では階段状に田んぼを造成します。
同じ階段耕作の一種である段々畑とは異なり、棚田は水をためるために1つ1つの階は平らになっています。
棚田は人口に対して平坦な耕作地が少ない地域(山間部など)にみられます。
海外では華南(中国)、ルソン島(フィリピン)、ジャワ島(インドネシア)でみられます。
日本でも中国山地や中央高地をはじめ、各地の山間部でみられます。
浮稲
浮稲(うきいね)は水稲の一種であり、雨季に水没する低湿地で栽培される特殊な稲です。
東南アジアやインドの熱帯モンスーン気候(Am)やサバナ気候(Aw)の地域で、雨季に洪水が起きて水没する場所で栽培されます。
浮稲は雨季になる前に乾燥した地面にまかれます。
雨季に川が氾濫して浸水するに従って急速に伸長し、葉や穂先が水面の上に出る状態を保ちます。
浮稲は一般的な水稲よりも単位面積あたりの収穫量は少ないですが雨季に水没する場所でも稲を栽培することができます。
浮稲が浸水した場所で生育している模式図については以下のリンク先をご覧ください。
「浮稲の形態」©大多和鐘三
出典:浮稲とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2022/11/15閲覧
陸稲
畑で栽培される稲のことを陸稲(りくとう)といいます。
陸稲は水稲と比べて干ばつに極めて弱く、収穫量は降水量に左右される上に水稲の半分以下です。
畑で栽培するため連作障害に弱く、他の作物(ツマイモ、大豆、タバコ、野菜類など)と輪作されます。
陸稲は水稲と比較してデメリットが多いため水を引くことができない場所(山岳地帯など)で栽培されます。
日本ではほとんど栽培されず、東南アジアやインド東部などで焼畑を行った畑で栽培されます。
生産国と輸出入量
稲は世界中で栽培されますが、米の生産量の90%はモンスーンアジア(東アジア~東南アジア~南アジア)で栽培されます。
米は生産国と消費地が一致します。
大半が生産国で消費されて輸出に回されるのは全体の5%に過ぎません。
次の表は米の生産量と輸出入量です。
米の生産量の表を見ると、生産量上位は人口が多いアジアの国に集中しています。
米の輸出国上位も東南アジア~南アジアです。
一方輸入国を見ると、生産量1位の中国が輸入量でも上位になっています。
中国では国内産よりも安い東南アジア産の米におされ、輸入量が増えています。
他の輸入国は、生産性の低い自給的農業を行うアフリカや砂漠気候で農業が難しい中東の国が上位にきています。
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参考ホイットルセーの農業地域区分(自給的・商業的・企業的農業)
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参考文献
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インディカ米 ウィキペディア 2022/11/14閲覧
インディカ米 コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2022/11/14閲覧
地理用語研究会編「地理用語集第2版A・B共用」山川出版社(2019)
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Deepwater rice Wikipedia 2022/11/15閲覧
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西尾 道徳「陸稲の連作障害の原因をめぐって」化学と生物 14(11) 718-721 (1976)
片平博文他「新詳地理B」帝国書院(2020)
データブックオブ・ザ・ワールド2020年版 二宮書店
【クローズアップ・農政】中国、米の輸入世界一に 食品高騰で安い米ニーズ高まる (2013/9/12) JAcom 農業協同組合新聞 一般社団法人農協協会 2022/11/17閲覧