人類は牛など家畜のミルクを食料として利用してきました。
動物の家畜化がはじまった初期の頃から、人は動物の乳をしぼってミルクを入手し、そのミルクを加工して様々な乳製品を作り出してきました。
このページでは、乳を得るために利用される家畜(牛・その他)についてまとめます。
乳製品については次のページでまとめています。
参考様々な乳製品(牛乳・チーズ・バター・ヨーグルト)
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家畜の乳の利用と乳用種
哺乳類のメスは、子どもを出産したあとに子どもを育てるために母乳を分泌するようになります。
通常、動物のメスは自分の子どもにしか乳を与えませんが、人類は動物の乳を手で絞ってミルクを得る搾乳(さくにゅう)を行うようになりました。
人類が家畜のミルクを利用した歴史は古く、少なくとも5,000年以上前から牛や羊といった動物のミルクを利用してきました。
ミルクは栄養豊富な飲み物であり、人間の貴重な食料や水分補給源として使われてきました。
動物が子どもを産む季節は決まっていることが多いため、ミルクを得られる時期は出産後の季節に限られます。
その上、ミルクはそのままの状態では腐敗しやすいく長持ちしません。
そこで、ミルクをそのまま飲むだけではなく長期間保存できる形(例:チーズ、バター)に加工して使用されるようになりました。
人類は歴史の長い時間をかけて家畜の品種改良を行い、乳量が多く乳製品の生産に適した品種(乳用種)を生み出してきました。
代表的な乳用種としては、牛の乳用種であるホルスタイン種やジャージー種があります。
現代の先進国で最も消費されている乳は牛(牛乳)ですが、牛以外の家畜から得られた乳も食料として利用されています。
搾乳用の家畜
この項目では、ミルクを得るために飼育される代表的な家畜(牛・その他)について簡単にまとめています。
牛
現代では先進国を中心に牛のミルク(牛乳)の生産が盛んであり、欧米先進国を中心に産業レベルの規模で生産され、家畜のミルクの中で最も多く消費されています。
乳を得るために飼育される牛を乳牛といい、代表的な品種としてホルスタイン種やジャージー種があります。
乳牛の飼育と牛乳の生産は酪農という農業形態で行われています。
牛乳は腐敗しやすい食品なので、乳牛の飼育と牛乳の生産は人口が集中する先進国の大都市周辺で行われています。
牛乳生産の代表的な農業形態としては酪農があり、寒冷で畑作を行うのが難しい地域(温帯~亜寒帯(冷帯)の涼しい地域)で酪農が行われています(例:米国の五大湖周辺、フランス北部~デンマーク)。
酪農に適した場所であっても人口が集中する大都市(消費地)から遠い場合は、保存性の高いバターやチーズなどの乳製品に加工されてから輸出されます(例:ニュージーランド)。
酪農による牛乳の生産については以下のページで解説しています。
参考酪農における乳牛の飼育と牛乳の生産(ホルスタイン種とジャージー種)
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その他
遊牧民を中心に人類は牛以外の動物のミルクも利用してきました。
代表例として羊(羊乳)、ヤギ(ヤギ乳)、馬(馬乳)、ラクダ(ラクダ乳)があります。
動物によって乳の脂肪分の含有量や風味が異なるため、その特徴に応じて飲用や加工用として利用されています。
気候によっては一種類の家畜に生活を大きく依存する場合もあり、替えのきかないの食料源になる場合もあります。
たとえば、砂漠の遊牧民にとってラクダ乳は貴重な水分補給源であり、他の家畜の飼育が困難な砂漠では唯一無二の存在です。
乳製品の利用
家畜から搾乳したミルクはそのままでは腐敗しやすいです。
保存性を高めるために水分を取り除くなどの加工して様々な乳製品が作り出されています。
代表的な乳製品として、脂肪分を液体から分離させたバターやクリーム、微生物による発酵を行ったチーズやヨーグルトなどがあります。
乳製品については次のページで解説しています。
参考様々な乳製品(牛乳・チーズ・バター・ヨーグルト)
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参考文献
乳 ウィキペディア 2024/1/1閲覧
牛乳(ぎゅうにゅう)とは? コトバンク 改訂新版 世界大百科事典、日本大百科全書(ニッポニカ) 2023/12/30閲覧
地理用語研究会編「地理用語集第2版A・B共用」山川出版社(2019)
クリームとは? コトバンク 改訂新版 世界大百科事典 2024/1/12閲覧