このページでは、牛によく似た家畜である水牛(スイギュウ)とヤクについて紹介します。
牛についてはこちらのページで解説しています。
【家畜:牛(乳用種・肉用種)・水牛/ヤク・羊・ヤギ・アルパカ/リャマ・ラクダ・トナカイ・馬・豚・ニワトリ】
ウシによく似た家畜
ここでは、牛とよく似た家畜である水牛(スイギュウ)とヤクについて紹介します。
スイギュウ(水牛)とヤクはいずれもウシ(牛)と同じウシ科の動物であり、アジアの特定の地域で家畜として飼育されています。
水牛(スイギュウ)
水牛(スイギュウ)はインド~東南アジア~中国南部で飼育されている家畜です。
ウシ(牛)とよく似た家畜ですが、湿地帯などの水辺に適応した別の動物です。
気温が高い地域に生息するため、川や沼地でしばしば水浴びをして体を冷やします。
家畜としての水牛は牛と同様に育てて乳や肉を得たり、牛車を引かせて物を運搬したり、あるいは水田での農作業に使います。
インドでは牛を神聖視するヒンドゥー教徒が多く牛肉をあまり食べないため、代わりに水牛の肉が広く流通しています。
牛肉の生産量や輸出入量の統計では、牛肉と水牛の肉をまとめて統計が取られているため、ヒンドゥー教徒が多いはずのインドからの牛肉(実際は大部分が水牛の肉)の輸出量が非常に多くなっています。
牛と水牛の違い
牛(ウシ)と水牛(スイギュウ)は同じウシ科の動物でよく似た名前ですが別の生物です。
牛は温帯を中心に乾燥帯から亜寒帯(冷帯)にかけて世界中で飼育されている家畜であるのに対し、水牛はインド~東南アジア~中国南部の熱帯・亜熱帯(温帯の熱帯隣接地域)を中心に飼育されている家畜です。
牛と比べて水牛は高温多湿の環境に適応しており、水辺の湿地帯に適応した動物です。
家畜として飼育されている地域も分かれており、インド~東南アジアの熱帯・亜熱帯の地域は水牛が数多く飼育されているのに対し、牛はそれ以外の乾燥帯~温帯~亜寒帯(冷帯)の地域を中心に飼育されています。
参考
スイギュウの仲間として、サハラ砂漠以南のアフリカに生息するアフリカスイギュウがいます(ウシやスイギュウと同じウシ科の別の動物)。
スイギュウ(水牛)とは異なり、アフリカスイギュウは天敵のライオンを返り討ちにしてしまうほど気性が荒いため家畜にすることはできません。
似たような生物であっても家畜化されるためには、人間にとって都合の良い気質(気性が穏やかさ等)を持っている必要があり、家畜として活用される生物の種類は非常に限られています。
アフリカスイギュウと区別するために、アジアに生息するスイギュウ(水牛)のことをアジアスイギュウやインドスイギュウとよぶことがあります。
ヤク
ヤクはウシ(牛)と同じウシ科ウシ属の動物で、ウシと非常に近い動物です。
ヤクは標高が高い地域に適応してた動物であり、体の表面は防寒のために非常に長い毛に覆われています。
ヤクが飼育されている地域は、ヒマラヤ山脈周辺~中国西部の標高が高い地域です。
これらの地域では標高が高いため気温が低く農業を行うのが難しいため、代わりにヤクの牧畜を行っています。
ヤクを飼育することで乳や肉、毛皮などを入手できます。
他にも、荷物を運ばせるために使ったり、橋がない川を渡る際に人間が乗ったり、樹木が無い高原地帯では糞が貴重な燃料として利用されます。
牛とヤクの違い
牛(ウシ)とヤクは同じウシ科ウシ属の動物でよく似た名前ですが別の生物です。
牛は温帯を中心に乾燥帯から亜寒帯(冷帯)にかけて世界中で飼育されている家畜であるのに対し、ヤクはヒマラヤ山脈周辺~中国西部の標高が高い地域で飼育されている家畜です。
ヤクは世界の中でも特に標高が高いヒマラヤ山脈周辺の山岳地帯に適応した動物であるのに対し、牛は平地に適応した動物です。
牛は元々の生息地(ユーラシア大陸の乾燥帯~温帯~亜寒帯地域)以外の世界中で家畜として飼育されていますが、ヤクはヒマラヤ山脈周辺でのみ飼育されています。
同様に山岳地帯である南米のアンデス山脈では、アンデス山脈固有の家畜であるリャマやアルパカが飼育されており、ヤクは飼育されていません。
平地で飼育される牛は元の生息地から世界中に家畜として広がったのに対し、標高が高い山岳地帯ではそれぞれの地域固有の家畜が今も残っています。
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参考文献
地理用語研究会編「地理用語集第2版A・B共用」山川出版社(2019)
スイギュウ ウィキペディア 2023/9/16閲覧
Water buffalo, Wikipedia 2023/9/16閲覧
アフリカスイギュウ ウィキペディア 2023/9/16閲覧
ヤク ウィキペディア 2023/9/16閲覧
Yak, Wikipedia 2023/9/16閲覧